表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3時間  作者: 藤崎ユキオ
33/39

深紅の光お別れ

解放されたばかりのヴァイオレット城の上に朝日が昇り、街全体に温かな光を投げかける。


僕たちは大門の前に立ち、人間界への帰還の準備をしていた。


王族の華やかな衣装を纏ったヴァルヨネッセが堂々と立ち、背後には民とレジスタンスの面々が整列している。


アストン(静かに):「……本当に、これでお別れか……」


ヴァルヨネッセ(頷く):「今はね。ここでやるべきことがまだたくさんあるから。でも、あなたたちは十分すぎるほどやってくれたわ。」


別れの言葉を交わし始めた時、ニルが駆け寄って僕に強く抱きつく。


ニル:「ありがとう、黒犬——じゃなくて、アストンお兄ちゃん! 私これからいい子にするよ!」


アストン:「約束だぞ。お父さんとお母さん面倒、ちゃんと見ててよ?」 *頭を撫でる


ニル(満面の笑み):「うん!」 *喜びで輝く


彼女は両親、カザクとアイシャの元へ走り戻る。二人は深く頭を下げる。


カザク:「スレイヤーズの皆さん、心からの感謝を……私たちは皆、あなたたちに借りがある。」 *深くお辞儀


アイシャ:「本当に……ありがとうございました……」 *一緒に頭を下げる


アストン:「カザク卿、アイシャさん……顔を上げてください。借りなんてありません。」


カザク:「黒犬卿……いえ、アストン卿……あなたの優しさは決して忘れません。」


アイシャ:「何か必要な時はいつでも言ってください……喜んでお手伝いします。」 *優しく微笑む


ニル:「うん! たまには遊びに来てね!」


アストン:「もちろん!」


エリセナは新しい獣人友達、クマ、パンダ、ポーラに抱きつき、涙をこぼしながらぎゅっと抱きしめる。


エリセナ(泣きながら):「みんな、すっごく寂しくなるよ……!」


クマ(優しく):「私たちも寂しくなるよ、エリちゃん……」


パンダ(涙目):「いつでも戻っておいで!」


ポーラ(穏やかに):「泣かないで、エリちゃん……楽しいお別れにしよう。」


エリセナ(笑顔):「うん……そうだね!」 *涙を拭う


獣人三兄弟がエリセナをもう一度強く抱きしめる。


エリセナ(笑顔):「へへ……みんな大好き!」


一方、グラシアは少し離れて立ち、昨夜から思いに沈んでいるようだった。あまり口を開かない。


グルフが近づく。


グルフ:「白龍さん……ありがとう。とくにサンドローザのこと。」


グラシア(困惑):「サンドローザ? あの廃村のこと?」


グルフ(ニヤリ):「そう! 俺の故郷だ! あの村長は俺の親父なんだぜ!」


グラシア(目を見開く):「え!? でも……あなたは獣人なのに。」


グルフ(大笑い):「ハハハ! 養子だよ! ガキの頃から育ててもらった!」


大きなごつごつした手を差し出す。


グルフ(微笑む):「白龍さん、俺たちの救世主になってくれてありがとう。」


グラシア(かすかに微笑む):「これからは自分の故郷を守りなさい。」


二人は固く握手する。


その頃、モルアは興奮した悪魔の子どもたちに囲まれていた。


小さな悪魔少女(輝く目):「かっこいい! 私も大きくなったらモルアさんみたいになる!」


モルア(優しく微笑む):「なら強く育ちなさい。そして誰かを守ってね、いい?」


小さな悪魔少年:「風虎さん! 持ち上げて!」


小さな悪魔少女:「ずるい! 私も持ち上げて!」


モルア(笑顔):「はいはい……順番ね?」


一人を持ち上げ、くるくる回す。笑い声が中庭に響く。


ヴァルヨネッセが女王の衣装で近づいてくる。歩みは堂々と、しかし心は重い。


レジスタンス全員が即座に跪く。


グラシア、エリセナ、モルアも自然と従う。僕は呆然と立ち尽くし、ヴァルヨネッセの輝く美しさに魅入られる。するとグラシアが杖で僕の頭をコツン。


ヴァルヨネッセ(くすくす):「ふふ……みんな、堅苦ししないで。あなたたちには必要ないわ。」


僕たちは立ち上がる。


ヴァルヨネッセ(静かに):「これでお別れね。」


アストン(頷く):「うん……元気でな、ヴァルヨネッセ。」


エリセナはもう涙を抑えきれず、飛びついてヴァルヨネッセを強く抱きしめる。


エリセナ(泣きじゃくり):「ヴァル……! すっごく寂しくなるよ!」


ヴァルヨネッセは唇を噛み、涙を堪える。


ヴァルヨネッセ(涙目):「うん、エリ……私も寂しい……」 *優しく微笑む


グラシアが近づき、エリセナを優しく引き離す。


グラシア:「エリセナ、辛くならないようにね。」


エリセナはグラシアを見上げ、彼女の目も潤んでいることに気づく。


エリセナ(鼻をすする):「グラシア……? あなたも泣いてる?」


グラシア(涙目):「泣いてないわ! 絶対に!」 *涙を拭う


ヴァルヨネッセがそれを見て、グラシアに近づく。


ヴァルヨネッセ(優しく微笑む):「グラシア……私たち、そんなに親しくなかったかもしれないけど……抱きしめてもいい?」


グラシア(驚き):「え!?」


答えを待たず、ヴァルヨネッセが強く抱きしめる。グラシアは少し抵抗しつつ、抱き返す。


ヴァルヨネッセ(微笑む):「来てくれて、本当にありがとう、グラシア。」


グラシア(赤面):「う……別に……」


抱擁が終わり、温もりが残る。


モルアが前に進む。


モルア:「王族の作法は苦手だけど……これから自分の民は、自分の力に守ってくれ、王女。」 *肩を叩く


ヴァルヨネッセ(驚き):「悪魔の死刑執行者、風虎のモルアさんからそんな言葉……すごく嬉しいわ。」


モルア(ニヤリ):「私はもうあんなに冷酷なだけじゃないぞ!」


ヴァルヨネッセ(目を見開く):「本当!?」


二人は意味深な笑みを交わす。


ヴァルヨネッセ(からかう):「ふふ……覚えてる? 私を真っ二つにしようとしたこと。あとアストンもね。」


モルア(笑う):「はは……あれは手加減したのよ! あいつにはあとでちゃんと謝ったし!」


二人が笑い合う。


僕が遠くでくしゃみをする。


護送の荷車が到着。ついに別れの時。


ヴァルヨネッセが去ろうとする。僕は思わず手を伸ばすが、グラシアが静かに首を振る。


僕は頭を下げる。


だがその時——


ベリンダ(そっと横に):「王女様……本当にこのままでいいんですか? アストンとこんな形に別れるとわ。」


ヴァルヨネッセ(囁き):「よくない。でも……私の民を前で、弱みなんて見せられないわ。」


ベリンダ(優しく微笑む):「なら、見せないで伝えなさい。」


彼女がヴァルヨネッセを軽く押す。


ヴァルヨネッセが振り返る。


アストン(目を見開く):「ヴァル……?」


彼女は僕に飛びつき、強く抱きしめる。僕も抱き返し、彼女は僕の胸で泣く。


アストン(優しく):「ヴァルヨネッセ……今までありがとう……。僕たちの世界に来てくれて、僕の家族を自分の家族のように扱ってくれて……一番暗い日々に光をくれたこと。」


ヴァルヨネッセ(すすり泣く):「アストン……」 *優しく微笑む


突然——


*チュッ!


唇にキス。


時間が止まる。


群衆が息を飲み、女子たちが呆然とする。


ヴァルヨネッセ(女子たちに囁く):「彼の初キス、私がもらっちゃった! てへっ……」 *舌を出す


アストン(蒸気):「なっ……!?」 *気絶

僕はその場で倒れる。


エリセナ(嫉妬):「ヴァル!! ズ、ズルい……!!」


グラシア(真っ赤):「信じられない!!」


モルア(感心):「おお……」


荷車が城から離れていく。女子たちは車内に乗り、僕を置いて行く。


アストン(目覚めて):「待て……みんなどこ!? おい!」


僕は慌てて起き上がり、荷車が遠ざかるのを見る。


モルア(叫び):「遅れたら置いてくぞ!」


エリセナ(ぶつぶつ):「ヴァルと一緒に残ればいいのに! 喜ぶでしょ!」


グラシア(静かに):「なんでこんなに……胸が痛いんだろう……?」 *胸を押さえる


僕は迅足を連発し、荷車に飛び乗る。


振り返ると、ヴァルヨネッセのシルエットが遠ざかる。


アストン(つぶやき):「いつか絶対に戻ってくる。」


荷車の中で緊張が漂う。エリセナは不機嫌を隠しきれず、皮肉っぽく呟く。グラシアはぼんやりと虚空を見つめる。僕はため息。


モルア(囁き):「リーダー……これをなんとかするのはあんたの仕事だ……」


アストン(ためらい):「……わかった」


モルア(少し赤面):「あと、たまには私にもちゃんと構ってくれ。」


アストン(敬意を持って微笑む):「もちろん、師匠!」


モルア(ため息):「ダメだこれは……」


商人町ポリに着く頃、深紅の空が地平線を染めていた。


御者に礼を言い、僕は焚き火を囲んでみんなを集める。エリセナはまだむくれているが耳を傾け、グラシアもぼんやりしながら加わる。


アストン:「僕たちの使命は……ヴァルヨネッセを人間界に連れ帰ることだったが……」


モルア:「失敗だ。リシが絶対に怒るぞ。」


アストン(恐怖):「どれくらい怒る?」


モルア(淡々):「前回失敗した時は、500回の鞭打ちだった。」


アストン&エリセナ(同時に):「なにぃ!?」


同時に叫んだ僕とエリセナの目が合う。僕は優しく微笑む。


アストン(静かに):「最悪の事態に備えようね。」


エリセナは赤面し、なぜか僕の唇を見つめる。すぐに目を逸らす。


グラシア(僕たちを見て、つぶやく):「まただ……なんでこんなに……痛むの……?」 *胸を押さえる


彼女は僕の隣に座り、肩に頭を預ける。


僕は驚きつつ、そっと受け止める。


アストン(微笑む):「疲れているのか……お疲れ様、グラシア。」


頭を肩に預けたまま、グラシアの目が突然見開く。


グラシア(静かに、赤面)(この気持ち!? この鼓動の速さ!? 嘘でしょ……! 私、彼に恋してる!?)


天才の氷の魔術師は、初めて教科書にないことを理解した。


グラシア(心の中で):「……これが、恋なのね。」 *目を閉じる


――


第33章 深紅の光お別れ 終

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ