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「熊子さま、満州から討伐軍が撤退したとの連絡がきました」
「了解した」
すぐに李北に伝えた。洛陽から討伐軍が戻ってきた連絡が届いたが、だがすぐにはやってこなかった。洛陽まではまだ反乱が広がってなかったはずだ。それゆえこっちにすぐ来るかと思っていたのに。この近辺の軍事機能は止まっている。そのため洛陽から派遣されてないと機能しない。
しばらくして洛陽から連絡が届いた。どうも被害が酷くて軍を再編してるようだ。早急に対応するためには、以前考えていた地方の有力者の力を集める可能性がある。参ったないきなり本番か…。単純に防ぎきる事と、後は黄巾党本隊の幹部たちを漢軍に始末させることだ。そして一般兵をこちらで吸収して青州を清廉派主導で制圧することだ。
しかし徐州は守りにくい土地だ。山が全くない。青州にちょっと小高い高原みたいな場所や山脈があるが、こっちにはまるでない。河がそこら中にあるのでこれをうまく利用するしかない。河以外はまばらに砦を作って、当然迂回される場合が当たり前で機械化部隊の機動力でカバーするしかない。
騎兵となるが、それなら漢軍も当然わんさか持ってる。数で圧倒的に不利だ。大雑把に防衛計画を立てて、とにかくある程度抵抗力が強いなら、先に青州の方から攻略するだろう。後、全く何も知らせてないので討伐軍がすぐに戻ってくることを知らない。そのため青州の黄巾党本隊は洛陽付近まで進軍してしまっている。
再編成が終わり次第どう考えてもこっちを叩くだろう。馬鹿な…。あれはすぐに戻ってくるからあんなところまで戦線を広げたら叩きのめされる。いくら素人と言っても考えが無さすぎる。そもそもこっちは単純に打倒漢ではない。漢の制度を壊すのが目的であって、皇帝殺害には興味が無い。
だから洛陽に攻め入るのは十分な準備が整ってからで良い。まあ大した考えもない反乱だし、空白地帯時期を利用したの本隊はあまり深く考えてない。いざやってみたら楽勝ぐらいにしかとらえてないだろう。こっちは本来の再編が終わる前に、地方の有力者から多分攻められるから準備しないといけない。
その後本隊が漢軍につぶされた後、すべての連合軍との戦いになるんだろうな。とにかくかなり上手くやらないと、首脳陣を見殺しにする。だが末端の黄巾党員はうまくこっちに引き入れる。何度か持ちこたえたら青州の奪還だ。この後は領域を拡大した洛陽への上洛を目標とする。そして皇帝を抱え込む。
多分上層部を見殺しにするので、蒼天すでに死すのお題目は無視しても良いだろ。
四方八方から敵がやってきた。徳丸様から要注意と聞いてる孫堅とかいるんだろうな。世代的には1つ前の世代。劉備とかまだ10代ぐらいじゃないかと思う。数以外はすべてなんとかなる。その数は機関銃がもろ効くだろうな。ただ十分な数そろってるのは火縄銃だけになる。
後のものはすべて日本製なので、数がそれほど多くない。すべて日本の兵隊が持ってるので、地元兵には火縄銃しか持たせてない。もちろんありとあらゆる歩兵に武器を渡してるが、近接用になる。ただ思ったより戦えている。どうやって近接戦闘兵を生かすかが鍵だろうな。
だって重火器はかなり単純な使い方してる。まあ日本軍は凝った戦い方をしてるが、火縄銃はシンプルに数を使っての一斉掃射だ。なるべく日本以外で作ったが、鍛造なので間に合わない。製鉄だけ海外でやって鋳造は日本で加工するって形で足りない分はガンガン作った。ただ青銅器も使った。
中華と言えば青銅器技術が高いレベルにある。これなら鋳造でもかなりのものが作れる。ただこれ持たないんだよな。後大砲になるべく使った。大砲を鍛造で作るって無茶なやり方もある。だが鋼鉄製の大砲はさすがに日本製になる。後鍛造大砲はやめてもらった。無理して創る必要が無い。多分製鉄技術が高いアメリカなら作れると思う。
重火器で相手の陣形を崩してこっちは密集した近接戦闘兵でたたき殺す。これを効率的にやる事で兵数差をかなり埋める事が出来た。
すでに食料生産はしてるが、犠牲にしてる部分もある。はっきり言ってすべては守り切れない。その分食料は日本と海外領土頼みだ。いずれは領域を確保できるだろう。こんな四方八方から攻められる事は群雄割拠になったら多分無いと考えている。この最初の連合軍との戦いはまともに食料を生産して農地と農民を守っては苦しいと思う。
まあ一応やってるが、防衛線を抜けられて略奪焼き討ちなどはどうしても発生すると思う。
しばらくしのいでいると、これいつまで続くんだろう?となってきた。参ったな。なんとかなってるが、いずれこっちの方が戦力的な数が少ないので無理が来るのでは?数だけは多いが、正規の軍隊と戦うのはさすがに苦しい。ただあっちも一般兵は徴募された農民兵だよな。おまけに武器は圧倒的だ。
かつ今回高句麗制圧よりは数を抑えてるので、日本軍は職業軍人が大半だ。そなってくると歩兵をまとめる将兵の差か。まあ近接戦闘の歩兵はどうしても苦しいのは仕方ないけど。ただなるべく損害を減らすためにここぞってところでしか使ってない。普通逆だよな。消耗兵をこっちは逆に大切にしてるんだよな。
黄巾党のかなりの数青州にいるからな。それも苦しい理由の一つだ。
火縄銃による遠距離攻撃と大規模射撃。これを基本に高性能銃器による日本軍の補助。基本近寄れない。それでも抜けが生じたり、機を見て近接歩兵による攻撃を行ってる。非効率的じゃないか?全員に銃を持たせられないのと、火縄銃ってやっぱ脆い。近接戦闘の隙間ができてしまう。
連射性能、命中精度、煙。煙なんてどーせ無煙火薬日本が持ってるんだけど、技術流出を避けてる。特にただの同盟国で満州は支配地域になる。その満州にも教えてない。将来的には、硝石を作らせている。それでいずれは輸出をやめてしまうつもりだ。日本ならもっと高性能な火薬を安価に使えるんだけどな。
かなり優遇してるのは、豪州とアメリカかな。他国民を支配してる地域はいずれ徳丸様は独立させるつもりだと言ってたので高い軍事技術の流出はとどめているようだ。もしすべての徐州兵に日本軍と同等の軍備を持たせれば、何の不安もなく勝てると言い切れる。ただそこまでやってしまうと日本は中華を支配しないと行けなくなる。
徳丸様から聞かされてるのは、上の人間が多分現地人にも高い装備をと思うからだ。これは自分も聞かされてなかったら考えていただろうと思う。思った通りだがやや苦戦してる。ここを乗り越えればだが、ちょっといい話が聞こえてきた。以前から要注意人物としていろいろ聞いてる人物がいる。
董卓、この人物酷い俗物なのでどんな状況になっても漢に対して誠実な対応をすることはないとの話だった。洛陽から聞こえてきたのは、この人物が今中心人物になってるらしい。どの国でも辺境の紛争地域の出身者は軍隊として強兵が多いと。この人物も西の辺境の出身の人物。
頭角を現してきたというより、私利私欲で行動するので中心になってしまったようだ。機密だと思うが漏れるのは、もう隠せない状況だからだ。当然こんな人物が中心になってまとまるわけがない。ただ崩壊はしてない。こっちがまだ健在だからだ。黄巾党が消えたらすぐ内部分裂するってわかるが、そこがなんとも苦しいところだ。
ただとても良い状況になってきた。青州の黄巾党の幹部たちで重要な3人が死んだようだ。というか、にらんだ通り、洛陽に近づきすぎて、危険視されて優先的に軍の大半を振り向けられて壊滅した。ただ青州に近かった地域の人間はすぐにこっちに取り込んだ。これらの兵とともに青州だけの反攻作戦を開始した。
戦線を拡大しすぎたんだ。元々がただの農民の反乱にすぎないので無計画すぎる。そこら中にいる黄巾党がばらばらに反乱軍となったため、すぐに洛陽まで広がったが、そこを連合軍にコテンパンにされた。ただ頭なさ過ぎだろ?って思わない。何故か真空地帯になってたんだ。でもその何故を徐州軍の上層部は皆知っていた。
漢はこんなに弱かったんだと思っただろうな。そこで幹部3人も漢朝妥当と洛陽に向かってしまったんだ。実際危なかったらしい。ボロボロにしてやったからな。でも無傷の地方の有力者たちの軍と連合を組んですぐに討伐されてしまった。ただ思ったより装備が良くて討伐軍も多大な被害を被ったようだ。
ねらい目はそこにある。今なら青州奪還可能だと踏んですぐ攻撃した。戦線の広げすぎじゃないか?そうでもないんだ。逆に青州を取られる方が守りにくい。青州がある半島は海に突き出していて、制海権を完全にとってしまってるので、陸からだと、徐州から繋いだ戦線で守りやすい。
それに完全に支配下に入った青洲兵をそのまま使える。作戦は大成功して、徐州と青州で均衡状態になった。もちろんまだ連合軍は内部分裂してない。そこまでは持ちこたえないといけないが、そもそも青州の一部は徐州軍の領土だったため、農業政策など日本式を踏襲できる。後はこれを広げていけば良いが、敵地を支配した徐州よりはよっぽどやりやすい。
長期戦はやりたくないので、一計を案じた。ただかなりややこしい謀略になるので、数多くの地元民の助けがいる。これは李北と練る事にした。
「熊子どうした?」
「はっきり言ってなんとかなってるが、このままでは消耗戦だ漢じゃなくて中華全土と黄巾党の戦いになってしまってる。だからこれを分断する」
「どうやって?」
「討伐軍の中心人物に董卓と言うのがいる。これは漢への忠誠なんてこれっぽちもない。これを機に中央でのし上がろうとする私利私欲の人間でしかない。ただなんとも言えないのだが、こんな輩でも一致団結とは言えないが連合軍は黄巾党盗伐で内部分裂が起こってない」
「皮肉な話だな。自分たちのおかげで強さを保っていられるのか」
「ああだからこの董卓に楔を打ち込む。董卓に裏取引を持ちかける。通常ならこんな馬鹿な取引は成り立たない。愚策だと言える。だがこの人物ならありうる。董卓が邪魔だと思ってる連合の別の有力者を狙って攻撃して董卓軍への攻撃は軽微にする」
「確かに馬鹿げた作戦だ。そんな馬鹿な話上手く行くわけないないと言ってしまう。だがその董卓ならありえるんだろ?」
「ああまさに蛮族が服を着たような輩だそうだ」
李北と綿密に打ち合わせをして、洛陽の情報担当の黄巾党を使って仕掛けを行う。はっきり言って馬鹿な作戦だ。徳丸様に要注意人物の話を聞いていたのと、情報員からこの見解がどうやら事実らしいのを受け取ったため実行した。驚くことにすぐに上手く行った。普通何度も逡巡しつつやり取りしないか?
ただ合点が言った部分もある。こっち側からすると何かしっくり来てないのだが、向こう側からするとまず青州兵との戦いの被害が勝ったが酷かった点と。さらに徐州兵との戦いでは全く上手く行ってなく困っていたようだ。徳丸様が考える群雄割拠の構想をおそらく董卓は考え始めている。
もう1つは洛陽に向かった黄巾党はすでに討伐されてしまったため是が非でも反乱を鎮圧するって意義が連合軍全体で薄れてしまっている。董卓の思惑に乗ってやってこっちも面白いほど戦いが楽になった。董卓の邪魔な有力者を叩き潰し強兵の董卓軍を避けて戦闘できるためこっちの被害が格段に減った。
ただこれだと董卓の利が多すぎる。真の狙いは内部分裂の末の群雄割拠だ。この狙い通り分かる連中は気が付き始めた。そこで以前から準備していた黄巾の乱の地方への同時波及をやってのけた。これによって連合軍を抜けるきっかけを得た、董卓の八百長に気が付いた連中が連合軍から脱退し始めた。
洛陽を中心に漢の皇帝と董卓軍。そして地方の有力者それぞれの地域を守る群雄割拠の時代に突入した。ただ全国的な黄巾の乱は彼らが戻って軍を独自に起こすことですぐに鎮圧された。だがうれしい副産物もできた。全国の黄巾党の連中で上手く生き残った者はどんどん徐州青州に落ちてきた。
これにより狙い通り、武力によって覇を競う戦国時代に投入した。




