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漠然とやられてもこまるので、酸灰に関して調べてもらうことにした。アルカリって日本語が無いからな。海藻の灰ってアラビア語なのでまあこれで良いか。アルカリって言いたい…。多分そのうち面倒になって異国語連発すると思う。化学ってこれがアラビア語から分かるように基礎は酸アルカリだと思う。アラビア科学数学から錬金術の流れだから。元はギリシャ哲学なんだけどね。
明らかにキリスト教が邪魔してるよな。科学って難しい、科学者たちの多くは神の世界の理解って情熱でやってたのでキリスト教が重要だったって考えもあるが、私は重要人物については怪しく思ってる。デカルトは隠れグノーシスっぽいし、ニュートンもかなり怪しい。あの二人の世界観がもろ科学を作り上げてるから。
後ギリシャ哲学だとちょっと微妙なんだよな。間違いなく重要だけど、なんというか微妙なのも多い。アリストテレスが天動説だったのが後に響いてるし。ギリシャ哲学って科学に近いが、微妙だと思うのはインド哲学にも近い部分あるし、中国の百家思想にも通じるものがある。やっぱ近代の科学ってちょっと特別。
アラビアの化学者たち何考えてるか?分からん…。ギリシャ哲学の保護者なんだけど、なんでだろ?イスラム教とは無関係すぎる。根底の情熱が微妙なんだよな。そういえば錬金術の起源ってギリシャ哲学にすでにあったようだ。キリスト教がこれを排除したため、それでアラビアで発達したのか。イスラムが排除しなかったのは謎。
理由は、アッバース朝が滅びた後衰退したらしいから。多分イスラムと関係ないって僕の見立ては間違ってはないと思うんだよな。1個人としてのカリフ趣味だよな…。アッバース朝の滅亡自体はモンゴルに一致する。でも衰退自体はもっと前。どう考えてもある一人のカリフの趣味の伝統がちょっと続いたって感じかな。
趣味じゃないとこういう文化の庇護者って呂不韋もやってる。あっという間に没落した呂不韋も呂氏春秋は今でも残ってるからな。意外と文化保護してた。ナポレオンも個人的趣味も加わって数学とか好きだったし、この場合情熱の根底が良く分からないわ。そこで歴史から学ぶとすると、まあまずは鉱物から探そう…。なんかぐちゃぐちゃこねくり回した感がある。
鉱物学からスタートして、それらを材料にこねくり回して化学物質作ってくれればいいわ。熱処理、蒸留とか酸塩基反応は教えてあるので。根底が案外僕と変わらん。未知を探る謎の探求以外あまり見えてこん。ただ一応錬金術なので金目指していたのかな…。鉱物関係扱ってる職人さんたちに頼むか…。それを科学班からも人を出して、いろいろ採掘も絡めて知識として残してもらおう。
簡単に作れるアルカリとして、石灰に水を加えた水酸化カルシウム溶液を作った。後は、酸は、とりあえず簡単に手に入る酢酸で。これで酸アルカリ反応を調べてもらう。問題は試薬だよな。この時代本来なら無い植物として朝顔がある。たまたま種持ってきたんだよな。んで増えてる。
「酸灰の実験したと思います。ここにあさがおって中国から持ってきた植物の花のしぼり汁があります。これに様々なものを加えていきます。その色の変化を記録しましょう」
石灰、酢酸を加えてみてみると、赤から緑に変化していきます。炭酸カリウムってあったかな?前使った気がするな。あれも加えてみる青色になった。
「これが酸灰って言われるものなんだよ。水が二つの性質の間になる。もっといろんな酸アルカリがあるんだけど、創るのはむつかしいだろうね…。こうやっていろんな化学物質を作ってほしいんだけど。本当に難しいね」
出来る限り僕が教えておこうと思って、硝石と硫黄を燃焼させたガスと水を反応させて硫酸を作った。歴史的には塩酸や硝酸より王水の方が先に出来ているが、イマイチ覚えてないのでこれは今後の皆に期待しよう。これで強酸、弱酸、弱アルカリ、強アルカリがそろった。これによってPHについての理解が進むと良いな。問題は塩酸の方が安全だからそれがいやだな。度とかいらないのでゴーグルみたいなもの作った方が良いな。
ミョウバンとか、塩化アンモニウムとか、自然にある化学実験に使えるものめいっぱい集めないとな。日本で一応手に入るけど、硝石とか銃のために作ったからな…。硝石鉱石として得るとくそめんどくさいんだよな。あれ下手に外国から手に入れるとばれる恐れあるから、チリの硝石にしようかな。肥料も含めて、ハーバーボッシュ法なんていつになるのか…。
いろいろ不味いな当初の予定では種を与えて日本独自の科学発展を促すつもりだった。ただ錬金術の時代がかなり重要。でもあの無駄な時間を費やさせるわけにはいかん。方向性を変えて自由な探求心ってのを軸にしたけど、それも限界があるな。いくつかは強引に僕が進めた方が良いな。そのさじ加減が本当に難しい。僕におんぶにだっこの科学にはしたくない。
恵みの書が科学を作っていく。プロテスタントとカトリックだな。僕が神父だろうな。
「元素の考え方を示したよね。多少雑だけど、炭が単一の元素なのは炭を燃やしたが気体が基本1種類しかないって点。ただこれ難しい。炭から出る特殊な気体を調べるのは簡単。炭の気体を石灰を水に浸したものの透明な上澄み液を集めて、そこにガラス管か何か?で通すんだよ。そうすると白濁液になる。ただその後どんどん気体を放出するとやがて透明になってくる」
「これは炭を燃やした特殊な気体が多量にあるからになる。少ないと透明化だけで終わってしまう。すなわち、大半はこの特殊な気体で満たされてると分かる」
「一部含まれる別の気体はどうなんでしょうか?」
「うんそれが最大の問題だね。問題は2つある。もともと自然に存在する気体ってがのあって、よほど厳密な操作をしないとこれが混じる。現段階ではこれを排除するのは不可能。理由は、炭を燃やすのにその気体がいるから。すべて遮断した空間ってのは現時点では作れない。脱線だけど、燃える気体は自然な空間にあるのか?ならそうなる」
「脱線だがついでに話すと、じゃ炭を閉じた空間で、例えばガラスの容器に入れて燃やすとどうなるか?燃やした後上からかぶせてもいい。厳密さは犠牲にして多少の隙間は問題ない。最初は燃えるけどやがて消えてしまう。これはどこにでもある自然な空間に燃える気体が含まれてるのを示唆してる。ただし1つの可能性だ。僕は答えを言ったけど、何度も言うが確認する事。本当にそうなのか?とね」
「科学は2つのケースがあって、1つは答えを見つけたと思ったらさらに奥にまた答えを必要とする問題が隠されていたとなる。もう1つは、その答えが別の要因で成立してたのにそうじゃない原因と勘違いした。よくあるミスだから気を付けるように」
「徳丸様脱線が…」
「ああ御免ね((このまま信善は言われない方が良いのかな))」
「続きね、後は炭自体に別の物質が含まれて、そこから燃えることによって微量だが気体が出来てるが、発見できてないね。これむつかしい。無いって証明はほぼできない。やるとすると、量の考え方にしないと駄目。元の空間の気体をまず排除して、炭の特殊気体。この2つの総量が大半を占めるなら、微量のガスはほぼ存在しないことになる。または微量のガスは先送りで良い」
「もしかしたら意味があるかもしれないけど、炭はほぼ単一の元素だとしてしまって良いと思う。図る方法はちょっと思いつかないけどね…」
早速皆に実験してもらった。その通りになった。
「はい皆さん、上澄み液使って他にもやってみます」
僕はガラス管をつかって思い切り息を液体の中にぶくぶくと吐き出した。液体が白く濁った。
「もちろん考える余地はありますが、とりあえず息と炭の特殊な気体は同じものだと見て良いです。これはあまり突き詰めると分野が違うと思います。僕が話した不老不死の前にやる命の学問です。ある意味人間は炭を燃やしてるのと同じことをしています。沸騰せず低い温度でも水が蒸発するに、低い温度でも炭に近い物質が燃えることはあるって事です。ただ炭と全く同じじゃないです」
「そりゃ何か?なら米ですね。まあこれは話が長くなるので置いておきます。ただ脱線ついでに料理で米を焼いて失敗すると黒くなります。あれ炭です。だからそんな突拍子もない話じゃないです」
「無茶苦茶話が脱線しましたが、元素と言える物質は鉄、金、炭と増えた気がします。鉄はね、多分できると思うのですが、炭を抜ききった鉄ってのが現時点で作れます。職人さんならすぐわかると思いますが、これ炭入りより柔らかいです。違うものとすぐわかります」
「ですが、それも何故鉄だけとわかるのですか?」
「逆にね、これ鉄だけだと考えておいて、鉄以外があるのか?って調査する方が良いと思います。鉄鉱石や砂鉄ってのは、金属については鉄以外に基本無いです。地域によってはあるやつもありますが、基本無いです。じゃ青銅のような合金ではないと。金属以外が含まれてるか?ならごく微量なら考えらえます。一番大きいのは、鉄自体にくっついてる錆の元です」
「自然の鉄ってのはさびてるのに近いんです。錆の原因をたたき出して気体にするのが最初に熱する工程です。でね、鉄にくっついてるのは、これですが、砂鉄や鉄鉱石じたいに入ってる他の不純物はやっぱりあるわけです。基本的には最初の工程で解けて捨てられています。言ってみれば不純物を炭素以外除去する工程があの多量の熱を加える部分です」
「だから鉄精錬ってのは逆に炭が入ってたのかーぐらいで、純粋な元素にする作業だと見て良いと思います。こういう考え方を仮定と呼びます。とりあえず仮定して純粋な元素を3つ知ってるとします。多分鉛も加えていいかと。銀も。実は銅はちょっとやっかいです。君たちには秘密教えてしまいますが、あれちょっと別の金属が入ってるんですよね。ただその過程を経たら純粋な銅だと見ていいかと」
「元素って考えがやっかいなのは、元素は基本別の元素にならないって点です。だって言葉が元素ですからね。日本では知られてないのですが、この考えは卑金属から金を創るって技術が錬金術と呼ばれています。あれ元素の考えから言うと不可能なんです…。」
「そうなると元素と特定したものが真に純粋なものであるって証明はとても大事になりますよね?」
「やっぱり僕の話雑だと思った…。うん、そうだよね物の理の多分とても重要な部分だもんね。じゃ元素らしきものはあるらしいとして、次にこれを精緻な考えにしていくには?って次の段階だね。鉄とか炭はあくまで元素があるのじゃないか?って前段階だよね」
「同一の元素の原子が集まってできたものがあるとして、その数を同一にして他の元素と比較すると重さが相対的な基準となりうる。炭6に対して鉄26とかね。これ適当じゃないよ。いつか調べてね」
そういって僕は思い切り歯抜けの周期表を作ってしまった。
「相対的重さの順にこういった票ができる」
「この折り返しには意味があるのですか?」
「あるけど今は言わない話が長くなる…。ここまでやっていいの?とは思う。僕はね、この科学班を新しい発見をする集団に育てたいんだよ。僕の発想は特殊だと思う。先生が居て生徒が居て、先生の言うことをそのまま教えられるだけの集団が普通じゃないか?と思う。科学はそこが違うんだ。科学は前の事を教えてもらうだけで、これからの事は科学者達が次の生徒の先生になれるように見つけていくんだ」
「ちょっと教えすぎじゃないかな?と思ってる。でもね、ものすごい膨大な基礎研究の果てにやっと力と富に結びつく新しい知恵が生まれるんだ…。このまま君たちにすべて任せると君たちを支えてくれてる支配地域の民たちからあいつらか無駄飯食ってるだけじゃないか?と攻撃される…。今は僕が父上や爺様に頼んでるし、その後も僕がいるから良いが、その後どうなる?早く成果を出せるようにと焦ってる。ああとっておきのモノいずれ出せるようにするけどね。それでも焦ってはいる」
「今は恵みの書発見者名前書かない。僕も追加してるが一切書いてない。だが将来的にはね、名前残そうと思ってる。君たちのやる気にもなるし、今は情報漏洩を心配して秘匿してるけど、いずれは古い物からこの書を民に公開する。その時名前があると、あの知恵が科学者さんのおかげなのかーーって感謝されると思ってるから。誰も科学班を排除しようとするものはいなくなる世界ね。それまでまあ焦ってる」
「続いての話として、気体の反応は容積の整数比が成り立つ。これかな。まだ気体の元素は扱ってないと思う。だから分かりにくい。ただいずれ気体元素も単離できると思う。その時わかるかな」
「うーん、ちょっと実際見てみないと分かりにくいです」
「そだね、気体元素は先走り過ぎか。単体であるって証明本当に難しいよね。鉄とか金はなんとなくわかると思うけど、気体は見えないからね。じゃ何故気体なのか?だと、すべての気体は同温,同圧のもとでは、同容積の中に同数の粒子を含む。単体にも分子が存在し、2個の原子から成り立っている。この2つが気体と原子の話として密接にかかわるから」
「気体は元素と原子って考え方が理解しやすい。じゃ何故固体だとややこしいの?となると、原子同士の相互作用があって体積とか重さがうまくあつかえないんだよ。後分子って発想が意味不明だよね。分子ってのは、化合物の最小単位で、違う原子と違う原子が化合して出来た最小単位。ただこれを気体で当てはめると原子同士がくっついて2つの原子が1つの分子になってるのじゃないの?って発想」
「何故同じ2つの原子同士がくっついた分子が気体になってるのか?これは困ったね。ごめんなんとなく整理できたけど、単体の気体反応を知らないとこれは苦しいね。いや良いやまず気体を放出する化学反応を見つけるって方向性が出来たと思う」
「整理しよう。鉄と硫酸を反応させて生じる気体。これが最も軽い元素。この気体を水素と言う。何故なら。これは爆発的な燃焼と共に水を発生させるから。これをとりあえず実験してみてほしいな。様々な気体元素を発見することがまずはスタートかな」
「ただ相変わらずそれが単独の元素なのか?は分かりにくいですね」
「結局ね仮定をたてて、後は重さや体積で探っていくんだよ。これが気体はやりやすい。そこできっちりと元素原理論を組み立てて個体や金属にも応用すればいいんだよ。だから気体を中心に話してる。水素を作るのは簡単だし、これが水の元であるのも簡単。だって何もないところから水が生まれるからね。問題がそれが元素なのか?どうやって証明するの?でしょ?」
「そうです、そこが良く分からない」
「僕もちょっと混乱してるよ。元素であるのはおいておいて、水の成分の1つである水素発生させてみて…。元素の基本概念はどんな手段でも分解できない成分物質」
「難しいですね」
「難しいよだって本当にって思うからね?暫定的にこれ無理ってやるしかないね。水素はとりあえず候補にしておいて、いろんな物質を分解しようって反応させると良いよ。炭素を追い出した鉄から何も出てこないよってなったら。こいつが鉄元素ですって暫定的にするのかな。皆でいろいろ本当に?って調べるしかないね。鉄は暫定的には元素で良いけど、本当にって実験はいろいろやった方が良いと思う。」




