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そういえばどんどん進んでるなってのに、私が言わなくてもミリカンの実験みたいのしてた。電子自体は陰極線で見せてて概念はできてた。定性はできてたから定量をって流れになってそれは勝手にやってたようだ。まあそれが1電子って発想につながってる。陰極線だけじゃちょっとピンと来ないよな。
「皆に聞きたいんだが、電子が動いてるってモデルってどこから来たの?」
「だってふわふわ浮いてたら引き寄せられてくっつきますよね?離れようとする何かを思いつくと運動かな?と思ったわけです」
「なるほど、そのモデルの問題は分かってるよね?」
「はいその場合円運動によって何かしらの電磁波を発してエネルギーがなくなくなって核に引き寄せられます」
「その場合アルファ線は曲がらないよね?」
「ええ様々な実験結果はそれがおかしいと示しています」
「まあ頑張って」
ボーアモデルまでまだかな。後は時間経過見て話すか。ここからちょっと難解だからな。それにしても電子が動くモデルって当然なんだな。ボーアモデルになるのは惑星運動みたいのだと矛盾が出るからなんだ。じゃなんで動くんだ?となるんだ。たしかにふわふわ浮いてたらプラス核に引き寄せられるよな。斥力を運動に求めたわけか。
ラジオの変調部分の設計図を見てる。
「皆今回のこれ意味が分かる?」
「うーん、ラジオって原型はできましたよね?」
「うん、ええーっとね理屈をしっかり把握してほしい。設計図ってのは理論だてた装置を回路として繋いでるので、全体が理屈の塊なんだよ。送信のための高周波発振装置。これなんて分かりやすいよね。でもこれ1つじゃ何の意味もない、乗算器によってアナログ波と合成するのが分かるようになってる」
「そもそも初期に作ったコップ電話ではこんなの必要が無い。何故か?」
「有線の中に電気信号を伝えるのじゃなくて、電磁波として伝えるから?」
「そう、そもそも電波には厳密には必要じゃないがほぼ必須になる。とても重要な回路になる。その理屈がこの図では良く分かる。ある意味回路図が説明になってるんだよ」
「初期の頃その失敗しましたよ」
「ああしたんだ」
「有線と同じようにそのまま電波としたら送受信の単位時間の情報量が酷いことに、そもそも有線の電気信号を電波に変えるのが難しい。電波自体を出すのは簡単なので電信と電話はこうも違うのかと躓きました」
「電磁波の同調自体は簡単なんだよ。初期にやったからね。覚えてたよね?ただ、そこに特定の音声情報を含んだ電気信号でだすってのがな…。まあもう君らの方が詳しいよ。私音声を有線電気信号で伝える機械を皆に教えただけだからね。無線は同調システムだけ、これらを組みあわせて無線音声通信にしたのはほぼ君らの功績だよ」
数日してインピーダンスについて話し合っていた。
「これ名前自体はまあ好きにしてくれていいけど、変えるなら言ってね。交流の抵抗ってものかと、その程度は皆ももう測定してると思う。でもさそれだけにとどまらない。直流の抵抗値と違うのは多岐にわたるんだ」
「例えば?」
「コンデンサがアンテナの原型だと前言ったよね。あの延長で交流とコンデンサって特別な意味がある。もちろん君ら無線実現してるから分かってると思うけど、理論化ってのをしっかりやってほしいから。それで終わりにせずに今回の話になる。他にもコイルもそうだね。電磁波関係で扱う電子装置に絡みまくる」
「違うってのは分かってると思うけど、それを数学モデルでいろいろと解明してほしいんだ。その中で多分使うことになるのが複素数」
「虚数」
「そう。単純に言うと計算が無茶苦茶楽になる。虚数自体に深い意味はあるんだけどね。波動で使う場合って大半が難解な計算過程が少なく単純なものになるからが大きい。例えばで以前電磁波の合成について話したと思う。この計算で使うことになると思う。数学モデルを絡めた理論化ってまだやってないよね」
「その必要が強くいらなかったのも分かる。混線を避けるため波長の違いによって通信の同調を分けて使うんだよ。今同調が単純で、たんに波長の単位時間の情報量を上げるためだけに変調使ってるでしょ?これがここからは変わってくる。火花通信の混線問題をこれでかなり解決できる」
「そのためには今みたいになんとなく作ってては困る。綿密な数学モデルを背景にした電子回路の設計図を使った計画的な機械作りを目指してほしい。正直言えば私もこれ難解で大雑把にしか伝えられない。数学の応用的発展と丁寧な設計図作りは旨く出来たら私に後から教えて、君らの見て自分も考えをしっかりさせるよ」
いよいよボーアモデルへの移行の前に、ハイゼンベルグの行列力学について話した。これを前もって話すのはシュレディンガー方程式との等価について語るためだ。
「いずれ解明されていくだろうと思うが、これらの話から不確定性原理について話さなくてはいけない。物体の位置と運動量は同時に観測できない。この考えのもとに新しい物理学は組まれている」
「どういうことですか?」
「まだ材料が足りない。ただこの力学はそれらの発想が根底にある。材料と言うのは原子に付随する電子の位置や運動量の記述についてだろうね」
ああ皆ポカーンとなってるな。
「これまでもこういう事はあったよね?恵みの書だ。最近は皆が頑張って私に先んじて後から報告を受けてる。でもこれは多分すぐには無理だろうと思って話してる。順序として一緒に話したいからってのもある。その一緒にが原子モデルについて、電子を波だとすれば問題は解決するんじゃないかな?」
「確かに、でもそれは光の話じゃなかったのですか?」
「うん、まあこれは予言ではない、あてずっぽでも出てくる。光がどういったものか?は言えないが、とても小さな粒子は2重性を持つのではないか?という連想だ」
「実験事実ではないのですか?」
「うん違うよ、でもこれを実験することはできる。こう考えれば上手く行くって何度も経験してるよね?そして科学はこれを事実か?検証するところに科学たるゆえんがある。発想法自体は妄想めいた5行陰陽道と変わらん。今度実験しておいて、x線による結晶の回折格子は見た事があるよね?あれ電子線でも出るか確かめれば良い。大体100Vで加速すれば良いかと思う」
「100Vってのは?」
「いろいろ確かめればいいし、電子が波だとして、X線の波長ににたものを調べるって発想なんだ」
そしていよいよシュレディンガー方程式の出番だ。うーんこりゃ再度私も含めていろいろ考えた方が良いな。問題は波動関数の収縮だよな。これどうしたものか…。
「以上をもって一旦量子力学について伝える事は置いておく。後は様々な実験を考えて試してみて、かつ数学的モデルの確かさを確認して。そしてこれらのもたらす意味が分からないと実験に使えないよね。粒子の存在確率って考えるとこれが上手く行く」
あちゃーポカーンってなってるな。
「あんまりこれ突っ込まないで、究極的なところは良く分からないんだよ。微小な物質の性質は私たちが目にする感覚的世界観と全く違う。これが多分呑み込めない原因だから」
「要するに観測が単純じゃない。それは曖昧で確率的にしか分からないですか?」
「そんな感じ。それに対する一つの見解はある。不確定性原理だ。観測と言うから分かりにくいけど、私たち目で見てないよね?」
「はい」
「機械で測定して最後に目を通して情報を分析するんだ。だから実際の観測は測定機械がやってるんだ。それらは何かしらの光りなり何かをぶつけて反応を見ると集約できるんだ。その行為が量子状態の物質をそのまま観測できない理由じゃないか?と解釈してる。確率的に記述されるが、それは空気の分子の動きが複雑すぎて統計的に圧力を処理するなんてのとは違う」
「確率的にしか観測結果の情報を得る事が不可能って話かもしれない。1つの解釈ね」
しばらく何も伝えずにいたら中性子が発見された。まるで予見していたようにじっとしていた。実はそうだった。これ多分すぐ発見されると踏んでいた。アルファ線を原子にぶつける実験がずっとされていたのだから中性子はすでに見つからなかっただけでそこら中に居たのだ。だから敢えて何も言わずに待ってた。
そこからは立て続けに中性子の違いによる同位体が原子崩壊しやすいことを突き止めた。動くならここだ。
「集まってもらったのは、中性子が発見されたことにより原子モデルをさらに発展させる。原子は、電子が波として原子核の周りを漂う。そのさいプランク定数に従って離散的なエネルギー順位を持った軌道に配置される。これ意味わかる?」
「あるきまった軌道しか存在できない?」
「そう、ただ波なので月のような単純な軌道じゃなくてぶれはあるけどね。中心には原子核があり、それらは陽子と中性子が結合して原子量に応じた個数存在する。これによって同位体の事も綺麗に説明がつくと思う。モデルについてはまだまだ様々な事があるが、それはおいおい見つけてほしい。皆を呼んだのは、ここからとても重要な事を話す」
「同位体によっては崩壊しやすい原子があったのが分かったと思う。特にウランにおいては簡単に崩壊する。これが何を意味するか?君らはウランラジウムポロニウムについて、そらの鉱物の土塊が熱を持つとの体験をした事が無いか?」
「あります」
「そうだそれは原子崩壊がエネルギーを伴った現象だからだ。そもそもαβγ線の放出がエネルギーそのものなんだ。これから厳密にそのエネルギー量の定量的な測定をしてほしいが、これ予測ならある程度可能だ。以前話した相対論のE=MC2がここで生きてくる。これらの原子崩壊で原子は変化する」
「まさに錬金術の理想がここで出来上がる。ただ金を作る事はこの現象では出来ない。いずれそれも君たちに発見してほしい。ちなみに別の方法で金はできるが、金より高価なエネルギー消費によって誕生する。そのため錬金術の夢は経済的理由で意味がなくなってしまう。これが錬金術の最終形だ。脱線は置いておいて」
「この2つの原子実は重量の総量が違う。崩壊後減ってしまう。何故なら分かると思うが、アルファ線は質量があるが、γ線は質量が無い。これは高いエネルギー電磁波だ。このエネルギーの元はどこから来たのか?それがE=MC2だ。崩壊前と崩壊後の質量の差がエネルギーに変換される。これが君らが体験した熱の正体だ」
「これ人間が焼けるような温度ではない。だがそれに騙されてはいけない。このエネルギーは君らが体験したことが無いような爆発的なエネルギーでこれはダイナマイトのエネルギーなんて比じゃない。じゃ実際人が燃えないのは何故か?」
「うーん、なんでしょうか?」
「いずれ君らもこれを解決してほしい。だが今回は助けよう。崩壊しやすい同位体の濃度が低いからだ。おかクズは燃えるが、それをおかクズより多い土と混ぜて燃やそうとしたら多分燃えないだろう?そんな比じゃないほど濃度が薄いからだウランは基本安定した物質だ」
「以上を踏まえて私が焦って君たちを促したのが分かるかい?」
「はいなんとなく、ここ最近の発見すごいものだと自分でもわかります。だがそれに対して若干徳丸様から不満を感じました。それが数々の助言だったと思っています」
「そうだ私は焦っている。その最終目標が、原子崩壊を利用した爆弾を軍事利用する」
しばらく沈黙が出来た。
「まあ分け分らんだろう。実際その沈黙が恐怖で合った方が望ましい。いずれそのエネルギーの膨大さが分かったとき恐怖するだろう。だが私は軍事利用する。科学者の君たちに政治軍事について考えらさせるのは気の毒なのだが、これは避けて通れない。とんでもなく怖いものを作るからだ。威力だけじゃない、放射線をまき散らす放射性物質を残すからだ」
「その大地が不毛の大地になることはおおよそ分かるんじゃないか?」
今度の沈黙は恐怖だと思う。彼らには何度もX線や放射線の生物への影響を研究させて、その問題が良く分かっている。実験程度でやばいのを知ってるものたちだ。その軍事利用のやばさを良く分かっている。
「君らは単純に敵だから割り切ってると私が思ってる程度か?と思う。私はこの年になるまで政治軍事のトップも走ってきた。その視点で言わせてもらうが、私ほど敵対勢力に対いて穏便な姿勢で挑むものはない。私の両方の部下ならそれが良く分かっている。たった1度だけ私でも残酷だと思った事を敵だからという理由でやった事がある」
「第一世代の皆なら知ってるだろう。かって私たちは寒冷化による飢餓に苦しんでいた。若い世代は知らないが、最初の世代はそれを研究していた世代だ。すごく良く分かってるだろう。無知で未熟だった私達はすべての人は救えなかった。だから敵だからと割りきった。その1度だと私は自分で思ってる」
「そこでだじゃ何故そこまで敵も温情を賭ける私がそこまでするか?私は爆弾のために君たちに研究させたのではない。この世界の基礎原理だからだ。言ってみれば科学を研究したら絶対にここに行き着く。いずれ我が国だけではなく科学が広まれば、この非情な爆弾が危険な人物の手によって開発されるぞ?」
「そうなるまえに我が国が先手を取る。そして恐怖を受え付ける。科学を他の国に教えても、この爆弾の開発は監視することになるかな…。そういうのを考えている。だが誰もが君たちほど恐怖するか?それは君たちが実験を通じて理論を通じて知ってるからだ?どっちかがかけてもこの恐怖は伝われない」
「じゃどうするか?実際打てばいいんだ。酷いやり方なのは分かってる。ただ頑強に抵抗してこの爆弾を作る可能性のある国家を排除しなければならない。その勢力にぶつけるつもりだ。私の見るところ、その勢力は欧州だと見てる。それ以外は私は我が国が開発を阻止できるような制御する国家になるだろうと見てる」
「欧州に仕掛けるのは何十年も後になると見てる。軍事機密を漏らすがまあ良いだろう。先に喫緊の問題中華を制御する。そこで2方面作戦が不味いのは分かるだろう?しかも地球の裏側だ。欧州は最後だ。まだペルシャがあるが、ここはローマ程問題視してない。インドもあるがここもさほど問題視してない。中華さえ制御下に置いてしまえばだが」
「他にも中華の北方の草原騎馬民族がいるが、これは最後にする。理由は大帝国が出来たわけじゃないのでローマ後まで放置だ。それに草原に国境を接するあらゆる国から包囲して制御するから最後になる。以上だ、爆弾作りはものすごく先なので、まだ何も気にせずこの世界の謎を解き明かしてくれ」