ハーフエルフの少女との出会い
「今日はたくさんの魔晶石が手に入りますように。」
ルミは心の中でそう願った。
ルミはソロの冒険者だ。どうして冒険者パーティーに所属していないのか?
それは彼女がハーフエルフだからだ。
ハーフエルフは、人間とエルフの混血であるがゆえに、魔力が少ない。
人間は「スキル」と呼ばれる、魔法に似た格闘術のような能力を持つ。一方、エルフは「精霊魔法」を操る。精霊魔法は自然の元素──水、風、火、大地──を使う魔法だ。
理論上、ハーフエルフは両方の能力を持っているはずだった。だが現実は逆だった。
ハーフエルフはスキルも精霊魔法も持たない、何もない存在になってしまったのだ。
そのため、ハーフエルフは多くの社会で差別を受ける。とはいえ、すべての人間やエルフが彼らを悪く扱うわけではない。ハーフエルフと友好的に接する者も少なからず存在する。
ある朝、ルミは魔晶石を手に入れるため、森へモンスター狩りに出かけた。
森の奥深くで、彼女は光り輝く箱を見つける。
「何これ?魔法アイテム……?」
ルミは不思議そうに呟いた。
興味を抑えきれず、ルミは箱を開けた。だが中身を見た瞬間、ますます混乱する。
「これは……鏡?いや、違う……黒い板?それに、この紐みたいなのは何?」
ルミは試しに黒い板と小さな鏡のような物体を紐で繋げてみた。すると、その瞬間、鏡のようなものが光りだした。
「え!?どうして光ってるの?」
それは実はスマートフォンだったのだ。
「やあ!起動してくれてありがとう!」
突然、ルミの手の中から声がした。
「うわっ!?誰?」
驚いてスマートフォンを落とすルミ。
「怖がらないで!私はルーシー、スマートフォンよ。」
「ルーシー?スマートフォン?」ルミは混乱した表情で尋ねた。
「そう、私の名前はルーシー。いわば魔法アイテムみたいなものね。」
「箱には他にもイヤホンやソーラーパネル、それから……Wi-Fi装置があるみたい。」
ルーシーは自身がスマートフォンであることを説明しつつ、心の中で呟いた。
「まさか、銀河の守護者たちが私をスマートフォンにしちゃうなんて……」
「ところで、あなたの名前は?」
「ルミ。」
「ルミ?え、名前が似てる!もしかしてこれは運命かも?」
ルーシーは笑ったあと、こう続けた。
「私はね、動画を見たり、音楽を聴いたり、写真を撮ったりできるのよ!」
ルーシーはカメラ、音楽再生、動画再生などスマートフォンの機能をルミに見せた。
不思議なことに、この星には衛星がないのにも関わらず、ルーシーはなぜかインターネットに接続できていた。しかしその理由を深く考えるのはやめた。
ルミは驚きと歓喜でいっぱいだった。「すごい!本当に魔法みたい!」
しかし、ルーシーは忠告した。「私のことは絶対に誰にも言わないで。下手をすれば命に関わるかもしれないわよ。」
そう言われたルミはうなずき、話し込んだ末に昼が近づいたことに気づいた。ルミはルーシーを手にして、泊まっている宿へ戻ることにした。




