恋愛倶楽部
頑張れ!草食系男子!!
恋愛倶楽部
時代は現代どこかの地方で・・・
35歳独身の草食系男子丸山は、ネットの出会
い系サイト「恋愛倶楽部」で知りあった20代
後半の女性とデートの約束をしていた。
丸山は35歳に至るまで女性とデートをした
事がなかった。出会いがなかったといえば言い訳
だが女性に対して極端に奥手な性格であった。
丸山は待ち合わせ場所に向かった。
〇〇公園の噴水の前。待ち合わせ時間はお昼12時
時間よりも10分前に早く着いた。
すると一人の女性が丸山に声をかけてきた。
「すみません。丸山さんですか?」
丸山はちょっと緊張した様子で
「はい丸山です、初めまして。今日はよろしく
お願いします。」
女性は二コリと微笑んで丸山を見つめた。
「優しそうな方ですね。イメージどうりの感じ
です。」
丸山は女性の言葉に少し上機嫌になった。肩の
力が少し抜けて楽になっていく。
「何か食べにいきましょうか?」
女性が声をかける。丸山が答えた。
「そうですね。お腹ぺこぺこですよ。何が食べたい
ですか?」
女性は少し考えたような表情で答えた。
「そうですね?近くに美味しいパスタのお店が
あるんですけど丸山さんがよければそちらでどうで
しょうか?安くて美味しいんですよ。」
公園から歩いて5分位のところにその店はあった。
こじんまりしていて、いかにも女性が好きそうな
お洒落なレンガ造りの店だった。
店内は多少混雑していたが若干のテーブルが空いて
いたのですぐに店に入る事が出来た。
「ここのカルボナーラすごく美味しいんですよ。
是非食べてみてくださいよ。」
女性は明るい笑顔で丸山に話しかける
(なんかいい子だな・・・話もしやすくて気さく
な感じで。)
丸山は思った。今までこうして女性と二人きり
で食事すらした事などなかった。今丸山は至福の
ひとときを過ごしていた。
しばらくして注文したカルボナーラが運ばれて
きた。二人は一口食べるなりお互い目を合わせて
「美味しい!」二人は同時に声を出した。
それは本当に美味しいものだった。濃厚なクリーム
にパスタがしっかりからまっていて、その上に半熟
卵がのっている。
「いつもここで食事しているんですか?」
丸山は女性に聞いた。
「週末の休みの日によく友達と来るんですよ。
丸山さんにも気にいってもらえて良かった。」
女性は答えた
「こんな美味しいパスタは今まで食べた事
ないですよ」丸山は答えた
女性も嬉しそうに肯いた。まるでふたりは初対面
とは思えないほど周りの人々から見たら仲の良い
カップルに見えていた。
「もしこの後予定とかなければ映画でもどう
ですか?」丸山は女性に声をかけた。
「ええ。喜んで」
この後も楽しいデートは一日続いた・・・
そして二人は映画を見終えて再び出会った公園に
戻りベンチに腰掛けていた。
「丸山さん今日はとても楽しい一日でした。
丸山さんならこの先十分に女性とお付き合い
出来ると思いますよ。とても素敵な人じゃないで
すか。」
少し悲しげな表情を浮かべ女性は言った。
丸山は言った。
「もうお会いできないんですか?」
女性は軽く肯いた。
「社の方針で同じ人物とは2度逢うことは出来ない
んです。我々は恋愛の対象としてお付き合いするのでは
なく奥手な男性に恋愛の手ほどきをするのが仕事
ですから・・・」
女性は続けて言った。
「丸山さん。自分にもっと自信を持ってください。
きっと素敵な女性とお付き合い出来ると思います。」
丸山は残念そうな顔をした。だが一方で女性の
言葉に勇気づけられていたのも事実であった。
「恋愛倶楽部」は草食系男子の為に作られた
恋愛支援団体であった。もちろんデートクラブ
のような如何わしいものではなく奥手な男子の
為に設けられた真面目なものだ。
丸山は女性と別れ家路についた。
それから2年後・・・
教会で式を挙げる丸山の姿があった。
相手の女性は・・・
「恋愛倶楽部」の あの 女性だった。
人の気持ちとは、どこまでも不可解なもの。
丸山は女性に本気で恋をした。
女性もまた丸山に本気で恋をしてしまった。
人は人とそう簡単に割り切って付き合いを
するのは難しい。
「気持ち」はなかなか感情でコントール
出来るものではなかった。
ある意味、恋愛の手ほどきを受けたのは女性の
ほうだったかも知れない。
同時刻〇〇公園の噴水の前
「すみません。田中さんですか?」
男に声をかける別の女性の姿があった・・・
いつも読んでくれてありがと~




