最後の階段
僕は少し先を歩いていた。
頭の中では考えが渦巻き、顔が強張る。過負荷の死の時計、戦場の光景、そして黒騎士の謎めいた言葉。
黒騎士:「スカーレット姫は生きている……君の仲間のひとり、エリセナ・シルヴェストンの中に。」
僕は横目でエリセナを見る。彼女は静かに歩き、朱色の長い髪が優しく揺れる。表情は集中しているが、唇が少し開いて考え込んでいる。
突然、彼女は僕の視線に気づく。
エリセナ:「な、何? そんなに見つめて……」 *頰を赤らめる
アストン(驚き):「あ……なんでもない! ただ……考え事してただけ。」
後ろからグラシアがため息をつき、杖の先で僕の頭をコツンと叩く。
グラシア:「イチャイチャしないで集中して、ロメオ。ここは舞踏会じゃなくて魔王の巣窟よ。」
アストン:「いたっ……わ、わかったよ!」 *頭を押さえる
エリセナ(慌てて):「イチャイチャ!? してないよそんなこと!」
グラシア:「はいはい……目は前で見て、ジュリエット。」
エリセナ:「もー!グラシア……!」 *頰を膨らませる
モルア:「しっ……大声出すな、エリ。敵に気づかれるんだぞ。」
エリセナ:「ご、ごめんなさい!」 *口を押さえる
静かに進む中、石壁越しに戦いの鈍い響きが響く。
エリセナ(心配そう):「戦争……まだ終わってないね。」
アストン(真剣に):「だから急がないと。早く終わらせれば、犠牲が減る。」
グラシア(分析的に):「やはり……さっきの気絶は死の時計の過負荷ね。あんたの能力は大量の死に反応してるわ。」 *顎に手を当てる
モルア(集中):「ふむ、なるほど…。」
エリセナ(驚き):「本当なの、アストン!?」
アストン(感心):「うん、そうだよ……さすが天才魔術師、説明しなくてもわかってくれるんだ。」 *グラシアに微笑む
グラシア(かすかに赤面):「ちっ……うるさいバカ。」 *目を逸らす
アストン(困惑):「あはは……」
――気まずい沈黙。
グラシア(心の中で):「また!? なんでこんなに素っ気なくしちゃうの!?」 *胸を押さえる
先頭のモルアが手を上げ、全員を止める。
モルア:「あそこ……あの扉が玉座の間だ。」
巨大な黒曜石の扉が目の前。深紅のルーンが輝き、暗黒魔力が空気を震わせる。
アストン(頰を叩く):「よし……ヴァルヨネッセを救う時だ!」
エリセナ:「うん!」 *拳を上げる
グラシア:「当然ね。」 *目を閉じる
モルア:「おお!やるぞ!」 *掌を叩く
扉に近づく——
グラシア:「待って!」
アストン:「どうした、グラシア?」 *振り返る
グラシア(冷静に):「扉に魔法ルーンが張ってあるわ。そのまま触ったら罠が発動するかも。」
エリセナ:「じゃあ先にルーンを解除しよう!」
グラシア:「そうね……封印解除:アイス・ブルーム。」 *解除を始める
深紅のルーンが弱まるが、まだ完全に消えない。
エリセナ:「私も手伝う! 封印解除:フレイム・ウィーブ。」 *グラシアを補助
氷と炎が渦を巻き、穏やかに融合。深紅のルーンが消え、光が止まる。
モルア:「よくやったよ、二人とも。」 *二人を撫でる
僕は前に進み、黒い表面の巨大な扉の取っ手に手を置く。
アストン:「いくよ……」
押す前に、モルアが僕の手首を掴む。
モルア(ニヤリ):「待って。もっと良い方法があるんだ。」
彼女が耳元で囁く。僕は目を輝かせる。
アストン:「師匠……天才だ! それで行こう!」 *興奮の笑み
グラシア(呆れ):「なぜか嫌な予感気がするわ……」
エリセナ(首を傾げ):「何かすごいことするの?」
モルア:「さー、見てろ。下がってくれ。」
僕とモルアが少し後ろに歩く。カウントダウン。
モルア:「3……2……1!」
二人(叫び):「斬鳳凰蹴!」
完璧なタイミングで跳躍。双子の鳳凰シルエットが輝き、蹴りが扉に炸裂。
黒曜石の扉が爆音とともに吹き飛び、蝶番から外れて玉座の間壁に激突。突風が嵐のように吹き抜ける。
玉座に座る魔王トロイジール・デーモンシュタインが、明らかに動揺する。
トロイジール(唸り):「この無礼な虫けらどもめ……!」
僕とモルアは背中合わせで立ち上がり、腕を組んで誇らしげに微笑む。
モルア(ニヤリ):「いい登場だ!」
アストン(笑顔):「10点満点!」 *親指を立てる
グラシア(顔を覆う):「完全に無駄な演出ね……」
エリセナ(感動):「すごい、二人とも!」 *目を輝かせる
トロイジールが玉座から立ち上がり、顔を怒りで歪める。
トロイジール(激怒):「すべてを償わせてやる! 俺様の軍、俺様の城、そして今、俺様の玉座の間を汚した罪を!」
アストン(剣を指す):「トロイジール……! 僕たちはヴァルヨネッセを連れ戻しに来た。お前の支配はここで終わりだ!」
トロイジール(ニヤリ):「ほう? 俺の花嫁のことか?」
魔王が指を鳴らす。玉座の影から動く影。
闇の中からヴァルヨネッセが現れる。黒と赤のウェディングドレスを纏い、トロイジールの玉座のモチーフと完全に一致。目は虚ろ、動きは生気がない。
アストン(叫び):「ヴァルヨネッセ!!」
返事はない。
トロイジール(哄笑):「ヘハ……ヘハハハハ!! 彼女の心はもう俺様のものだ! 見ろ、この従順さを!」
トロイジールは彼女の背後に近づき、首筋に唇を寄せる。
トロイジール(残酷に囁く):「このままが完璧だ。静かで、美しく、忠実……」 *首筋を舐める
アストン(激怒):「きさま!! 彼女に何をした?!」
突然、ヴァルヨネッセが手を上げる。指先が僕を指す。
グラシア(目を見開く):「動け!」
紫黒の光線がヴァルヨネッセの指先から放たれ、床を裂きながら僕たちへ迫る。間一髪でかわす。光線が柱を真っ二つに斬り裂く。
トロイジール(嘲笑):「どうだ、スレイヤーズ? 自分の仲間を斬れるか、試してみるか?」
アストン(息を切らして):「ヴァルヨネッセ……」 *拳を握る
モルアが僕の肩に手を置く。
モルア(しっかり):「アストン。ヴァルヨネッセは私たちに任せて。あんたはトロイジールを狙ってくれ。」
エリセナ(頷く):「私たちが連れ戻すよ!」
グラシア:「そうよ、あのくそ魔王を任せるわ。 でも無茶しないで、時間稼ぎだけでじ油分よ!」
アストン(迷いつつ決意):「みんな……わかった! 頼む……ヴァルヨネッセを連れ戻してくれ!」
モルア、エリセナ、グラシアが前に進み、ヴァルヨネッセを囲む。彼女の手から闇魔法が迸る。
トロイジール(不気味に微笑む):「さて……誰が先に折れるかな?」
僕は玉座へ向かい、剣を構え、トロイジールと目を合わせる。
トロイジール(嘲る):「へっ!一人な人間ごときが俺様を倒せると思うか? 笑わせるな……その仮面……まるで死にに行く道化だな!」
アストン(冷静に):「それはどうかな?。」
僕は玉座近くにジェムストーンを投げる。床のルーンが電撃のように閃き、消える。スタン・マインの罠が誤作動して無効化。
トロイジール(舌打ち):「ちっ……賢いガキめ。」
背後ではヴァルヨネッセがソニック・バットの群れを放つ。三人を同時に襲う。
エリセナ:「させない! ファイア・ヲール!」
炎の壁がコウモリを焼き払い、仲間を守る。
モルアはエリセナの火壁を盾に動き、素早く接近。投げナイフを放つ。
モルア:「麻痺刃投!」
ヴァルヨネッセは上昇してかわす。
グラシア:「動くな、このコウモリ! アイシクル・バレージ!」
氷柱は当たらないが、動きを制限する。
エリセナ:「起きて、ヴァルヨネッセ……! ファイア・バレージ!」 *涙目
ヴァルヨネッセは空中で身を捻り、火球をすべてかわし、掌に闇魔法を溜める——
モルア(囁き):「捕まえたぜ、王女……」
ヴァルヨネッセ(息を飲む):「!?」
モルアが突然跳躍し、後ろから強烈な蹴りを叩き込む。
*ドガァン!!
ヴァルヨネッセが石壁に激突。
モルア:「今だ、グラシア!」 *転がって着地
グラシア:「わかってる!」 *杖を向ける
グラシアが即座にヴァルヨネッセの四肢を氷で封じる。抵抗なく、虚ろな目で動かない。
エリセナ(近づく):「ヴァルヨネッセ……! お願い、起きて! 私たちだよ……友達だよ!」 *涙をこぼす
反応なし。
エリセナ(弱々しく):「アストンがあんなに頑張って戦ってるのよ……お願い、ヴァルヨネッセ……」 *涙が落ちる
僕の名前を聞いた瞬間、ヴァルヨネッセのターコイズの瞳が一瞬、きらめく。
一方、玉座前。
トロイジールが呪いの剣を召喚。刃が深紅に脈打つ。
トロイジール:「形勢逆転したと思うか? この剣は千の呪われた魂の憎悪で鍛えられた……見よ! ブラッドサースト!!」
剣の呪いが発動。
深紅の光波が空気を切り裂き、城壁に染み込む。
スレイヤーズとヴァルヨネッセが震える。体力が吸い取られる。
アストン(歯を食いしばる):「何だこれ……!?」
グラシア(弱々しく):「生命力を……吸い取ってる……!」
エリセナ(苦しげに):「動けない……!」
モルア(膝をつく):「くっ……こんなもの……!」
トロイジール(哄笑):「ヘハハハハハ!!これで 終わりだ、スレイヤーズ!」
ブラッドサーストが深紅の炎を纏う。脈打つような熱が響く。
トロイジール(暗く):「滅びろ……全員。」 *剣を掲げる
――
第29章 最後の階段 終




