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第2話

朝。床に転がっていた女性はいつのまにかベッドに移動して寝ていた。

慌ただしく身支度を整え、俺を、カレンダーである俺を一瞥する。


「今日は...12月...2日か」


深い溜息の後、駆け出すように部屋を出ていった。

残された静寂の中で、俺は自分の状況を整理した。


俺は死んだ。そしてカレンダーになった。カレンダーは1年が終わったら、12月が終わったら、確実に捨てられる。

余命は残り一ヶ月。こればかりは受け入れるしかない。というか、他に選択肢がない。

しかし、なぜカレンダーなのか。呪いか?俺は生前、カレンダーに恨まれるようなことをしたか?

締め切りを睨みつけすぎたか?赤字で囲まれた締め切りの日を見るたびに胃が痛んでいたのはこちらなのに。


それにしても、この部屋の住人は誰なんだ。


二十代後半の女性。一人暮らし。疲れた様子。

昨夜は化粧も落とさず寝ていた。仕事が大変なのだろう。

ブラック企業か?それとも真面目すぎる性格か。


俺には関係ない。どうせ今月で終わる関係だ。


でも——妙なことに気づいた。

俺の視界は固定されていない。壁に掛けられた位置を中心に、ある程度部屋全体が見渡せる。まるで広角レンズのような。意識を向ければ、部屋の隅々まで見える。


監視カメラか。いや、覗き趣味はない。俺はそういう人間じゃない。

でも、見えてしまう。これは俺の意志ではない。

知らなかった。カレンダーの視界とはこんな風になっていたのか。


夜、彼女が帰ってきたのは十時過ぎ。コンビニ袋を持って、まるでゾンビのように部屋に入ってくる。

テーブルに袋を置き、ジャケットを脱ぎ、そのままブラウスも脱ぐ。


おい、ちょっと待て。

俺は視線を逸らそうとした。だが、カレンダーに視線という概念はない。

見えてしまう。白いブラウスの下の、薄紫のブラジャー。綺麗な肩のライン。


これは——まずい。


俺は四十八歳のおっさんだ。二十代の女性の着替えを見るなどアウトだ。いや、歳はそもそも関係ない。完全にアウトだ。

けど、これは俺の意志じゃない。見たくて見てるわけじゃない。でも見えてしまう。


彼女は下着姿のまま、鏡の前で自分の体を眺めた。

痩せすぎているわけではない。太っているわけでもない。というか、若い女性の体だ。俺が何か言える立場じゃない。


「もう若くないな...」


彼女が呟いた。


嘘だろ、若いだろ。二十代だろ。四十八歳の俺から見れば死ぬほど若い。

でも彼女の表情は本気で暗い。何かあるのか。

彼女はシャワーを浴びてから、部屋着に着替えてコンビニ弁当を食べ始めた。

テレビもつけない。スマホで動画を見ながら、黙々と箸を動かす。


そして、ふとスマホを置き、俺を見上げた。


「25日...」


ああ、そこか。


12月25日の枠に、薄く鉛筆で書かれた文字がある。


「マサト」

わずか三文字。誰かの名前。


俺でも分かる。クリスマスに彼氏と会う約束かなんかだろう。

でもその文字は何度も消されて、また書かれている。鉛筆の跡が何層にも重なっている。


彼女は溜息をつき、弁当を食べ続けた。

俺は何も言えない。

ただのカレンダーだ。


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