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「今回はベンゼン環について話します。以前話しましたが、じゃ何故こういう構造なの?って疑問になるでしょ。ベンゼンの結合には癖があります。その癖からこの構造が予測できるわけです。ただし、この予測かなり飛躍ですけどね。そこで皆さんには、このベンゼンの結合の癖を探ってもらおうと思います。正直済まないと思うのですが、有機化学って基礎研究みたいのかなりおそろかになってるでしょ」
「いつも何かしら合成ばかりしてる気がします。ある程度デザインするこつみたいのをつかんでると思いますが、それでもそろそろそのための根幹部分も鍛えた方が良いです。科学と単純な意味での技術が違うのは、何故それが実現できるのか?の理屈を与える点にあります。そのため、それを把握してさらに異なった技術に導くことも多々ありうるのです」
「正直、科学知識が発達してない段階のなんとなく出来てる技術を後で理屈が分かったからって科学技術と呼びたくないんですね。私が科学を重視するのはここにあります。将来科学者の中からしか本物の技術者は居なくなるでしょう。その時から職人ではなくて、真の意味で技術者が誕生すると思います。職人時代じゃなくて科学知識を応用する技術者の時代になると見ています」
「癖なんとなく分かってますか?」
「1置換体は1種類なのに2置換体だと3種の性質の違うものができるものですか?」
「うんそう知ってたんだ。」
「置換基にもよるのですが、水溶性の違いや沸点の違いなどがあります。それによってなんとなくですが、3つのタイプがあると考えられています」
「んがーまさにそれを調べてほしかったんだよ。知ってたのか…」
構造に違いがあるので、x線で大体わかるのだが、まだ彼らに早いからな。定性分析でこんなにも早く調査してしまうとはレベル上がってるな。これ置換基によっては分離が難しいので、X線の方が確実なんだよな。歴史的には後ちょっとしたらX線の研究から、構造分析ができるようになるのだが。X線って簡単なんだよな。でも危険なので迷ってる。そのうちやらないとそろそろ不味いな。
「じゃその研究は良いや。大事なのは発想なんだよ。前も話したと思うけど、こう考えるとうまく説明できる。こういう発想って科学においてものすごく重要だから。当然間違ってるのを生みやすい。だからこそ検証こそが決定的なカギになる。発想自体は、どこにでもある発想だよ。科学だけに特別なものじゃない。神様なんて大半これだ。神様が背景にいるとして自然現象を説明する根本って皆これだ」
「ベンゼン環が正しい検証とは?」
「うーん、これまとう。大体原子論も矛盾点が見つからないから放置されてる。いずれ検証はできる。だが今その技術が無い。ただ検証が難しいのも多いね。傍証って考え方もあるから覚えておいて。例えば、似た絵があるとして、別の人が書いたんだけど、この二人接点があるとする。でね、師弟関係だったのでは?と考えられる」
「ただ真似しただけの可能性もありますよね?」
「そうだね、傍証ってのは複数用意することに価値があるよ。様々な点から証拠が出るってのが重要かな。帰納法や演繹法は話したと思うけど、こういう発想法ってアブダクションって言う。こういう科学の基礎となる論理性についても覚えておいて」
千歯こきがあるためあまり力を入れてなかったが、足踏み脱穀機を作る事にする。これは仕組みが動力化につながるからだ。これなら何故機械化すべきなのか?の理屈がすぐ分かる。機織りなどと同じ理屈だ。
写真が驚くほど進んだ。まず最初に感光物質による、ピンボールショットの日航写真見たいのが発明された。その後、ゼラチン質物質によるフィルム的なものに焼き付けるネガポジ方式に代わる。最初に銀化合物の感光性についてしっかり話しておいたので、これでどんどん進んだようだ。後は基礎的知識だけ教えて職人たちに任せよう。
形的にはこれは大きな成果だ。まあ私のヒントによる強制力が大きいが。これが自分たちで進められるようになったら科学無しでは進まない技術社会が完成する。裏技の私の存在が知られてないので、すでに実現はしている。後は自力で進むのを待つだけだ。木版画になるのかな?と思っていたら、エッチングが進んでなんとか漫画による文字教育が進んだ。
後は配布するだけだ。ただとても大変なので、これ原画が進まないだろうな…。する方は金属になった分丈夫になったので枚数いけるが、問題は新作は簡単にできないだろうな。でも多分問題ないな。娯楽じゃないんだ次々新作が無くてもいいだろう。
印刷技術も進んだ。うーんこれエッチングの応用だな。重クロム卵白溶液だけ話したので、これでなんとかなった。これ細かい部分覚えてないんだよな…。この感光液をフィルムを使って焼き付ける。その後この液がエッチング処理してくれる。後は凸凹におうじて腐食を変える。これはもう全部やってくれた。実質この溶液しか話してない。
これはほぼ写真班とエッチング職人班との合作じゃないか?まあこれ写真が進まないとできるわけがないね。ただこれ体に悪いので、いずれは別の物質を探すように入ってある。クロムって場合によって健康被害があるんだよな。有名どころで6価クロムなんて有名かと、あれ垂れ流すと魚が浮くんだっけ。人間に害がないわけがない。
これほんと詳しいの知らないんだよな。だから化学班の話を聞いたら、感光と酸としての不食を同時にするみたいなちょー便利溶液。ああうーん、これうろ覚えだったけど役に立って良かった。これこそが多分キーだ。将来的には漫画書く人と印刷する人分離できるな。これはありがたい。この技術が確立されたら、エッチングで漫画書いてる人、そのまま漫画家にしちゃお、物語は大体私が書いたし、原作は別に当てればいいし。
つかー私働きすぎじゃないか…。童話みたいのだけど、この原作者もやってる。我ながら巨人すぎる…。まあ考えてるわけじゃなくて、ただの童話知識なんだけどね。ただ、時代国に合うようにジャパナイズはしてるけどね。
「今回話したいのは、科学者って言葉についてだ。科学者を科学者たらしめてるのは、職業意識だと思う」
「ええ?」
「いやいや大事だよ。仕事であるから多くの人が片手間ではなく参加するんだよ。以前から話してるように本来は科学者は世界の理の探求者だ。哲学者であったり、やや宗教家っぽいような人や、ど素人の趣味であるべきなんだ。根幹は常にそうだと私は話してる。民のためとか、多くの人ためと¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥¥か言ってもよく分からないでしょ。まして私のような一部の金持ちや権力者の意向とかもだ」
「そうではないんだよ。仕事として確立させるんだよね。それが軍人と繋がる力や、商売と繋がる富と繋がってくる。ただこの両者をつなぐものは職業従事者なんだよな。あくまで差配してる私がこの2つを分けてるだけで、個々の科学者は職業として1つの枠で考えればいいよ。それだけに私が職業として確立させるのが大事になるね」
「常に話してるのはそれになる。君たちにとっては大事かな。これから後進を育てていく最初の科学者であるのだから、ある程度私と似た視点はいる。そして後進のモノを科学者って職業を担うものにしていってくれたまえ」
「結局数だって話ですね」
「うんそう、数を支えるには職業として確立させることなんだと思う。化学系の会社とかだとすぐに職業につながるけど、だから根幹の基礎科学って扱いが難しいんだよね。商人じゃやれない事。国がとりあえずはやるしかないね」
すぐに手を打った。初等教育でそれなりに見込みのあるものをどんどん科学教育の方に進学させる。次に今までなんとなくやっていた研究のチーム分けを分野できちんと分けた。ただし、教育の方は科学の初期教育はなるべく広く浅く受けさせている。教える方も特に専門で教えない。
物理とか、化学とか、今まで全くやってなかったのも信じられないって程でもない。なんというか順序の問題だと思う。ガリレオニュートン、あの頃が大きく科学に貢献してるけど、爆発的な科学の発展は19世紀付近になる。この発展のカギはどこにあったか?と言うと、ガリレオって特に何やってた人なの?あの時代もすごいんだけど、科学者って職業がまだ確立されてないんだよな。
専門分野と科学者とそれに伴う人海戦術こそが、19世紀の発展のカギだと見てる。次の段階に進まないといけないんだろうな。もちろんこれは考えていたが、中央集権後だと考えていたが、今富にかなり余裕がある。それゆえに前倒ししてしまおう。単純に人を増やすんじゃない。人を増やさないといけないようにしてしまう。
当然足りなくなるから、それらを下からどんどん専門分野に追加して補充していく。ただまだテスト段階のようなものなので、いつでも希望で移れるようにはしておく。そこまで今までの世代の弟子たちが分化してないんだ。




