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1/3時間  作者: 藤崎ユキオ
32/38

勝利の代償

僕が元の姿に戻った瞬間、全身から力が抜け、激しい脱力感に襲われる。


アストン(膝をついて):「うっ……」 *倒れそうになる


女子たちが駆け寄る。僕の様子を見て、心配そうに顔を曇らせる。


エリセナ:「アストン!」


モルア:「大丈夫!?」


グラシアが僕の横に跪く。


グラシア:「重傷はない……でも脈が!」


必死に意識を保ち、僕は彼女たちに微笑み、弱々しく拳を上げる。


アストン:「僕たち……勝ったよ……」


エリセナ(優しく):「うん……すごく頑張ったよ。」 *手を握る


エリセナの優しい手に安心した瞬間、体から最後の力が抜ける。僕は倒れ込み、エリセナが抱き止める。


エリセナ(慌てて):「アストン!?」 *抱きしめる


アストン(弱々しく):「う……ごめん、エリ……少し……このまま抱きしめてくれる……?」 *目を閉じる


エリセナ:「うん……」 *頷く


グラシアは僕たちを見て、胸に手を当てる。


グラシア(囁き):「また……? この気持ち……何……?」


モルアがグラシアの戸惑いに気づき、彼女を僕の方へ押しやる。


モルア(ニヤリ):「さあ、グラシア!」


グラシア(驚き):「な、何!?」


その時、ヴァルヨネッセが近づいてくる。まだ大人の姿のまま、彼女は跪く。


ヴァルヨネッセ:「アストン……本当に来てくれた……」 *抱きつく


僕は薄く目を開け、彼女の大人の熟した姿でも彼女だとわかる。


アストン(弱々しく):「ヴァルヨネッセ……? よかった……おかえり……」


ヴァルヨネッセは子どものように僕の胸で泣く。


ヴァルヨネッセ(涙目):「ありがとう……アストン……」 *すすり泣く


モルア(微笑む):「みんなで抱きつきタイムだ!」


エリセナ(満面の笑み):「うん!」


グラシア(赤面):「う……仕方ないわね……」


女子たちが集まり、僕とヴァルヨネッセを囲んで腕を回し、笑い合う。


ヴァルヨネッセ(笑顔):「ありがとう……みんな!」 *幸せに泣く


その瞬間、戦争は消えていた。


ただ温かさだけがあった。


――


数分後、温かな時間が過ぎ、僕たちは玉座の間から出る。


ヴァルヨネッセが僕の横に立ち、僕は剣を高く掲げる。


アストン(大声で):「暴君、魔王トロイジールはもう倒れた!!」


グルフ(咆哮):「トロイジールは敗れた!!」


レジスタンスが歓声に沸き、王軍兵は信じられない様子で呆然とする。


レジスタンス部隊(叫び):「勝った!!」


威厳あるオーラを纏ったヴァルヨネッセが両軍に命令する。 


ヴァルヨネッセ(しっかり):「戦争はもう終わったわ! これ以上、無意味な血を流す必要はない! みんな、武器を捨てなさい!」


王軍兵:「トロイジール様が……倒された……?」 *武器を落とす


カザク:「王女ヴァルヨネッセ……」 *剣を収める


グルフがカザクに飛びつき、肩を組む。


グルフ(ニヤリ):「勝ったぞ、相棒!」


カザク(微笑む):「ああ! やっと……自由を取り戻せた!」


遠くから妻と娘が手を振って近づく。


ニル(満面の笑み):「お父さん! やったよ!」


アイシャ(涙目):「あなた……」 *優しく微笑む


カザクは妻と娘を強く抱きしめる。


後方では、魔術師団が疲労で息を吐く。魔力切れの疲れが顔に出ている。


ベリンダは涙を拭い、ヴァルヨネッセの威厳ある姿を誇らしげに見つめる。


ベリンダ(優しく微笑む):「王女ヴァルヨネッセ……」 *鼻をすする


トロイジールの残党は武器を捨て、士気が完全に折れる。ヴァイオレット王国はついに暴君の手から解放され、正統な後継者の手に戻った。


勝利の安堵の中、僕は突然ふらつき、倒れる。


エリセナ(驚き):「アストン!?」


モルア:「ほらよっと!」 *僕を支える


ヴァルヨネッセ(心配):「大丈夫?」


アストン:「Zzzzz……」 *ぐっすり眠る


グラシア(かすかに微笑む):「彼は完全に疲れている……全部出し切ったんだものね。」


モルア(優しく微笑む):「うん……赤ちゃんみたいに寝てる……可愛い……」


モルアが僕をおんぶする。ヴァルヨネッセが近づき——


*チュッ……


頰に優しくキス。


ヴァルヨネッセ(赤面):「本当にありがとう……私の勇者ちゃん……」


エリセナ(驚愕):「ちょ、ちょっと! ズルい!」


グラシア(動揺):「あ、あ、あ、あれって……!?」


モルア(ニヤリ):「ふむ……なら私も。」


*チュッ……


額にキス。


エリセナ(驚き):「モルアさんも!?」


グラシア(赤面):「ちっ……仕方ないわね。」


エリセナ(目を見開く):「え!?」


*チュ。


グラシアも反対の頰にそっとキス。


エリセナ(慌てて):「何!? グラシアまで!?」


モルア(からかう):「残りはここだけよ、エリ……彼の唇にキスしろ!」


エリセナ(驚愕):「ええ!? 無理! そんなのできない!」


ヴァルヨネッセ(慌てて):「だめ! 唇はダメよ!」


グラシア(震え):「そ、そうよ!彼の 初キスを奪うなんて……!」


モルア(困惑):「じゃあ、どこにキスするの?」


――沈黙。


エリセナ(決意):「ムムム……決めた!」


ヴァルヨネッセ&グラシア(衝撃):「えっ!?」


*チュ!


僕の鼻先にキス。彼女の顔が真っ赤。


モルア(からかう):「鼻にキス!? かわいいじゃない……!」


エリセナ(赤面):「もうやめてください、モルアさん!」 *頬を膨らませる


ヴァルヨネッセ&グラシア(同時に):「ふぅ……」 *安堵の息


モルアが僕をおんぶし、立ち上がる。


モルア:「よし、みんな……任務完了! 帰るぞ!」 *歩き出す


エリセナ:「は、はい!」 *まだ赤面


――


城壁の上、グルフが剣を掲げる。


グルフ:「各ホール確保! トロイジールと将軍どもを拘束しろ!」


トロイジール、ネクロム、残った忠臣たちは魔法封印の手錠で縛られる。多くが先の戦いで傷ついている。


カザク:「アイビー、レミア、ゴロンは?」


ベリンダ:「消えた……遺体も痕跡もないわ。」


グルフ:「また別の日の問題だな。」


ヴァルヨネッセとベリンダが温かく抱き合う。


ヴァルヨネッセ(涙目):「ベリンダさん! 心配かけてごめんね……」


ベリンダ:「私の王女……無事でよかった。それだけで十分よ。」


彼女はモルアの背中の僕に近づき、優しく髪を撫でる。


ベリンダ:「私の勇者ちゃん……本当に頑張ったわね。」


グラシア(疑いの目):「また彼を誘惑してるんじゃないわよね。」


ベリンダ(くすくす):「ふふ……今日はなしよ。」


モルア(ニヤリ):「うちの坊や、プリンスよりファンが多いわね。」


女子たちが笑い、心が軽くなる。


その夜、城の中心で巨大な魔力球が起動。ヴァルヨネッセが前に立つ。彼女の姿がダーク・リールム全土に投影される。


ヴァルヨネッセ(しっかり):「暴君トロイジール・デーモンシュタインは倒れた……そして私、ヴァイオレット王国の正統後継者、第六代魔王シェルツォ・ヴァイオレット・ターコイズの娘、ヴァルヨネッセ・ヴァイオレット・ターコイズが帰還したわ!」


暗黒界の悪魔たちが凍りつく。


ヴァルヨネッセ:「私たちは三年間、彼の暴政と戦ってきた……レジスタンスを結成し、自由を取り戻すために……そしてこの勝利は、スレイヤーズ……アストンと仲間たちなしでは成し得なかったわ!」


彼女が僕たちを指す。僕はスレイヤーズの代理リーダーとして前に出る。


アストン:「みんなに自己紹介させてください。僕たちはスレイヤーズです。」


僕はマスクを外す。


アストン:「そして……僕たちは人間です。ヴァイオレット王国を救うために騙しました。どうか許してください。」 *頭を下げる


衝撃。沈黙。そしてざわめき。歓声が上がる者、動揺する者。


ヴァルヨネッセ:「お父様の最後の願いは、悪魔と人間が共に生きることでした。アストンがその願いを叶えてくれたのですわ。」


グルフ(腕を組む):「そっか! だから匂いが違ったのか。」


ベリンダ(くすくす):「ふふ……最初から知ってたわ。」


カザク(呆然):「待て……いったいどいう?」


カザクが家族を見る。ニルの目が輝き、アイシャが優しく微笑む。


ニル(満面の笑み):「わあ……! 黒犬さんが人間だったの!? しかもかっこいい……!!」 *目を輝かせる


アイシャ(優しく微笑む):「騙されたわね、私たち。」


カザクは微笑み、ヴァルヨネッセに向き直る。


カザク:「ならば私はあなたに従います、王女。」 *跪く


レジスタンス部隊とヴァイオレット王国の忠臣たちがヴァルヨネッセに跪く。彼女の理想と決定を受け入れる。


放送が終わる。


ダーク・リールム全土で花火が上がり、歓声が響く。酒場で乾杯する者、喜びに泣く者。


だが影では、平和に不満を持つ悪魔たちが嘲笑う。


薄暗い路地で、フードの長身の影が放送を見る。


フードの悪魔:「トロイジールは失敗した。だが呪いのエネルギーをある程度集めた……今、彼からを奪うとしよ。」


彼はネクロムがデスレイヤーから吸い取った死の時計の呪いエネルギーを収めた魔力球を指す。


影は闇に消える。


城に戻り、レジスタンスが集まる。


グルフ:「トロイジールは消えた。新たな統治者が必要だ。」


カザク(静かに):「ヴァルヨネッセ様、どうか玉座に就き、この王国の新たな統治者となってください。」


ヴァルヨネッセ(首を振る):「名誉だけど……まだ準備ができていないわ。」


カザク(困惑):「何?では……誰が……?」


――沈黙。


ヴァルヨネッセ(微笑む):「カザク卿はどうかしら? 父上に忠誠を尽くし、グルフ卿と共にレジスタンスを率いた。もう一度、私たちを導いてくれる?」


カザク(驚愕):「私……?」


周りを見回す。アイシャとニルが頷き、グルフが親指を立てる。


カザク(跪く):「ならば……お受けします。王女の命に従い、ヴァイオレット王国の代理統治者として、民のために、未来のために。」


ヴァルヨネッセ(優しく):「ありがとう、カザク卿……」


カザク:「光栄です、ヴァルヨネッセ様……」


彼女がカザクを正式に代理統治者に任命。歓声と拍手が沸き起こる。


宴が始まる。酒、料理、音楽が溢れる。


モルアは悪魔たちと飲み比べで圧勝。


モルア(ジョッキを掲げ):「これが強いって? もっと持ってけこら!!」


エリセナはクマ、パンダ、ポーラに抱きつく。


エリセナ(笑う):「ははは! みんなふわふわ!!」


ヴァルヨネッセは市民と歌い、踊る。


ヴァルヨネッセ(満面の笑み):「楽しい!」


グラシアは隅でジュースを飲む。


アストン(近づく):「人混み大丈夫?」


グラシア(赤面):「う、うるさいわね!」 *目を逸らす


アストン(ニヤリ):「怒ってる時の顔、かわいいよ。」


グラシア(動揺):「もう一回言ってみなさい!?」 *杖を構える


アストン(慌てて):「冗談! 落ち着いて!」


グラシア:「何か言いたいことあるならはっきり言いなさい!」


アストン:「ごめん……実は——」


僕は黒騎士とデスレイヤーの真実を話す。


グラシア(興味津々):「黒騎士? 三百年まえ……?」


突然、頭痛が襲う。彼女は僕の服を掴み、うめく。


アストン(驚き):「グラシア!?」


グラシア(息を切らして):「続けて……知りたい……」


だがスカーレット姫とデス・キングの話をした瞬間、グラシアが膝をつく。


グラシア(震え):「もう……思い出したわ!」 *頭を抱える


――


ヴァイオレット地下牢。


トロイジールとネクロムは魔法封印の手錠で繋がれ、鉄格子の中に座る。


ネクロム(罪悪感):「もし訳ありません……トロイジール様……」


トロイジール(静かに):「あの黒犬め……俺様の命を助けた……なんて屈辱だ!」 *歯を食いしばる


突然、部屋が暗くなる。次元の裂け目が開く。


ネクロム(震え):「まさか……」


フードの長身の悪魔が現れる。存在だけで松明が暗くなる。


トロイジール:「スヴェグスト……ドレンツァイガー!?」


スヴェグストがフードを外す。目は双子の虚空。


彼はトロイジールの懐から呪いのエネルギーを収めた魔力球を奪う。


トロイジール:「なっ! きっさま! あれは俺様の次ナ計画の鍵だ!返せ!」


スヴェグスト:「トロイジール……失敗したな。この程度しか呪いのエネルギーを集められなかったとは……失望だ……」


トロイジール(唸り):「俺様はお前の偽りの王など認めん! なぜなら俺様こそが真の至高の王、トロイジール・デーモンシュタインだ!! 跪け、農民め!!」


スヴェグスト:「愚か者。」


永遠の虚空がトロイジールを貫く。血を吐き、倒れる。


トロイジール( 瀕死 ):「ばかなっ!」


ネクロム(絶叫):「トロイジール様!?」


スヴェグストはネクロムに向き直る。


ネクロム(懇願):「お、お許しを! 仕えます! 何でもします!」 *土下座


スヴェグスト(冷たく):「殺す価値もない。」


彼は闇に消える。ネクロムは床にすがり、恐怖に震える。


孤独に。


恐怖に。


敗北に。


――


第32章 勝利の代償 終

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