81
「花香様徳丸様から便りが来ました」
「読むよ」
森林の部隊を拡大してほしいそうだ。中華が制御できるようになったら共同で騎馬民族をなんとかしてほしいそうだ。当初放置する考えだったが管理する方が良いかもしれないとなった。武装を取り上げてもめごとを裁く立場におさまる、後はどうやっても飢えと切り離せないので、救済の仕組みを作るそうだ。
ただしこっちから食料は出さない。騎馬民族の中で互助組織を作る形にする。足りない分は、遊牧以外の仕事をしてもらうしかないと。おそらく資源など探せばあるだろう。草原地域全体で苦しくなった集団を助ける形になる。これが奪う流れになってたからここから争いが絶えなかった。
ただ何故助けなきゃいけないんだ?と絶対になるから武装を取り上げる時に戦争にはなるだろうと。支配はしない。もめごとの管理だけ。機能し始めたら現地の人間にやらせて監視だけして撤退する。武力制圧はいつでもできるようにしておく。不可能に見えるが、徳丸様の見立てでは多分上手くいくらしい。
いずれやってくる軍事の変化で騎馬民族の優位性が無いから多分上手く行く。
ただ、中華の制御が先に来るので、こっちはそれまでは抑えめにやらないといけない。だから森林からは基本出ない。今までのやり方から、森にずっと暮らす集団を作って、後は精鋭部隊にまだ日本の部隊がいると思う。最新の武器を満州人に持たせたくないからだ。ただこれは今まで通り少数精鋭でいく。
その下に満州での治安維持部隊をこちらにも回す。そして最後に監視を目的とした民族的集団を山脈に配置する。この構造で良いかと。ただ、多分生活が苦しいので、半分軍人的な立場として、満州国からいくらか出さないといけないと思う。今まで2部組織だったのものを拡大して、間に現地の専門軍人を拡充する形だ。
理想としては山脈西側に農業ができる拠点を作りたいのだが、良い場所がないだろうか…。まあこれは将来的なものにしよう。
西側はかなり高い位置まで草原が広がっていて、特に徳丸様がハイラル川と呼ぶ河は山脈の奥地まで食い込んでいる。ここを突破されそうなので、草原地域のぎりぎりまで今回の増員で警戒区域とする。それにしても徳丸様は奇妙な事を言う、ハイラルと言うのは誰にも通じないかもしれないから、現地の言葉で話すようにと。
じゃ徳丸様は何故ハイラルと呼ぶのか?と言ってもいつもの事なので気にしないのだが。そもそも満州ってのが現地の誰にも通じないのだから。草原に木々がぽつりぽつりと増えていく感じで、境目がイマイチはっきりしない。西側はすべてこんなものだ。おそらく雨量のせいだろうな。これでは森とは言えない。
以前から調べてはいたが、本格的調査になったら西側はほぼ警戒地域に出来ない。と言うか戦闘待ったなしの危険地域だ。戦いが無いわけじゃない。何度も侵入されてる。だが東側は全く風景が違う。ちゃんと山脈の森なのだ。西側は高原と呼んだ方が良いだろう。東に近づけば木々はあるが森とは言えない。
これでは拠点は無理だな…。
公孫氏について分かってきたが、独立政権ってのはちょっと違うかもしれない。まだ十分漢の支配領域で、あくまで地元の有力者にすぎない。漢からの援軍が鈍いのは単に漢が混乱してるからに過ぎない。これはちょっと不味いな…。黄巾党に頑張ってもらえれば多分なんとかなるのだろうが。
半島の支配領域とはちと違うようだ。黄巾党と違って微妙な土地なんだろうな。多分漢朝廷では問題になってるんだろうな…。
おや、手紙に続きがあった。なるほどそういう事か。まだ余裕があるな。追い払った騎馬民族によって草原での圧力が高まった。ここまでは考えていたが、草原内で戦うのじゃなくて中華に向かったか。それで漢軍の反応が鈍かったのか。やはり草原重視の方針はそのままで良いな。
ただどうも公孫氏は独立勢力とは言えないので、漢軍に対して多少厚く守った方が良いな。徳丸様に情報を送って黄巾党にも共有しておかないとな。いずれは秦崩壊後のような群雄割拠になるだろう。それまでは強い権力を持った地方領主は居ないって伝えておかないと。ある程度こっちで引き受けた方が良いな。
中華の親日政権を拡大させるということは、親満朝を広げる事になるからな。
「今回は以前話した2つの無線通信についてだけど、この違いが重要になる。すでに火花通信が海を渡った。だがこれはいずれ廃れると私は思ってる。簡単な仕組みなのと機械も安価にできるのでそのまま進めていくつもり。だが将来はこれ変えていく予定。何故か?それがもう1つの方法になる」
「どこに違いがあるか?と言うと、火花通信はパンって電磁波の玉を打ち出す感じ。これを信号として言語化してとらえていく方式だけど。もう1つは全く違う。電磁波そのものを送信受信で同調させる。どうして火花じゃダメか?これで分かる?」
「連続した何かを送れる?」
「そそ、良く分かったね。私は答えが分かってるから分かるけど、電磁波送ってどうするんだ?ってなるからね。火花は無理やり信号化してるだけで電磁波の中身には意味がないからね。その装置を作るのに真空管が必要になる。真空管はもう1つ送信受信でとても重要な役割がある。電気信号の増幅機能があるから。微弱な分かりにくい電波を増幅させて分かりやすくできる」
「そもそも何故火花をこれほど発達させたか?と言うとここの問題がある。シンプルな装置なのにはっきりとした信号を送りやすいからね。次世代通信はだからかなり発達させないと交換はしないよ。火花通信限界があるが、運用って意味でとにかく容易だからね。しかもアンテナシステムはそのまま流用できるからね」
発展段階や、領地の政治的問題が片付くにつれ将来的にだが無線有線の通信網を段階的に広げる事にした。今までなんとなくやり取りしていた情報を情報部のようなものを設置して積極的に集める事にした。今まで通りの情報網に加えて、積極的に情報を優先した部員を各地に派遣するつもりだ。忍者とかスパイっぽいかな。
機械ありきなんだけど、ただ花香から来た手紙を見てああやっちまったと思ったからもある。公孫氏って遼東に根差した勢力だけど、独立支配者になったのは黄巾の乱以降だったかな…。うーん、楽浪郡はかなり早くから漢支配が怪しくなるんだけど、遼東はかなり後だな。偶然こっちが追い出したせいで騎馬民族の中国への圧力が高まったため上手く行っただけの結果論だった。
すべての時系列完ぺきに把握してるなんて無いからな…。やはり情報の精査は重要だ。公孫氏が実際いたからややこしくなった。間違いを前提にするとそういえば公孫氏って太守就任で他の豪族に軽視されていたというのがあったな。元から有力者だったらありえない話だ。やり取りしたのがたまたま公孫氏だったってだけにすぎない。
もう今は関係ないが、半島での停戦交渉って多分嘘だろうな…。あれ漢軍が来てくれないからはったりかましたな…。今回は意図的に黄巾党のために圧力をかけるため不可侵結んでないからやり取りしてないからな。遼東公孫氏じゃなくて、倒した部隊もろ地方配置の漢軍だろうな。
光に速度があるのは天体観測から分かっていた。だがその速度は厳密には測定されてなかったため、光の速度の測定を行った。歯車を使った初期の測定方法を行った。これによって光の速度が決定された。これからも追試をどんどん行ってほしい。これによって、マクスウェル方程式から様々な過程を経て電磁波の速度が出されると一致するのが理解される。
これで光が電磁波の一種であるのが想定できる。あくまで理論上はだが、ただし、すでにヘルツが発見した電磁波を利用した無線ができるため実証的な裏付けもある。ただし、実際測定したわけじゃないので、その方法も確立すべきだろう。検証を疎かにしては科学ではない。
「光は波でもあるんだけど、なら海の波みたいに水が空間には満たされてるのか?これ結論から言うと無い」
「じゃ何故伝わるのですか?」
「うーん、波じゃない面があるからってのがある。これはいずれいろいろと調査してほしい。すでに光の粒子性は言われてると思う。まずはいずれで良いから急いでないからじっくりと光を伝える媒質が無いのを実験で証明してほしい」
顕微鏡の発達により細胞の存在が明らかになった。続いて染色体や細胞分裂、化学的な核酸の分離、そして染色体が色で染められた。まあ順番があれだが、仕方がない。私が勝手に染色体と呼んでいる。後々染まった後染色体と命名してもらった。X線回折を熱心に進めたのは、いずれDNAの発見に結晶構造が重要になるから。
電子顕微鏡そろそろ必要だよな。ついでに細胞分裂も見つかった。これすごいな。顕微鏡で長時間細胞生きてるのか…。工夫したのかな。うーん、なるほど確かに起点となるものや重要な道具は私が作ってるが、そんな細かい工夫教えてないわ。いや短時間なのか、生きてるのかもしれないが。今度そういったものもまとめてもらおう。
顕微鏡で観察するのにどう細胞を生かすか?こういうのをまとめて後進に伝えなくてはいけない。工夫してないなら、工夫の余地があるか?も研究してほしい。うーん、電子顕微鏡原理だけ話しておいてすげーやりたい人だけやらせよう…。走査型に比べて透過は案外光学と似てるから分かると思う。
いろいろ電気的道具がまだまだそろってないから原理だけにとどめておこう。




