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 21歳になった。大きく時代が動いた。以前から張り巡らせた通信網から洛陽で出陣の準備が始まったらしい。ほぼ間違いなく満州への征伐部隊だ。日本から援軍を派遣した。多分すぐにはやってこないので十分間に合うはずだ。距離的に陸路の方がどう考えても時間がかかる。後同時に黄巾党にも軍隊を送り完全に部隊が洛陽を離れたのを確認してから反乱を起こす手はずを整える。


 日本軍が両方の地域に到着した。機械化部隊と最新の武器を多数持った軍隊で、海路による兵站もしっかり整えている。いざとなったら海岸部での戦いは援護の砲撃が可能だ。後は洛陽から盗伐部隊が全軍でるのが徐州攻略戦の合図になる。この戦い実は黄巾党の上層部に全く知らせてない。知らせたら多分及び腰になるからだ。


 そりゃ当然だ。私もこの情報が無ければ戦いたくない。その事は証拠は示せないが、理由だけ言うつもりだ。そして無理やりに巻き込んでしまう。そしてこの戦いでできる限り黄巾党の上層部を見殺しにするつもりだ。山東省も完全に支配下に置きたい。後はもう現地の人間に任せる。私の仕事は兵站と日本軍を配置するだけだ。



「熊子、いよいよだな」


李北が話しかけてきた。


「ああ、日本軍は自分たちに任せてほしいが連携はとりたい。その繋ぎとして動こう。黄巾軍は任せる。ただあっちの連中はどうなるんだ?」


「まあ無理やり巻き込むから最低限の連動だけで良い。どのみちこっちを頼らないと早々に破綻するから内部分裂は無いだろう」


 この戦力で負けるはずないんだがな、数も黄巾軍がそれなりにいる。ただ最新鋭の武器が桁違いの武力を発揮するだろう。しかもこっちはずっと北方で連戦してきた最新の装備を扱う熟練者ばかりだ。細々した準備をしていると洛陽から連絡が届いた。いよいよ討伐軍が洛陽を出発したらしい。


 李北に話して幹部を集めて素早く行動に移した。いよいよ徐州侵攻作戦開始だ。まずは足の速い車両と戦車、騎兵を使って徐州の中央から派遣された徐州刺史を殺すことにする。秦の制度と似てるので、おそらく項羽がとったこの作戦が上手く行くだろう。戦力不足は兵器で補えばいい。後はトップが殺された混乱に乗じて黄巾党に各地で暴れさせればいい。


 ただここ統治するので、かく乱が目的であってやりすぎるなとは言ってある。この点青州の黄巾党は制御できないだろうな。後で青州はもらい受けるが、初期の段階で彼らとはあまり関わらない。盗賊のような彼らと同類と見られると困る。徐州を狙ったのは青州に近いのは当然だが、それ以外にもある。


 兵隊の管理がどうなってるか?で地元の有力者が中央の権力が弱ると軍権を奪ってしまうのと私兵をある程度持つのでそれも問題になると。それに対して徐州はそういった大きな勢力の有力者がいないため。中央から任命され派遣されたものが強い権力を握るだろうと、徳丸様の見立てだった。


 徐州は後者なのでこの作戦となった。どっちが厄介か?と言うと当然地元の有力者になる。人が集まりやすい。徐州において本当の問題は中央の黄巾党勢力打倒のための討伐軍だ。戦略としてはこうだ。防御を徹底して、くみしやすい青州の方に向かわせるようにする。敗残兵を徐州でどんどん引き受ける。


 最終的に上層部を見殺しにするか弱体化させて、青州を攻める討伐軍を打ち破って青州と徐州を黄巾党の支配する領域にする。


 ふー制圧完了だ。急いで防御を整えないと。後統治機構も作り上げないと。ある程度は幹部でなんとかなる。日本軍に補助してもらってもいい。そして、今まで漢で働いてた役人も使えるなら使っていこう。ただ漢とはかなり違う統治なので無理には雇わない。ただ初期の段階ではそう緻密にはできないので、問題になる事もないか。


 大きな問題は、最終的に支配ってなっていくときに王国じゃない点だ。この点最終目的は劉一族を迎える点にある。あくまで軍の頂点李北=王を仮にやっていくのが良いだろう。偉くあっさり片付いたが、元々討伐軍との戦いこそが本番だと思ってて、どれだけ堅牢な防御ができるか?と、支配地域として国のように機能させるのが重要になる。


 何度も押し返して、それぞれの地方の有力者が自分の都合で地元に帰って軍閥化して漢の討伐軍に崩壊してもらうのが目的となる。


 日本から無理して巨大蒸気船を使って重機や戦車様々な機械を運んできた。すぐに国境の重要拠点の防御を上げるように要塞化した。向こうから帰ってくるまで時間との勝負だ。ただ安心感もある。通信の充実により十分に時間に余裕をもって作業を進められる。どーせならあっちでコテンパンにやられて兵力が激減すればいいのにな。


 後は食料だ。大盤振る舞いで世界中から集めた食料をどんどん運び込み住人を懐柔する。そして海外からの出戻り兵士を使って訓練された兵を防御施設に送り込む。ただし実戦経験はない。それでも銃の扱いに慣れた兵隊がかなりの数来てくれるのは助かる。次に国家として回していくために、様々な農作物を使って食料の短期的な増収を目指す。


 同時に従来からの作物も肥料などを使って増収を目指し、かつ品種改良した作物によってさらに底上げする。食料をあまり無料で配布するのは良くないため。食料を与える代わりの賦役によってさまざまな土木工事を行う。当然要塞化の作業もあるが、治水灌漑設備などの工事も行う。


 じわりじわりとこの新しい食糧危機を脱する農業を土台とした国家を広げていく予定だ。まずは最低限から漢を弱体化する。散発的には黄巾党盗伐部隊もやっていきてるが、いかんせん、十分に準備した大軍が北に行ってしまったためどうにも対応できないようになってる。おかげで実戦経験が足りない兵隊がどんどん熟練兵になっていってる。


 相手の数がさほどで無いならまず負けない。問題は大軍がこっちに向かってきたらと、漢がせっぱつまって地方の有力者に要請したらだな。漢は秦を踏襲してるため、今の日本のような地元の有力者の連合国家ではない。そういった人物がいても地縁と切り離した地で代官のように制度になってる。


 じゃ意味が無いのか?と言うと、直接地元の有力者の伝手で地方の人間を集めて軍隊に仕立てるって奥の手がある。当然これは反乱の芽になる。だが毒には毒だ。明らかに農民の反乱の方が問題だからな。例え漢軍本体を叩けても、さらにその奥の手で連合軍が結成されるだろう。


 最終的に徳丸様の見立てのように烏合の衆が自身の利益を考えて帰ってしまう事が最終的な目的となる。黄巾党が崖だとすると、崖から誰だって最初に落ちたくない。他人に追い落とし自分は生き残ろうとするだろう。ただ今それが崖じゃなくて、段差程度にみられてるだろうからその意識が変わるまでは戦い続けなくてはいけない。


 これ無理が無いか?だって中華全土の連合軍と小国が戦う?これが互角なら中華全土を支配する力があると言える面がある。ああそうか徳丸様防御だけならある程度問題が無いと言ってたな。うちの武器は特に防御向きなんだ。


「李北、段々王っぽくなってきたじゃないか」


「王は皇帝なんだろ?」


「まあそうだが、そりゃ対外的にってだけだ。人民のまとめ役は間違いなくお前さんだ。段々初期来た頃と自分の役割も変わってきた。今本当に日本軍と清廉派のつなぎ役ってだけになってきた。これからはなるべく裏方に回るから旗頭は頼むよ」


「確かにこれなら日本の傀儡って事はまずないな。背後から動かすってのもあるが、これはちょっと違う。はっきりいってみてて面倒すぎる」


「そうだな、それでもこうしないと自分たちの国を創るって意識にならないからな。正直言えば日本からの助言が無いと多分反乱って一過性のもので終わっていたと思う。大事なのは国家の設立とそれを土台とした経戦できる力になる。ただの反乱軍じゃないと分かったら漢の対応も変わるだろうなと思うだけどな」

「後漢みたいになるのが望ましい。嫌なのが陳勝の反乱だろうな。この2つは同じ反乱だが、陳勝とは全く関係が無い、項羽や劉邦の反乱軍が奪ってしまった。でも後漢は反乱軍から直接新を打倒したから、ああいう形に持っていきたい」


「両方とも反乱軍同士の戦いで終わってるが?」


「そうだな、今回はそういう形にならないと見てる。反乱軍打倒から地方の有力者が私兵を募って独立して戦国時代に近くなる。それらに反乱軍が漢と連合軍を跳ね返して群雄割拠で戦うのが想定してる事になる」


 まあ最もこれは徳丸様の受け売りだけどな。あの人の先読みはやたらと鋭いからな。

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