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短編小説どもの眠り場

私はVTuber

作者: 那須茄子

 私は、「猫舞リナ」。

 仮想の世界で輝く存在、VTuberとして知られている。



 今日も私は配信を終えた。

 虚無感が胸を満たす。


 椅子に沈む瞬間、私のエネルギーは霧散する。


 冷たい部屋にひとりきり、画面の光が浮かぶ灰色の影に過ぎない。


 

 リスナーの数は増えない。それどころか、コメント欄も静かだ。「今日もお疲れさま!」という励ましがあればどれだけ救われただろう。けれど、現実は音のない深海のようだ。自分の声が、虚空に消えていくだけ。喉の奥に痛みが残る。


「誰も聞いてないのかな……」


 そう呟くと、涙がぽつりと机に落ちた。その涙は、自分への失望の証かもしれない。努力が空回りしている感じ。

 毎日企画を考え、サムネイルを作り、トークを練習する。それでも、結果はついてこない。


 

 バーチャルの存在として愛されるはずの私。それなのに、愛されていないと感じるこの孤独。何のために笑顔を貼り付けているのか、自問自答する日々だ。


「もう、やめた方がいいのかも」



 そう考えるたびに、心の奥底で微かな灯が消えそうになる。揺らめいた分だけ、その灯火はどこかでまだ諦めたくないと囁く。「次の配信では誰かが見てくれるかもしれない」と。

 本当に我が儘で頼りない。


 

 頬をつねり、作業台に向かう。

 明日の準備をしながら、私は思う。



 もし私の声が誰かに届けば、それだけで十分なのかもしれない。コメントがなくても、視聴者が一人でも、「今日もありがとう」と言いたい。


 贈り出した言葉が、どれだけ心を救うのか、私が一番よく知っている。だから、このきっかけはまだ捨てきれない。



「……よし!」



 まずは登録者数千人。

 小さい数だけど、私にはとても大切な数字だ。

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