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やっとスタートした、科学者を育てていく機関だ。うんどう考えても今の時代でなんら問題ない。後はこれをもっと科学的な実験とかにしていけばいい。いきなり実験とかやりだすと何か時代錯誤になってしまう。多分この思考の根底が出来上がったら実験がすんありコアとなるのが分かるはずだ。
それまでも科学に近い思考はあった、だが実験が画期的な差をもたらした。だが私は実験が科学のコアだとは思ってない。あれは方法なんだ。実験は思考的土台じゃない。より厳密にち密に命題を確かめていく方法ってのになる。ただ逆に言えば具体的な方法論が無かったから科学は誕生しなかったともいえる。
大王家がかなり問題だ。戦国の朝廷への対応をちょっと真似た。これ今の時代だと不味いな。当時は朝廷が弱りに弱ってた。今は真逆。おそらくもらって当然の程度しかないかも。どうにかして中央に入り込まないと宗像氏は史実でも十分朝廷に認められてる。でも藤原とかああいった位置にはなれなかった。九州の勢力じゃ駄目なんだ。
何か決定的な貢献と影響力をもたらさないと。地道に近畿の勢力範囲を広げて無視できないようにするか。ただな元からいる勢力とどうしても争いになるだろうな。祭祀の部分で入り込めないんだよな。物部氏と似た位置だけど、物部氏って武力以外にも祭祀でも重要な役割を担ってた。
神としてはとても重要視されてるのだが、だからって近畿と全く関係が無い…。祭祀のメンバーにはまるで必要とされない。むしろ格下だが大王家と共に近畿に土着した勢力は祭祀のメンバーに入っている。天皇家の神のルーツが九州にあるため入り込もうとすれば多分入り込める。鉄砲作ってしまいたくなる…。圧倒的武力があれば多分メンバーになれる。
他の方法だと単純に大きな土地を収めて兵隊を数多く抱えるしかない。これだと天皇家と争いになってしまう可能性が有る。これはとてもまずい。その点物部氏の祭祀を行う重要メンバーにも入ってるのが上手い。ぎりぎりだが間に合ったという所かな。
祟神天皇が実在してたのじゃないか?と言われている。だが活動を見るとあまりに大規模な行動を起こしている。これはその前にすでに大王家はそれなりに力を持っていた証拠となる。問題は歴史書の通りの天皇が居たか?である。あれと似ている。夏らしい王朝はあったが、歴史書に書かれた夏王朝だったのか?は別の話。
この後の歴史で半島との戦いが活発になる。その時おそらくわが家は頼りにされる。ただ、中国に後々言われるのだが、唐と戦った日本人はすごく弱かったと伝えられてる。モンゴルに質問されて中国が答えるのだが、鎌倉時代の武士はすごく強くなってるから気を付けるようにアドバイスしてた。
適度にかかわるようにしないと、すげー強い半島の軍にけちょんけちょんにされる。ただ、日本がコテンパンにやられたのは唐なのだが、大化の改新、唐との戦い。この二つまでにかなりの主導的な地位に上っていないといけない。後者において秘策はある。
大王家が何者なのか?これは分からない。九州の人間だと言うのは分かる。祭祀がすべて九州系なんだ。これをわざわざ畿内のものが改宗ってのは考えにくい。神武東遷はあったか?ならあれはない。どの勢力もある程度武装集団が伴っていて、現地の勢力と争いになると言うのは歴史的にも多量に残っている。
大王家だけが特別にあった話じゃない。やたらと修飾しすぎだと見てる。祟神天皇から実在の可能性が指摘されてるが、事実2,3世紀ごろ畿内の影響が四方に出てくる。これは四道将軍派遣の記述と重なっている。こんな勢力が唐突に現れるわけがない。なおかつこれらの勢力の根幹が纏向にあったとして、それらが唐突に出現したものでないことは分かっている。
であるなら、修飾過多である点を除けば祟神天皇より前の先祖が九州から畿内入りしたと考えて良い。今後倭国内乱が起きる。かつ四道将軍派遣が始まる。この2つを乗り切らないといけない。九州は後進国になるのは必然なんだ。それが見えている人間は多分あまりいないだろう。
歴史を知ってるとは言え最大の難関が邪馬台国が分からない点だ。勝ち組につくのは当たり前だが、畿内説なら間違いなく大王家の姫だ。しかし九州説ならさっぱり分からない。意外と我が家だったりもする。特に問題が、僕主導で隣国を支配してしまった点だ。畿内説なら大きな影響はないが、九州説なら何が起こるか?予測不能だ。
「父上これを見てください」
創っておいたスコップとつるはしや猫車を見せた。ただし猫車はかなり性能が悪い。ベアリング周りやゴムタイヤがどうにもならないので、後鉄はあまり使ってない。
「これはなんだ」
「これはスコップと言い土をすくって移動するものです。穴を早く掘れます。次につるはしといってこれは堅い土に穴をあけて掘りやすくするものです。最後は一輪車と言い土を運ぶものです」
猫がこの時代いたのか?良く分からないのでこっちの言い方にした。
「これらを近畿のおじさんたちにも使ってもらって、そのまま大王に献上してほしいのです」
「良いのか?」
「僕も本当は嫌です。ですが、中枢に入り込むには相当なものじゃないと多分無理です。ただの鉄器の献上ではまだ弱いですね。大王家は大規模な土木作業を数多くしています。大王家の力が意外とあるのに困ったのですが、逆に言えば相手の欲しがるものがこれで分かります。有用性が理解できれば我が家の重要性が理解できると思います」
「十分に理解されてると思うのだが?」
「相手の想定内ってのがダメなんですよ。それは利用されるだけです。大王家はちょくちょく半島の人間を有用しています。これは未知の技術が欲しいからです。想定外だが価値は分かる。これが関係を築くのに望ましいかと。後爺様も交えてほしいのですが、いずれ大規模になってきますが、大王家の土木作業に墓の創設があります」
「こちらから伝わったものなのですが、人員の多さにまかせてアホみたいな規模になると見ています。この競争に爺様と父上は乗らないでほしいんですよ。墓を作るなって言ってるわけじゃないです。別の形に出来ないか?と考えています。これ将来誰もみむきもしませんよ。そんなものより未来永劫ああありがたいと思われるものを作ってそこに支柱となる墓を創れば、見守ってくれると感謝されると考えています」
「具体的には大規模な土木作業で、治水や海岸の港を整備してそこに墓を記念碑のように設置するのです」
「お前先祖伝来の墓を」
「いやいずれは、大王家におしつけられた墓になりますよ。確かに塚の墓は九州のモノですが、全く違ったものになって戻ってきます。そこにどんな先祖の栄光が…。気持ちは分かります、ですが隣国の亡国秦はこれも国家滅亡の要因だとされています。倭国とはけた違いの規模で作ってしまったんですよ。この賦役に使われた民衆が不満がたまったわけです」
「父上はそんなもので我が家を傾けたいのですか?って爺様への説得お願いします」
「俺がやるのか…」
爺様もやってきて
「馬を献上しましょう」
「あれか」
爺様が渋い顔をするのは、この時代馬は知ってても軍事の価値がいまいちわかってない。馬を大量に入れるのはもう少し後の時代になる。
「半島で重視されてると言えば多分乗ってきますよ。大王家は半島文化びいきですから」
僕も価値については分かっていた。ただだからこそなんだ。ここ最近の大王家への戦略は半島渡来系で固めてる。鉄器もそうなのだが鉄器はインパクトが薄い。本来渡来人が果たす役割を一部こっちが担えばいいのだ。それに価値についてはすぐ気が付く。イマイチ進展しなかった大王家接近戦略がちょっといい流れになるような気がしてきた。
倭国大乱はあっちこっちで起こったのは間違いない。問題は魏が認識していた邪馬台国がまとめた騒動に畿内も含まれるのか?である。我が家としてはどっちでも巻き込まれる重大事件だ。邪馬台国に集結する結末が違うだけで、機内でも同時期戦争が起こる。
献上が上手くいって土木事業に食い込めるようになって、かつ馬の馬産を行うための新たな支配地域が認められた。史実にあった高句麗の末裔の役割を取ってしまった形だ。これに関しては将来我が家で引き取ってもいい。一部蝦夷開拓に使ってもいいかと思う。
木工技術を扱う集団のレベルが上がってきため、いよいよ構造船の開発に移行しようと思う。竜骨を持ったバイキングが使用してた小型の構造船からスタートしようと思う。試行錯誤と言うほどじゃないが完成した。後はこれを巨大化して、機密障壁をつけていかないといけない。
唐ができる前にいろいろ中国から直接吸収したい。唐ができる前ならばらばらの国と上手く敵対勢力を利用して外交できるからだ。まずは小さな船を様々な用途に利用して、徐々に巨大化だ。何より綿をどうにかしないといけない。綿は今でもあるが、原材料となる綿花や種はインドに行くしかない。
遠距離用にコストはかかるが麻布に手をつけた。これで当面なんとかなるだろう。そもそも麻布が消えてしまうのは、綿の帆に樹脂をぬって強化した改良が原因らしい。だからそれまではどっちも使われている。いずれ綿布が作れるようになったら樹脂試してみよう。
そろそろ科学班は下の世代を増やしていくべきだ。その前に絶対やっておくべきことがある。
「今日集まってもらったらのは、とても重大な事を話すため。そろそろ君たちが新しい世代の教師になるころだと思う。基本は叩き込んだ。そして応用の最も大切な事を教える。まず話すことは、今日から恵みの知恵を科学と呼ぶから。科学にとってもっと奇妙で特徴的なのは今から話す実験になる」
僕は世界地図を広げた。
「これが海をすべて進むと存在する陸地だ。この小さな島が日本。君たちもこの周りは僕が教えたからもう知ってると思う。でね、実際はこれ平面に広がってるわけじゃない。丸い玉の上にこの地図が張り付いてる。船で海を進むのは、丸い玉の表面を進むことになる。科学はこの答えを知るための学問なんだ」
「今僕はこの答えをいきなり言ってしまってるが、それは恵みの書に蓄積された先祖の知恵なんだ。君たちもそうやって後の人のためにいろいろ答えを解き明かしてもらいたい。では本当に丸いのか?の答えを得るにはどうするか?それが実権なんだ。船で日本から出発してぐるっと回ってくればまた日本につく。これで答えが正しいことが分かる」
「実験の基礎はこれ、ただこれじゃ科学が特別な考え方にならない。ただ実験の基礎はこれ」
「確かに実際海を延々と進むのは難しいですが、考え方自体は分かります」
「でしょ?そんな特別な考えじゃない」
「例えば、燃えることの実験をするときに、屋外では風があったりする。こういうのを排除していく。できる限り無関係と思われるものを排除したある種の特殊状態を作り出してする実験。これが単純にとにかく実証するって実験と違うのが分かるでしょ?」
「すぐには思いつかないけど確かにそれは特殊な方法です」
「うんこれは実際もっといろいろ特殊にするから難しい」