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ただ、これで終わりではない、この後押し返した後にさらに広げて海岸部の北部のかなりの部分を支配地域にするつもりだ。地図から言うと南西の半島まで取ったほうが良いのだが、ローマがそれだと欧州でつぶれてしまうのと、貴族連中や子孫にいずれ独立されるぞ?と徳丸様に言われている。
ローマは強固な帝国だったが、それでも結局限界が来たのは奴隷制によるところが大きいらしい。領地を拡大してその土地に住んでるものを奴隷化する。この繰り返しでローマが搾取する労働量を補っている。だが戦争と占領と奴隷は土地の拡大が止まったら終わってしまう。
だが言語の違う異民族だらけの土地で、土地を広げるにはこれは合理的らしい。徳丸様が言うには元は言語は同じ民だったらしい。日本の地方における方言で、中華はこれを音を方言のまま、言語を漢字で統一したため言語の違う異民族になってないだけらしい。
イギリスと言う確固たる基盤がありながらこれ以上広げると内部分裂の危険性を増すだけだとみているようだ。もしイギリスと言う島を持ってないなら悪くないのだがと知らせがあった。持ってるから逆にダメ?これが気味が悪くて聞いたことがある。
それによると、島なのがかなりまずいらしい。イギリスと新しく占領した大陸で分裂する危険がかなり大きいと。なるほど大陸側がイギリスを頼れ?と言う事だな?と理解した。ローマの衰退についても元々は徳丸様の不思議な予言だ。これが無茶苦茶当たる。
徳丸様が言うにはたまにポカをしてるらしい。だが得体のしれない神の予言みたいのとは全く違う。とんでもなく当たるし具体的だ。100%じゃないのを徳丸様は気にしてるようだったが、そんなもの最初から期待してない。ローマを見てると分裂と言うのがピンと来ない。
その問題のため衰退と言う言葉が重要になる。ローマのやり方は今後欧州全土を統治する正しいやり方にならないというわけだ。
一見大きな国家は強大で強固に見える。だが徳丸様は中華でも否定的だが、地形、移動手段、連絡手段、人口、言語、これらの点から大きすぎる国家は分裂の危機にあると見てるようだ。ただそれらが成り立つために敵があれば別だとも話していた。
大国の地方同士が同盟と似た関係になるからだ。中華がうまくいかないのは、辺境での敵=異民族が中央に影響を及ぼさないからだ。国家同士の戦いならこれが違う。中央部を支配しようとするだろう。ローマはどうか?ならローマは拡大と奴隷の体制なのでうまくいくはず。
しかし今停滞に向かうだろうというのは、国家体制の問題じゃない、先ほどのように移動手段や連絡手段になる。これは日本の軍人にしか分からない。高速な連絡と移動手段がない。ローマはとても優れた街道整備をしたため他国と比べればとんでもない帝国を作り上げたが、その限界が今じゃないか?と徳丸様は見ている。
これが自分にはわかる。日本軍はもっと早い移動手段と連絡手段を持ってるからだ。
その端的なものとして今回の戦いがある。今回の戦い背景に皇帝と周りとの不和がある。これによって孤立化した皇帝と外部との意思疎通が阻害されている。様々な手段で相手の戦力集中を遅らせたが、その1つにこれもあるのだ。いくらなんでも上陸後から今まで準備が遅すぎる。
こちらの妨害で、混乱した現場が皇帝へ伝えて命令を出すまでに混乱をさらに大きくしてくれてるだろう。皇帝になる前は優秀な将軍だったらしい。だからこそ外に完全に任せられない。軍事を食い込みすぎてる。だがそれを求められてなった皇帝なので、完全に外に委任もできない。
最終的に北部の海岸部を取ってしまえばいい。ただもともと仲良くしていた海岸部の部族は敢えて侵略せずに組み込めばいいか。拡大時期にどれだけ有利な状況になっても南部には拡大しない。それを基本方針としていこう。分かりやすい基準として川が良いだろう。
これをあえて境界線にしない。ややこしい考えだが、徳丸様がこれを話していた。もしここを境界線にすると川を使った運航が妨げられるので発展しない。相手を経済的に弱体化するならここを境界線にするべきだが、交易相手にするなら逆にそれをしてはいけない。
それに対して、こちらは海岸部が広いため海を使った運航が豊富にできる。そのため川を使ったが必須とならない。後北部のイギリスの向かい側にある地域にも大きな川があり、主にこちらを使うことになるだろう。こちらはその上流まで食い込むべきだろう。
まあどちらにしろまずはイギリス対岸の土地でローマ軍を跳ね返さないといけない。
まず脅威に思われないといけない。ずっと日本軍の力を借りるわけにはいかないが、勘違いしてくれたら得なのと、後は得た土地でさらに軍事力を上げればいい。だから最初だけは圧倒的に勝利してこちらの被害を減らすべきだ。空爆の要請をした。
これによって、かなりの兵隊を殺せた。ただこれであきらめるとは思ってない。何故か?多分何が起きてるか?わかってないからだ。そもそもこれがイギリスの攻撃なのか?それさえもわかってないだろう。もし皇帝直属の軍なら撤退もあったかもしれない。
だが訳も分からずただ殺されただけでは撤退できない。いよいよ本格的な戦闘となるのだが、ここで問題がある。本格的な砦と、野戦陣地で防御体制を構築してるが、それを無視して回り込まれないか?ここがある。これについて最後には防衛拠点での戦いになる自信がある。
「良彦様、ローマが軍団を分けてきました」
「まあそうなるよな。これだけしっかり砦や城壁を作ってるなら無視して回り込んで弱点がないか?探すよな。だが今は無いんだよ。敢えて言うならカレーの港町だ。他にも町がある。だがカレーの町は大改造したが、他はローマの町だ。その住民を殺すのか?」
「そうですね」
「カレーは海辺なので包囲されないし、軍艦の援護がある。今はまだ弱点は無いんだ。ただそれでも今後のため後ろに回り込めないようにしてやるつもりだ」
そう徳丸様が話していたのだが、実際調べたらその通りだった。騎馬による戦闘をローマはあまり得意にしてない。馬がいないのか?なら日本軍と違って機械化されてない戦車なんだ。こちらは日本の協力、バルト海周辺の占領地で草原民族に近い地域は似た地域なので、馬が必要となる。
そのため草原民族ほど長けた騎手がいなくても馬具で補ったイギリス人による騎馬兵がいる。彼らと動力を使った乗り物による機動力の高い軍隊と、万が一大部隊から外れた小規模な部隊での破壊工作を防ぐための飛行機による索敵と電気通信による連絡網がある。
今は特に問題がないが、将来の領地防衛を考えた防衛網の実地訓練に今回の戦闘を使うつもりだ。部隊を分けずに浸透させるなら防衛拠点から追撃すればいい。防衛拠点を落とさないといけないように最終的には仕向けてやる。もう1つ航空偵察によって軍隊が使うローマの道はすべて把握してある。
これらを使って邪魔をするように防衛拠点は作ってある。大半が歩兵が基本の彼らではこれらを使わず進軍するのは難しいだろう。進軍が遅くなるからだ。ローマの強みは道を使った各所に分かれた部隊の連携にある。中華の万里の長城との決定的な違いはここだ。
分散した部隊は各個撃破で片づけた。これによって防衛拠点をつぶさないとイギリスを叩きのめす事が出来ないと理解できたようだ。ただすべてが火器中心の戦いは出来ないため、ここからは混成部隊と充実した火縄銃の攻撃になる。
しかし、この混成が馬鹿にならない。十分な量とは言えなくても大砲があると、壁に向かってくる前に待ち構えてる集団を弓矢より強力な兵器で叩きのめせる。後は兵糧が減りすぎないように相手の数が減ったら外に出て叩きのめす。
通常援軍のない籠城は愚策とされる。だが火器がそれなりにそろった軍隊とそれに対して、それらを持たざる軍隊では愚策とは言えない。よほどの戦力差がないならかなりの割合で兵を削れるので、兵糧が切れる前に城から出て決戦に持ち込める。
もしある場所だけ集中するなら、別の場所から援軍を送ればいい。相手の動きはすべて掴んでるんだ。そうなるとそれぞれの防衛拠点が援軍をしあうので、ローマの十八番である戦略をさらに上回った形で実現できる。ローマの上位互換だ。
そして最後は、ゲルマニアがおそらく動くはずだ。念のため警戒をしてるはずだろうが、実際動くとなるとさらに兵が必要になるだろう。何日か経過して、索敵によって更なる援軍が止まった。そしてゲルマニアとの戦闘が始まった事が報告された。
「さあこれからが本番だ」