第4話
日曜日。
彼女の休日を初めて観察した。
朝は遅く、十時頃に起床。暖房が効いてくると薄手のTシャツと短パンで部屋をうろつく。
冷蔵庫を開けては閉じる。どうも何も食べる気がしないようだ。
俺は見ている。見たくないわけじゃない。ただ、見ざるを得ない。
彼女はソファに座り込み、スマホを見始める。SNSだろう。スクロールする指が止まらない。
その表情が、見ているだけで分かる。
友人たちの楽しそうな投稿。
カップルの写真、クリスマスの予定、イルミネーション、プレゼント、そして幸せそうな笑顔。
彼女の目が、どんどん暗くなっていく。
やがて過去のチャット履歴を開いた。スクロールする手が震えている。写真には男性と一緒に写っている彼女。笑顔の彼女。
こっちが辛くなる。
「バカだな、私...」
独り言が部屋に響く。
そして涙。
四十八歳のおっさんが、二十代の女性の恋を見守っている。なんという状況だ。
彼女はベッドに潜り込み、そこから出てこなかった。一日中、ベッドの中。時々泣き声が聞こえる。
俺は、カレンダーである俺は何もできない。
声をかけることも。背中をさすることも。「大丈夫だ」と言うこともできない。
ただ見ているだけ。
部屋は静かだ。時計の音だけが響く。
俺は思った。
孤独は伝染する。
彼女の孤独が、カレンダーである俺にも伝わってくる。
生前の俺も一人だった。独身。友人は少ない。仕事仲間はいたが、深い付き合いはなかった。
締め切りに追われ、記事を書き、金をもらい、また締め切りに追われる。
あまり部屋から出ることもない。そんな人生だった。
愛した女はいた。でも、向き合うことから逃げた。
結局、俺は誰のためにも生きなかった。
彼女のベッドから、小さな嗚咽が聞こえる。
俺は紙だ。
でも、心は残っている。
そして今、俺は彼女の孤独を共有している。




