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トラクターが出来上がった。まあこれ数作らないと労力低下にはならないが、どんどん増やして改良していけば良い。もうテスト段階は終わってる。使えるものからどんどん投入していって少量化していく。何代ぐらい増えれば顕著なものになっていくか楽しみだ。後佐渡の電気村で木工用の電動器具がいろいろ使えるようになった。あそこは造船所もあるので船が大量にできればいいな。
ビートの品種改良が進んだ。ローマでの交易でビートが手に入ったので、これを前の品種と掛け合わせたら糖度が上がった。ただ現代の品種にはほど遠いのでこれからも改良していく。これは科学班生物の大きな成果じゃないか?まあまだ実用段階ではないが、そろそろ家畜のえさとしてはもったいなくなるな。砂糖困ってないからこの程度だとまだ製糖に使うのは労力の無駄だな。
後は人力繊維機械たちに慣れたら自動機械を作り始めるか。自動化するときどうしても専門の人のアドバイスがいるからな。交易が儲かってるらしいので、船に力入れたい。帆は十分間に合う。だって人力でも高度な機械が出来たから。大航海時代そもそこれでやってたんだ。どのみち船自体に時間がかかる。
その頃良彦は笑いが止まらなかった。
おいおい、なんだこれ急に上手く行きだしたぞ。こんな無茶なと思ってたが全く外を取り仕切ってるこっちの事情はばれてない。アフリカ組とも組んで、世界中の品が互いに手に入る。船乗りは儲かる仕事になったのでどんどん増やしてる。これはいけるかもしれない。しかも徳丸様がアメリカに回してくれた捕虜たちが食料生産を上げている。後は原住民を取り込むことだな。
これは積極的に暴動を起こすべきだな。十分に戦える。勧誘を皮切りに、農業を通じて北部にアイルランドも本島も入り込む。それによってじわじわと本島のケルト部族に関わっていく。アイルランドはローマに直接は影響を受けてないため、じわじわといく事にする。こういう所は各個撃破でなんとかなる。こちらはまずローマを追い出さないと。
「VSローマで皆がまとまらないといけない。そういって俺はそれぞれの部族ケルトの国に働き掛けてる」
地元の勧誘者である部下が部族長とやり取りをしてる。国はまずは大変なので、国家から独立してる小さな集団をまとめている。
「この人はケルト人じゃないが、ローマ人よりはケルトよりだ。まずは話を聞いてほしい」
「紹介があったが良彦と言うものだ」
もうここは長い通訳なしで多数派のケルト語なら話せる。ピクトが際どいかな。ケルト系と言っても多少対話困難なものもある。
「自分自身も様々なところを航海する上で見てきていろいろ知ってるのだが、自分にも上の人が居てこの人は本当に何でも知ってるようにいろんな地域の事を知っている。ローマは今が最盛期でここから落ちていくそうだ。その原因が世界中での寒冷化だ。これは世界中見てきた自分が言うのだから間違いない。すべての地域で寒くなっている」
「次にそれに伴った民族の大移動だ。これは移動なんて可愛いものじゃない。大量に沸いた虫が食料を求めて被害を広げていくようなものだ。ローマはこれで落ち目になっていく。ただすぐ崩壊はしないだが考えてみてくれ。西の端がここなんだ。どんな国でも端は中央の部隊が分散してしまう。別のところで守るべきところが出来たらどんどん小さく中央に寄っていくものだ」
「だが自体はローマの衰退だけにとどまらない。新たに東からくる民族がここにもいずれやってくる。まずローマに対抗するためにケルト部族をまとめ上げる。次にローマの支配が消えたら、害虫どもの襲来に備える。だがこれには重大な欠陥がある。何だと思う?」
「それなんだ?」
「周りはローマばかりだ、たとえ新しい民族が来ても結局はここでは孤立してしまう。そこでだ海を使って自分たちが外とローマの代わりにつないでも良いと思ってる。どうだ?」
「だがローマは強い」
「ああもちろん分かってる。あんたらに戦えとは思ってない。戦うのは別のやつだ。この南のケルト部族はローマに従属している。彼らが自分たちの仲間が暴動を起こすのを秘密裏に聞いてきた。何故教えてくれたと思う?」
「何故だ?」
「協力するからと言ったんだ。自分たちは協力するつもりだ。あんたらも面と向かってローマと戦うのは無理でも協力はできるだろ?」
「そうだな他の北部連中がそうするならしても良い」
「ああそうだな誰かが裏切って弱ったところを食い殺されたんじゃかなわないよな。よしそのまとめるのを自分たちがやろう。これで良いのか?」
「ああそれが出来るならその案に乗ろう」
次に紛争予定地域に進む、決行日の確認。それまでに火器部隊を移動させる。この作戦は素晴らしい。大半の部隊はただの地元のケルト系住人だ。そして、そこに自分たちが精鋭として参加する。たとえ全体が負けても多分撤退できる。そして後に残った連中は何が起きたかさっぱり分からない。雷のような魔法を使うとでも言っておけばいいだろう。
そして潤沢な質の良い武器を多くの人間に行き渡らせる。後騎兵も用意しようかな。ケルトの住人の協力が得られたので馬が使える。足りなければダチョウ部隊でも良い。徳丸様がこれで騎兵突撃隊を創れともらったものだ。騎兵は基本飛び道具。短弓による弓騎兵、そして少数の精鋭による薙刀のようなものを使う近接騎兵だ。体が大きく武器の扱いにたけたものをそろえてある。
本来騎兵は移動に使うらしい。だがこの部隊なら一切止まらず戦うことが可能。相手も騎兵を出して来たら、対騎兵武器の刀を使う。馬を狙って駆け抜けるときに切りつける。騎手を切ってもいい。
歩兵や火器による前衛の崩壊を行ってから、槍の集団をぶつける。こうすればローマの練度の高い槍部隊相手でも、こちらの槍部隊が戦える。ケルト民族との大体のこの辺りの戦いは分かった。ローマはその上を行く部隊だと思えばいい。ただケルトの部隊はローマ程集団戦闘にたけてない。だがそここそがねらい目だ。火器はその手の集団を破壊するにはもっとも効果がある。
「首謀者はあなたかな?」
「おおあんたが協力してくれるって北部の連中か」
「ああ、ただなちょいと魔法みたいなものを使う。これに驚かないでくれ。雷みたいな音が鳴るので、ただ破壊力は期待してほしい。ローマの規律正しい軍隊の塊を見事粉砕してやるから」
暴動が起きて、最初は駐屯の部隊には善戦していたが、すぐに南部から制圧部隊が派遣されてくる。ただ連中はすぐに攻めてこない。集団の塊を作るのを待ってる。これは火器を持ってると間抜けに見えるが、乱戦を得意とする蛮族相手にはものすごく効果的だ。連中は訓練されている。相手がいよいよせめてこようとしたとき、すかさず鉄砲をうって、大砲を前線より奥に叩き込む。
すぐに後方の槍部隊が突入していく。こうなったらもう相手の得意の戦い方はできない。むしろこっちの味方が得意な戦いになる。元々この連中個々の戦士は強いんだ。ローマでもてこづっていたのを聞いてる。もちろん連中が話すので話半分だが、意外と嘘を言ってないと思う。問題はそれを突き崩す訓練された集団の防御と突破力なんだ。
こっちの得意な個々の乱戦に自分たちが形を変えてしまったんだ。さてまだ問題はある。防御した騎兵だ。だが馬までは全身防御じゃないのと、その防御を突き破る拳銃部隊の突入だ。本当は歩兵に使うつもりだったが、あの重曹騎兵はちょっと刀だけじゃ難しい。ただ使えないことはない。混乱に誘い込めばいい。
防御が役に立たない?と一瞬でも思わせればいいんだ。そのひるんだ時に弓騎兵を叩きこむ。
さて戦闘開始だ。やはり何が起きかわかってないが、重装備の騎兵が拳銃突撃部隊の攻撃に落馬していく。すぐに弓騎兵と交代で、馬を矢でハリネズミにしていく。最後に残った混乱した騎兵集団を装備をしっかりした刀部隊と薙刀部隊でたたき切る。騎兵はとても心配だった。元々騎兵部隊もやってたが、あの時相手に騎兵は居なかった。初めて騎兵対騎兵の戦闘で通用した。
しかも拳銃突撃部隊って徳丸様のいきなりの新部隊だぞ…。しかしこれすごく良いじゃないか。間隔の長い火縄銃じゃ絶対無理だし、狙いをつけて長距離から打つようなものでもない。何故初めて運用するものがここまで最適なんだ…。あの人は本当に何者なんだ。これ面白いな。十分に距離上れば、位置をどんどん移動する狙撃騎兵も使えないことはない。一発必中なので間隔も問題ないし。
よし、ためしに後ろに置いてた狙撃兵騎兵として使ってみるか。止まって打てばいいと伝えておかないと。突撃部隊とは違う。相手の騎兵を壊したので狙い放題だぞ。指揮官殺ししよう。自分も後方からやるか、徳丸様が向こうの戦闘で試してみたと言ってたし。
あはは、狙い通りだ。騎兵が居ないから、特殊狙撃騎兵に全く相手は間に合わない。相手が来たらもう移動してる。そして自分はまさに魔法の一撃だ。とんでもない距離で撃ち殺してしまう。ああこれ初めての戦闘だ。こりゃとんでもない兵器だな。徳丸様が大事にしてるのは分かったが、さらにこれを送ってきたのに驚きを覚える。
これが最先端の武器の威力か…。
思い切り舐め切ってたのが分かるローマが負けた…。この後どうなるんだろう。展開が分からない。うーんまだ不安だな。ここは引き気味に話すか。
「この後大部隊を呼んでくるかもしれない。さすがに自分たちはこれ以上は苦しい。何か要求を通して、和睦できないか?これ以上の協力は怖い」
「ローマはこの後衰退するんだよな?」
「ああ今は最盛期だ」
「分かった和睦を結ぼう。協力感謝する」
力を見せつけて、なんとか引くことができた。ローマが要求を素直に飲んで折れてくれたのが信じられないが、こっちの存在はばれなかったようだ。ただ今まで魔法なんて使ってないよな?魔法って言い切るの無理が無い?通常なら絶対ここでせめるよな。ああよかった。北部の連中なら抑えられなかった。元々従属した連中なので独立までは行きたくても抑えられるようだ。
うん、自分たちの協力なしじゃ無理って分かるからな。分かってても突き進んでしまうんだ。北部ならローマをなめるからな。こっちの連中はさすが分かってる。こいつら利用できるな。いや次はない。次にやるときは独立させる。そして北部連合をもっと前にだして、ケルト連合として全面対決する。
キーは、今回勝ったことで北部にも信用してもらえること。次に延々と防衛戦をやる体力をつける。兵站も兵士もやっぱ足りん。防衛戦が膠着になったら、いよいよ、南部への侵攻の計画になる。問題は2つ南部自体の兵力どれぐらいいる?次にイギリス以外のローマ兵は来るの?
ローマの支配が完全に切れたら絶対勝てる。船での海上戦なら絶対負けん。あそうだ、南部の部隊が分かったら海上封鎖してしまえばいいんだ。なんだ簡単じゃないか。
「今回は力足らずだったが、次回があるなら独立しよう。そこで相談だが、南部のローマ兵ってどれぐらいいる?」
「細かいことは知らんが、伝承だが、昔の戦いは4万ほどローマ軍が来たようだ。だがそれをずっと置いてるわけがない。そこからどれぐらい引かれるのか?だろうな」
「1~2万ぐらいならこっちが5000あれば勝てる。今回の規模がそれぐらいの差だったから。北部の連中に話をつけてこよう。実は秘策がある。自分たちの最大戦力は船なんだよ。だから海上封鎖してしまえば、ローマはこれ以上増援が無い。すぐに取り掛かる準備が出来たらまた一緒に組もう」
「ああ今回あんたらは本当に強かった。でもなんで俺たちにそうも協力してくれるんだ?」
「うちの総大将が大きい国が嫌いなんだよ。大将や俺たちって小さな島国出身だからな」
「ああ似てるな」
「そういうこった。後自分たちももうこの島の住人だし、仲間もケルト系だらけだ。いつかは同じ島の住人として認めてほしい」
「ああローマが去ったらな」
その後の事は、反乱は多大な犠牲を払いながらも鎮圧した。住民は懐柔して治安維持を図った。なるほど…、ローマは負けてないんだ。うんなるほど、あの時点で引く方がありえないからできるシナリオだ。うん自分たちの部隊のおかげだからな。ローマもあれがなんだったのか?わけわからんだろう。調べられても痛くもかゆくもない。だって味方の誰もがドルイドの魔法だと思ってるんだから。