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 やっとデカルトとベーコンを伝え終わった。デカルトと言えば、われ思うゆえにとか演繹法では?正直演繹法って科学じゃなくても教えられる。有用なツールであるのは確かだが、そして3段論法はまさに歯車とピストンだ。結局それが機械的世界観につながっている。われ思うは、あれは現代脳科学の発達で、デカルトが排除した精神についに触れるようになったので微妙な部分が出てきた。


 倭国大乱は全国的かもしれないが、邪馬台国を誕生させた魏が記録した倭国大乱に近畿が含まれるのか?これは疑問だ。この根拠として防御しやすい高台への移動が挙げられてるが、これ洪水じゃないか?と見ている。そもそも時代がずれている。後戦争によるものじゃなくて、大王は治水が大きかったのではないか?と見ている。だから今そこに積極的に土木事業に力を貸している。


 寒冷化の時期雨も多かったらしい。それで治水によって人々の支持を集めたのじゃないか?と見ている。そもそもおそらく宗教的指導者である大王家が皆の中心になって治水を進めて権力が強くなったのじゃないか?と考えているのと、後は後の時代の天皇の事業に治水がある。これは中国の夏の王もこれによって支持されたので治水=王権は結びつきやすいのじゃないか?と見ている。実際どうなるか?は後の時代分かるのだけど。


 倭国大乱と言うわけじゃないが、勢力の堺の小競り合いは続いてる。別の勢力はつぶしたが、他にも境を接してるのでそこの争いが絶えない。ただ、つぶした勢力は海に接してるので、堺の争いがそこまでは増えてない。いずれ当主を継いだらこういう対処しなくちゃいけないんだろうな。実にめんどい。もちろん寒冷化や倭国大乱には全力でやるが、こうなんていうか今力を蓄えてるので、争いたくない。そこでちょっかいかけられるとつぶしてしまいたくなる。ここ以外で勢力を伸ばしてるので、大王に目を付けられるし、あまり本拠地は広げたくないんだ。


「蒸留やってみようか」


 僕は、陶器やガラス管を駆使して蒸留器を作り上げた。


「じゃお酒入れるよー」


 酒は太古の昔からどの地方にもある。いわゆる甘酒どぶろくと言われるような濁った酒だ。どーせ蒸留するので元が澄んでる必要はない。沸騰させずに気体を出させる。やがてつないだガラス管の向こうの陶器を水をかけて冷やす。1時間ぐらい続けると冷やした陶器に液体がたまってくる。ただこれもガラスにすべきだったかな?見えない…。ゆすってみればちゃぷちゃぷ言うから分かる。


 ジョイント部分を合わせてから焼いたので陶器である必要がある。すりガラスにでもする技術があればガラス同士をハメるのだが。通常蒸留器は金属で過去作っていた。でも実験なのでこれで良いのだ。


「すごいお酒臭いですね」


「うんこれ酒の成分が通常の何倍も濃くなってるから。これもちゃんと酒として飲めるから。酒好きなら多分喜ぶと思うよ。だからこれ価値=富になるから。ただこれだけだと職人の技術どまりだ。科学と絡めていく。物と言うのは、今回は水で説明する。水は液であり、沸騰させると湯気になる。そして冷たくすると氷になる。でもね温度を変えれば多くのモノって同じような性質を持つ。分かりやすいのが青銅だよね」

「温度を上げれば液になる。この温度に違いがある。酒は、酒の成分と水でできてる。酒の成分は水とは湯気になる温度が違う。それを利用してやや沸騰より下げて熱を加えた。酒の成分と水の成分が混じって湯気になるけど、酒の成分の方が多く湯気になる。これを利用して酒の純度を上げるのが蒸留なんだ」

「1つ1つのものは、ただの酒職人の話になるが、それらを組みあわせて共通点を見ると、温度の違い、状態の違いってのがもののすべてで共通してる。こうやって知の蓄積をしていくのが科学なんだ。かつ君たちは酒職人さんと新しい酒作りを手伝ってあげてほしい。これはとても難しいけど、熱さを図るものを作ってほしいなと思う。それは多分すごく職人さんたちに役に立つから」


 科学班をどんどん増やしたいが、世代を繋ぐ事を重視してバイバイで増やしてきたのを止めて次に入る人員をかなり減らした。わざと領土を増やさないようにやってるからこれが限界だ。農業改革が無かったらほんと終ってる。ただ一つの成果が見えてきた。もちろんそれは力富につながったって単純なものじゃない。この時代の常識に疑いを持ってきた。


 それは洗脳ではない、事実おかしなことに溢れてるからだ。その見方を教えてるからだ。ずっと確認しろとそればかりやらせてきたから。この班員たちはこれだけでも使えるぞ。その価値を分かるのが僕だけなのが残念だが。


 望遠鏡が出来た。実はルーペが出来たらすぐなんだ。ルーペ自体は紀元前ぐらいからある。問題は良いものはかなり後なのだが、最大の問題のガラスを先にやってしまったので、で肝心の顕微鏡はまだまだ…。発想は似てるのだが、このレンズかなり精密。まだ時間がかかるだろう。とりあえず医療チームにはルーペで見られるものからはじめてもらった。


 望遠鏡の発明から天体を使った経験則の航海をちょっと理論的なものにしようとしたのだが、最大の問題時計が参った…。時計を作る技術はある。ただ時計塔のようなものになる。そんなもの船につめるかー。小型化が課題として時計塔を創ることになった。ただ、折角なので根本の部分を科学班に伝えることになった。


「我が家秘伝の航海術についてなのだが、これも科学のメスを入れようと思う。天体の位置と時間を知る事で、現在地からどこへ向かうのか?の手掛かりになる。そこで重要になるのが時を図る時計というものと、6分度器と言われる角度を測るものが必要になる後者はすぐ作れるが、前者は船に積む大きさにするのは現時点で不可能」

「そこで概要だけ話して、小型の時計が出来次第君たちには船乗りと協力して経験則ではない精度の高い天体航海術を編み出してほしい」


「私たちも船に乗るという事ですか?」


「船にはどんどん乗ってほしいが、未知の航海はやめてくれ。既知のそれもかなり安全な沿岸航海だけ。君たちを育てるのにどれほど富が必要だったのか…。当然船乗りも貴重だが、彼らはいつかは航海に挑戦しなくてはいけない。君たちと仕事が違う。危険未知のルートは君たちと協力して学んだ船乗りに任せるから」

「これは知は力なりを如実に感じるぞ。海軍の増強は先に向けた最重要課題だからな。船は富だけじゃない力にも直結している」


 あ、ちなみに正確な時計をなら作る技術はない…。改めて時計って技術の結晶なんだなと。時計の小型化なんて先の先だ…。


「実用化はかなり先になったので、今回はこの意義を話したい。本来なら科学者君たちが試行錯誤していくのだが、僕は時間を早めたい。やがて来る寒冷化とそれに伴う倭国大乱を乗り切らないといけないからだ。ピンと来ないかもしれないが、以前蒸留で触れた温さを測るものについて、これで僕らがいるここ自体の熱さを図ったらどうなるか?」

「1年間を分割して暑さを図ると、数年前の年より寒くなる年が出てくる。数字が顕著ならもう農作物に被害が出てるはずだ。急いでほしいと言うのはこれもある。暑さを図る器機が必要なんだ。良くないと分かってても僕が言うのはまだある。船乗りなんて多分まともには協力しない。統括する我が家の命があってこそなんだ。しかも船乗りには他勢力とは比べ物にならない航海の力を与えている」

「意義について、ようはこの船乗りの経験則をもっと分かりやすい形で残す。ここに肝がある。次世代につなぎやすい。後は高度な技術が口述経験則ではいつのまにか消えてなくなるって良くある。それらをただ伝えるだけじゃなくて、個人個人で変化する経験則じゃないもので残していく事ができる。それが科学の役割の1つだ」

「そろそろ君たちも僕のいう事が頭のおかしい思い込み馬鹿ってのが変わってきてるのじゃないかな?と思うけどね」


 むふふ苦笑したな見たぞー。僕もかなり無茶したからとがめないけどね。


 火縄銃が完成した。まあ完成しただけなんだが、やっと暴発しないでってだけだ。鉄の銃が難しいのはねじの技術が日本になかったからで、これを僕が伝えておいた。今後も同じ方法で作ればいいとは思わないが、とりあえずは雄ねじを柔らかくした筒に押し付ける形で完成。青銅の方は大量生産できるだろうが、鉄の方はこつこつたららでやらないといけない。


 そもそも鋳造製鉄はできてるが、炉があっても鉄鉱石を細々とした輸入に頼ってる。石炭も手に入れたいし。半島を占領なんてやったら漢か後の公孫瓚が出てくる。後世倭国が成功したのは中国の動乱期のどさくさだ。唐が出てきてけちょんけちょんにされた。日本国内と、あまり人の手が入ってないアメリカオーストラリアに向けた地域の確保だろうな。


 理由さえあれば人は移住してくれる。寒い季節さえさければ実はオーストラリア、アメリカの難易度は低い。特にオーストラリアはスンダランドがあたっとはいえ、過去拙い航海術とぼろい船で移住してる。我が家の航海術があればそれほど難易度が高くない島つたいのルートを確保できるだろう。


 ただ東南アジアにも行ってないのにそこまで行くのか?なら先にそっちだ。半島はある程度はちょっかいを出すが、半島の鉄を土台にした戦略は大王は知らないが我が家はとらない。


「今日は数学と科学の関係について語りたい。僕は科学にとって必ずしも数学は必要だと思ってない。正直今の世の中じゃ4足演算ができればそれでいいと思ってる。でもいろいろなものを教えるのは将来科学と連動させるため。科学にとって何が科学たらしめてるか?なら最初に教えたまず様々な言及を確認することになる。これはやがて自分で世界の事象へ言及することになる。自分でこれがどうなのか?確かめることになる」

「でもね、世界で今後これ以上の知のツールは簡単には生まれないと思ってる。これだけ多くの人倭国だけじゃなくて海の向こうにたっぷりいるのに、科学なんて知は生まれてない。それは何故か?確認作業だけじゃダメなんだ。火を起こすには火種がいる。確認作業はいわば木炭のようなものだ。木炭が燃え続けるには木炭こそが重要だと分かるが、木炭が燃えるとなるには火種が必要になる。燃えない木炭はただの黒い炭だ」

「僕はこの木炭を燃やす特別なはじめを教えてるつもりだ」

「この世界がどういものかさぐるこれが科学なのかもしれない。それに対して、過去の人がこうだといったのを確認するのは自分で言及を作り出すより簡単だから僕は最初に話した。近畿じゃまだ石の武器を使ってる勢力もあるらしい。僕らはまずは石を手に取った。そして石を理解して利用していく。これが青銅や鉄に変わった。世界を理解することが道具を上手く使うことにつながる」

「それに対して数学は人の頭の中のものだ。世界を理解する必要が無い。ゆえに根本的には科学の肝ではない。だがはじめの話をした機械的世界って発想は数学とものすごく相性が良い。水車などの歯車は寸法を測らないとまず上手くいかない。後から組み立てだから、見当はずれの大きさの歯車じゃ困るんだ」

「科学が誰も思い至らないのはこんなところ。科学における数学の重要性が分かったかなと思う。後数学も言語の一部だとしたら、個人個人の見立てのズレが無いから説明に楽ってのがあるね」


「3角関数は分かります。地形の把握ですよね」


「うんそうなる。特に海岸沿いの地形はきちんと把握しておいてほしい。本当なら浅瀬なら海の底も地図が欲しいけど、それはおいおいだね」


「微分積分ってほんとなんですか?」


「根本的に知って役立たずで良いんだよ。前から芸術とか詩もいずれは何かしら手を付けたいと言ってるからね。ただ中華がこういうのにすぐおぼれて技術関連の知が割を食うからね。この先もあの国は変わらんよ。そこは絶対真似しちゃダメ。しかもそういう姿勢なのに無駄に技術力高いからね…。数の遊びだよ本来は。でもそれいずれ科学的に役立つよ。すぐにでもなら望遠鏡が出来たから、天体を見るとき使うと思う、でも使わない場合も多いかな…。いずれ話すよ」


ガラスの管とフラスコのような容器を用意した。ゴムが無いので隙間はとりあえず獣脂を塗る。中に着色した蒸留アルコールを入れておく。


「簡易温度計出来たよ」


「これが?」


「うん、液体が熱くなると膨張する。その分ガラス管の液体が上に上がる。後は基準を作って、メモリを割り振ればいい。問題はかなりある。基準が難しい。沸騰させれば水は一定の温度でとまるからそこにいれれば、水の沸騰温度を基準に出来る。ただ獣脂で繋ぐととけるかもね。問題はこれ上を閉じないと液体が気体になって消えてしまう。汗かいたりすればすぐ分かると思う。そうすると基準の線とか作ってもずれてしまう。閉じたらどんな風な挙動になるか?正直分からない」

「後はもっと線を細くしたいね。4,5年すれば差になるけど、寒冷化を調べるにはちと雑な温度計だと苦しいね。んでそんなものたとえできても扱うときに折れる危険性高い。だから管の厚みだけ厚くて管の空洞だけ細くしないと、そんな技術多分職人できるかな…。ガラスの技術発展は置いておいて、使えるか?検討してみてよ」

「あそうだ、上に油入れればなんとなるよ。ただそれでも蒸発する。複数創って対応するしかないね。後は基準か…」


 毛細ガラス自体は簡単に作れた。ただこれ折れるよな。どうやって外を引き延ばすのか。


 ある日ふと閃いた。アツアツのアルコールの中にガラス管に小さな球をくっつけたような良くある温度計の形状をひたすと中に入ってくる。これを空気が消えるまでアルコールを入れて、ガラス管を閉じる。これが難しいので、職人さんに頼んだ。実際に形状をしってる僕だから簡単にできたわけだ。最初からあつあつってがポイントだった。後は皆に基準を作ってもらうだけだ。いやこれまずいわ。僕が主導しないと前世のデータが使いにくい。


「皆さんー、水が沸騰するときを100として、塩水で凍るときを0にします」


「何故塩水?」


「水は氷る瞬間って固体になるとややこしい。塩水なら凍るってのがちょっと水より液体時間が長い」


「何故急に変更を?」


「10か100にしたい。倭国以外も手の指から数字って10が基準になってると思う。まあ大きく取りたいから100にした」


 御免皆、僕が面倒だからが答えだ。早速温度を計測しだした。後温度計の精度もいろいろとちぇくしてもらった、できたばかりで怪しいのと、毛細じゃないので…。どう見てもふっといよな。これはまじで分からん。細いの自体は簡単に作れる。ただ僕の記憶では、中は細くて外は太いんだ。上からガラスでも巻くのかな…。まあこれは細いと使いにくいので工夫するだろ。圧倒的にあっちの方が精密だからな。


「皆に話しておきたいけど、僕は温暖化や寒冷化を知っている。経験があると言う意味じゃない。だから分かりやすく気温が年々下がってくるなんて思わないでほしい。5年ぐらいまとめて前の5年と比べれば確実にわかる。時期が大体わかってるから兆しが見えたらいろいろ準備したいから頑張って続けてほしい」


 ああ、焦っていたからやってしまった。僕の知識を使ってしまった。僕が目指してるのはパラダイムの土台になるようなものだと思う。パラダイムシフトが有名なのだが、科学者集団には良く分からない曖昧な共通の何か?がある。これを一般社会で言うならほぼ常識だろう。ただ科学はそんな生ぬるいものじゃない。だから難しいんだ。


 でもこれは悪い事ばかりじゃない。特に初期の科学集団にはとても大切だ。ある意味初期の科学は科学らしくない。なんとも禅問答みたいだが、思い込みが激しいんだ。だがそれこそが科学を前進させる原動力だったのは間違いない。デカルトなんてその典型だろう。


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