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中々進まない石油化学に対して良い方法が無いか?と考えて話をすることにした。
「姫なんでいるんですかー、皆も止めてくれよー」
「嫁に酷い仕打ちです」
「公私混同はしないんですよ。いちおうここは基礎課程を終えた初期メンバーばかりなんですから。ちゃんと話せないと追い出しますよ?」
「何故ダメなのか知りたいじゃダメですか?」
「良いでしょう。確かにそれ皆に伝えてください。姫がダメだと思ったのは、皆ナフサクラッキング実験のメンバーですよね?」
「いいえ…」
「なんと、そういえばまだ専門分野分けてないんだった…、いやそれでいい。今やってるの基礎も基礎だから。研究が専門になるのと、知識の共有は別だね。ただ姫出来たら今後は控えてくださいね。根本的に知識量が全く違いますから。今回みたいに専門的なのもありますが、専門の根底にある共通のものとか、皆知ってる前提で来てる連中ですからね」
「そして何より数絞ってるんですよ…、後見込みがあるなら飛び級でここ呼んできてとは言ってあります。そうなると良いですね姫」
「はーい」
「今回は石油化学の最初のこつを話すことにします。まあ何より基礎材料がないと始まらないので、ナフサの様々な合成を優先しましたが、新しい有機化合物を作っていくにあたり、総当たりで全部やっていくのか?ならいずれはそうなるでしょうが、スタート時は違います。その違いは、例えばメタンCH4。これをねつなげてもっと長い分子を作ろうと考えます」
「何故そうするのか?と言うと私もそこはつまります。たくさんの分子が繋がった分子を高分子と言います。高分子を作ろうという方向を決めると石油化学は飛躍的に伸びます。行き詰るまではこれを念頭においてください」
「続いて、茄子からとれる成分に仮にトロパノンって物質があるとします。私はたまにこうやって謎の単語出てきますが、今回仮ににしたのはあまり意味がないので適当に変えてもいいですよって感じです。構造式はこんな感じです。」
「この構造式からアルデヒド、アミン、ケトンって単純な物質から合成可能だと見抜きます。実際できます。アルデヒドってもう分析出来てました?構造式はこんなかんじで、他も書いておきます。基本的な化合物ってのは有機化学にとって重要なので次々発見しておいてください」
「要するに時計の部品と同じ。歯車やテンプなどがあり、これらを組み合わせて形作っていく。これが有機化学にとって特に重要な点です。これが先ほどの高分子化合物につながっていきます」
「ナフサ合成で作れるようになったと思いますが、ベンゼンってのはこういう感じの構造です」
ベンゼン環を書いて見せた。
「これ今回の話の流れでピンとくることありますか?」
「あ2重結合の部分水素を結合できます?」
「他にもあるかもしれませんが、その通り、水素を2重結合を壊して添加できます。どうやってか?は知りません…。他にも水素自体を置換してアミノ基にすり替えるとかもできます。どうやっては?難しいですが、創りたいものの計画を立てやすく次々作りやすいのが有機化学の特徴です。膨大な量の化合物を作っていく事になるのでこれぐらい当たりまえだと思っておいた方が良いです」
「姫これ全く進んでないので、専門にするならこれ良いかもしれませんよ?後からって中々皆さんに追いつきにくいですから。まだ化合物が少ない今がチャンスです」
「徳丸様ひいきでーすー」
「良いの嫁だし天皇家だしー」
「はい勉強したいと思いますー」
「今回は医療班呼んでないけど、これ既存の微生物由来の薬を見て、これ添加したらもっと効き目ない?とか調べられる。ただその動物実験で試してね…。うちの船乗りはほぼならないけど、航海とかで新鮮な野菜とか果物が欠如するとなる病気がある。要するに栄養不足なんだけど。これに必要な栄養をまず分析する。次にそれを合成できないか?こんなふうな流れもできる。理論上はでんぷんぐらいなら作れるんじゃないかな?」
「じゃ農業は無くなるのですか?」
「いや全く…。多分その合成より育てた方が安くつかない?になる。この手の発想大事ね。実験室でいろいろ成功してるのにいつまでたっても工業製品にならないものって大概これ…。安く作れるように職人さんたち頑張ってくれてる。必要な栄養でも、パンとか米みたいな大量にいる栄養じゃないと、野菜果物から抽出するより創った方が逆に早い。薬もそう量いらない」
「薬をどんぶりいっぱい食べなくていいんだよ!」
姫の練習を兼ねて、ナイロン合成やってみる。今までベンゼンが無くて先送りにしてた。ベンゼン環の話はしてあるので、水素添加してもらう。パラジウム触媒を使ってもらう。えなんでその元素?となると、劇的なものじゃないともう元素の発見があってもスルーしてる。だってさ鉱石が珍しいからとかで見つからなかった元素も多いんだよ。私は手法の方を大事にするからね、ありふれたナトリウムの発見の方が大事だよ。
コバルト触媒を使って、シクロヘキサノールに空気中の酸素で酸化。後は硝酸による酸化でアジピン酸の完成だ。もう1つの材料ヘキサメチレンジアミンは、アジポアミドをまず作る。アジピン酸とアンモニアから水分子を取る反応で得られる。この後、さらに脱水してヘキサメチレンジアミンが出来上がる。
後は2つを混ぜればだが、この辺りいまいち知らないんだよな。要は開発者は高分子が作りたかった。これらはすべて部品なんだ。勝手にできるのか?
どろっとした液が固まった。勝手にできるんだな…。まあ後は砕いて熱してまたどろっとしたの作った後注射器みたいなもので押し出してみた。後は糸状になったのを巻き巻きしていく。
「世界初の化学繊維ですー」
「私が作ったんですか?」
「姫、そこはちょっと控えめに私達です…。ただこれ姫組作として、織物が出来たらヤマメとなずけましょう。姫の名前のヤマト姫を略したものです」
「着てみたいですー」
「化学の実験じゃダメですよ?これ酸に弱いのです…。あちょうどいいので姫組は今後、定量的な特徴と定性的な特徴調べておいてください」
ずっとこのために石油化学やってきたナイロンが完成した…。
どーせすぐ出来なくていいと潜水艦の研究をさせた。初期動力を人力にしようと自転車のようにと話したら話が通じなかった。ああ作ってなかった。人力の器械って結構忘れちゃうんだよね…。自転車の研究もはじめることにした。ただ自転車は早く作ってほしいな…。動力の駆動系の関係でチェーンってもうできてるんだよな。
スクリュー船が進まないのでアイデアを、軸の周りにぎりぎり触れない程度の輪を確か創るんだよな。後はゴムとかで補強すればいいかと。それぐらいのゴムはある。隙間あるじゃないですかーって怒られたが、騙されたと思ってやってみると権力者の鶴の一言じゃーー。実は私もこれ半信半疑…。正直言えば仕組みしかしらないので後は工夫してくれってのがある。
これを機にベアリングとかサスペンションとか、動力以外の部分の様々な見直しをした。船だろうが自動車だろうが、馬車だろうが、自転車だろうが統一した考えってのがあるのだから個々でやってた工夫を統括する部門を作ったんだ。いずれ使うだろうからトランスミッションの考えも教えておいた。駆動系って言うんだっけ?それらをまとめて考える人がいるなと。
後九州北半分の鉄道網の開設の準備。実用は後でも良いのでゆっくり進めておくように指示。