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the world   作者: RAN
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黒い球

空は砕け、濃い霧があたりを包み、風が骨を刺すように吹き荒れる。

リンは石畳の道を重い足取りで進み、指の隙間から血が滲んでいた。


二時間後——。

前方に、あいつが待ち構えていた。

あの橋の上で仮面を切り裂かれた男だ。

今や暗い鎧を纏い、深紅の目を輝かせ、顔には無数の傷跡が刻まれていた。


「…ずっと探してたぞ。」

声は骨が軋むように低く、掠れている。


リンは立ち止まり、目を細める。

「前の時に死んでおけばよかったものを。」


ドンッ、と音が鳴り響く。

男が拳を地面に叩きつけると、大地が裂け、無数の石の柱が突き上がり、退路を塞いだ。


「今日はお前を粉々にしてやる。」


もう迷うことはなかった。

男は砂塵を巻き上げながら突進する。

リンは身をかわし、黒い刃を振り上げて受け止めた。


カキィン!

衝撃で刃が震え、腕が痺れる。


男は足を踏み込み、回し蹴りを放つ。

リンは低く屈み、男の腹の下を滑り抜けると、黒い刃で脇腹を切り裂いた。

血が飛び散る。


男が吠え、黒い鎖を鞭のように振るうと、地面が火花を散らし、飛び散る石がリンの肌を焼いた。


リンは壁を蹴り、高く跳び上がり、暗黒を足先に纏わせ、爪のように鋭く地面に叩きつけた。


ドンッ!

男の足元に深い穴が空いた。


だが男は粉塵の中から飛び出し、両手を広げて地面を揺らし、四方から石の柱がリンを閉じ込めた。


リンは歯を食いしばり、黒い刃で次々と柱を砕く。

だが男の速度は衰えず、拳が胸を打ち抜き、リンは吹き飛び、背中を岩に打ちつけ、口から血が噴き出した。


膝をつき、呼吸が乱れる。


「遅い。」

男が手を上げると、巨大な岩塊が空中に浮かび上がった。


リンは見上げる。

深紅に染まった瞳が光り、手の印が熱を帯び、皮膚がひび割れる。


「…消えろ。」


暗黒が滲み出し、掌に渦巻きながら集まる。

小さな黒い球がゆっくりと回転し、光を飲み込んでいく。


男がそれに気づき、わずかに動きを止めた。


リンは立ち上がり、血を滴らせながら黒い球を男に向かって投げる。


「…消えろ。」


ドンッ!!!


黒い球が炸裂し、音を奪い、空間を引き裂き、すべてを粉砕する。

石の柱が崩れ、粉塵が舞う。

光が消えたとき、男はただの灰となり、地に散っていた。


リンは膝をつき、荒い息を吐く。

手の暗黒はゆっくりと消えていく。

掌の中で、男の技の残滓が淡く光り、リンの体に吸い込まれた。


彼はうつむき、汗が頬を伝う。


「…わかったぞ。」


手を握りしめる。

赤い印がゆっくりと冷めていく。


「…誰であろうと、すべて奪う。」


足音が静かに響き、灰を残してリンは去っていった。

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