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 免疫は理解されていたが、白血球やリンパなどから具体的に進みつつあった。ただ免疫の本格的な仕組みはまだだった。これは20世紀になって発見されたもので、少ない素となるものを組み合わせて数多くの病原体の型に対応してるって発見だった。


 これは皆に任せることにしてあえて伝えなかった。生物学は医学と密接な関係があるためどうなのか?とは思うが私個人が急いでないのだ。私は十分生きたし、この次もあるかもしれないので、あまり病気に対して神経質になってない。


 ひどいなって他人が見たら思うかもしれないが、私の秘密はごく少数の人間しか知らないので良いのだ。私が1から10まで教えるような事は不可能だし、かつできてもやらない。私は科学の結果が目的じゃないんだ。科学界と言うパラダイムを生み出す知的集団を作りたいんだ。


 重要な免疫自体は私が率先して教えたので、後はさすがに任せた。重要だが、生物学史の中では特に私が進めないと全く進まないってものでもないから。


 劉備の話を読んでいる。何か面白がってるらしい。もっと堅物だと思っていたのだが、小説のイメージは演技によって作られたものなんだろうな。あれ儒教精神を称賛するため作られた小説なんだ。指輪物語が確か神の存在を前提とした宗教的世界観だったと思う。


 ある意味異世界ファンタジーなんだよな。その宗教が儒教ってわけだ。敢えて傀儡政権これを理解してもらえるなんてな。それに典型的な傀儡とは全く違う。ただちょっと真の狙いはわからないだろうな。中国ってのは昔から内向きの国家だと言える。


 対外政策が拡張政策とったのがほぼない。これは大国としては稀有な例。それが見せかけだけじゃないのは中華思想がその表れなんだ。中華にすべてあるので他から得るものなどないって考えだ。だから拡張に向かいにくい。今回の傀儡皇帝の一番の肝は対外戦争は国民が一致団結できるからって理由なんだ。


 その時は統一的な王が必要だと思ってる。まさに日本の明治政府だよな。あれがモデルになってるからね。3国統一の後の時代遊牧民によってぼろぼろになるからね…。もちろんあれは中に引き入れた遊牧民系の軍閥が内戦を起こしたからなんだけど。


 ただある意味対外政策の失敗から来るものなんだよな。後劉備が戦争以外はあまり役に立たない王様だったからな。軍師と言うより内政にむしろ得意がある宰相的な孔明がいたから多分丸投げだったろうなとみてる。韓信もそうだけど、軍師と将軍が合体したような司馬氏のようなタイプでは全くない。


 でも国内向けの軍事力は平時にはむしろ邪魔なので、対外的な活動を重視する。まさに劉備の得意とするところになる。劉備は一流の将軍軍師、または王として軍事にめっぽう強い曹操などと戦ってるから全然強く見えないが、王様ってトップとしてはむしろ強い王だと思う。


 ああ、情報の蓄積が発見につながるって良い例だ。私も手助けするところなのだろうが、これは良いかな?とは思ってる。後は転がる石のようにって形で勝手に進んでいくと思う。まだ何かキーとなる事はあるかもしれないから適切な時に進み具合を見て助言しよう。


 今回面白いのはホメオティック遺伝子の発見だ。これとても重要。多くの生物で共通するあまり変化しない部位がある。足とか手とか基本パーツだ。これらの遺伝子群は似通ってる。有名なのは虫と人でも似ているという体を作る遺伝子だ。


 収斂進化?と言うと違う、別名保守的遺伝子と言われてるから分かる。これ変化がないんだ。何故わかった?確率的に突然変異で一致するよりもこっちがありうるからだ。有名な話で魚類のヒレが手足になるってのがある。ああいった基本パーツを延々と使うのも似てくる原因かと思う。


 これは重要な発見なので生物の科学の大きな流れの一つになると思う。いずれ遺伝子の解明には機能を探っていくことになる。そういう時にすでに発見されている重要部位になる。遺伝子の機能分析の基本と言えるかもしれない。


 大まかな流れとして生態学をちょっと進めたいと思うが、これ小規模でスタートしようと思う。典型的な知的好奇心の分野だからな。現代これが役に立つってのは環境保護の観点からになるが、それってさすがに社会に余裕がありすぎる。だから将来的なものとして種だけ植えておきたい。


 後これだけ他の科学が発達すると古臭い主観がかなり強い生態学なんてやってほしくない。体系的に食物連鎖とかそういったものを調査していってほしい。あれほど知的好奇心こそ科学の肝と言いながら、それでも今現在その余裕はない。


 逆に言えば西洋東洋ともに科学から外れた知的好奇心ならむちゃくちゃ学問が発達した。大半がごみのようなものばかりになったけど。ある意味科学って役に立つものをできる限り強く勧めるってのがそういったごみの学問の排除に役立ってる。


 だがそれを強くやりすぎるために中国のように技術だけに特化して、その背景となる学問が発達しなかったのも大きい。まあ練丹術の発達があったんだけど、あれ何か錬金術と違って科学に役に立たなかったな。全く意味がないわけじゃない。中国は薬と称して体に害のある化学物質を作りまくった。


 これが意外と薬以外でテクノロジーの発達に役に立ってる。ただ錬金術が何故か科学と直結したのに対して、練丹術は科学と直結しなかった。


 染色体に対して農業の視点から倍数体について調べてもらった小麦がこれに関係する。生物学は医学と農業に深く関係するため生物学だけ発展とならないし、何より生物学の発見が同時に他の実用的な2つの学問の発展にも寄与するためあまりにも有用性が高い。


 小麦がデュラム小麦と普通の小麦では染色体の数が違う事が研究から判明した。ただ野生小麦から発展した起源の経緯はまだだ。農作物を取り寄せるのは出来るが、さすがに他国にいってフィールドワークは出来ない。米はこういうのはなかったと思う。


 バナナが有名だったと思う。バナナは種なしバナナの起源と倍数体に深い関係がある。これも研究してもらおう。他にもあるだろうし、現代存在するがこの時代にはないものもあるかもしれないので狙って行う品種改良に役に立つ。


 確かイチゴはまだ現代のものがこの時代無かったはず。好きだが飢餓って視点では重要じゃないから、特に意識しなかったため集めさせた記憶がない。だから多分そもそもこの時代にはない事に気が付かなかった。いずれ役に立ってくれれば良いな。


 以前立ち上げた新兵器が敵対国に広まった時の対抗策について良い意見があった。まだレーダーが甘々なのだが、これには理由があってコンピューターの発達がまだまだのため情報を処理する装置ができてない。人力や補助として計算機を使ってるところだ。


 後電波に対する機器が発達してないため精度もよくない。だがレーダーが弱いが木材の船にも反応するためどんなものがよくわかっている。後は科学班と協力して科学的な対応とそれに関わる対抗器械の開発などを進めている。今回上がってきたのは、チャフとジャミングについてだ。


 どんどん進めてくれと話したが、チャフに助言をしておいた。チャフは誘導ミサイルなどの撹乱にも使えるのでそういった方向の研究も頼んでおいた。ただまだVT信管が出来上がったばかりだが、特にこれ単純な金属への反応なのでチャフに弱い。


 そもそもVT信管自体我が国しか存在しない空爆攻撃への対抗策なので対抗策への対抗策と言ういたちごっこのような状態にある。


 まだ本格的なゲノム解析は行えない。これはコンピューターまちになる。だがちまちました解析は進んでいた。重要な発見があったプロモーターとターミネーターである。要するにDNAをどこから読んでどこまで読むか?の合図が塩基配列として保存されている。


 ただこれ単純に全部読むなら良いのだが、確か細胞によって違うんだよな。このあたり確か完全には解明されてなかったような。まあまだ特に何かを伝えなくていいだろう。DNA鎖をほどく酵素についてはもう話した。後はこれらのDNAの一部を転写する事でmRNAが生まれてリボゾームでタンパク質ができてくる。


 概要は話してあるので、これらの一連の動きをDNAの転写を絡めてトータルで解明してくれればいい。


 ついでだから解析法を以前話したが、さらに整理しておくか。将来コンピューターの発達がカギとなるのを皆に話しておかないといけない。


「今回集まってもらったのは、すでにDNA解読方法は話してるが、将来コンピューターの発達によって大規模解析が可能になる。その基礎を話しておこうかと。DNAをGTACなど4つの塩基で別々に切断する。後はそれらにマーカーをつける」


「それなんですか?」


「まあいろいろあるんじゃないかな。具体的に一つの例だと蛍光物質かな。以前も話したけど放射性物質とかも使うのは使えるから。解読してるんだから、それ自体は分かるはずだよ?」


「ああマーカーって言葉がですね…」


「ごめんごめん、印みたいな意味」


 ちょくちょく徳丸語録としてそのまま科学用語として使われていくことになる。この謎の言語かなり問題だろう。だってアングロサクソンがブリテン島にやってこないと完成しない。今はやや異なったゲール語、ケルト語といったものだと思う。いろいろ言語覚えてるんだけど、英語とかなり違う。


 似通った部分もあるのは英語の元になったか?は分からない。何故なら、欧州言語って方言が分化しすぎてしまったレベルだから。元の印欧語から言語として発展した時間経過が短いんだ。


「後は短いのから並べて切断前の塩基配列を決定する。今もやってる?」


「はい」


「そっか、まあ化学物質で切断するのじゃなくて、生化学的なポリメラーゼなどの短鎖を合成していく。工夫があって、特殊なヌクレオチドを混合することによって反応が途中で止まるようにする。これで大量の短鎖を作る。まあこれ改良法だけあってそれなりに難しい」

「以前の方法はさ理解がしやすい。これはDNA合成の深い知識がないとできない。それゆえに後回しにしたけど将来大規模解析が可能になったらこれに変えていかないといけない。後さ、これ別に発展形じゃない。たまたま前の方法が分かりやすかっただけで教えたにすぎない」


「なんとなくわかります。土台となる知識の偏りですかね?」


「うん、分野が同じでも詳しい経験知識って皆違うよね。時間がたてば同じ分野なら共通になるけど、今最先端のものだとすべて知るのは無理だよね。今研究してる最中の文章化されてないものもあるもんね」


 サンガー法とギルバード法って、ICの2つの方法と似ている。どっちもほぼ同時に開発された。ただICは廃れたほうが先に開発された。そのため特許が問題になったがややこしい結末だったと覚えてる。どっちにしろ、何故それをわかってて廃れたほうをあえて先にするのか?


 これは直感的にギルバード法のほうが実現しやすい。知識の偏りと呼んだが、化学操作のほうが知見が圧倒的。だからサンガーはよほどDNAについて当時の最先端の知識に精通してたんだろうなと思ってる。ICは一応僅差で順序の差があるので、直感的には圧倒的に分かりやすい。


 ただそのわかりやすさがだめだったわけで、なんというか洗練されてるって感じじゃない。実はこういうのは作りやすい。配線を単純に部品同士を繋げるように乗せただけなんだよな。これ特許で争ってるからややこしいけど。似てると思うのは、発想が古臭いんだよな。


 カモノハシと完全に進化した哺乳類の違いみたい。後ギルバード法が廃れるのは当たり前だ。人間はDNAの巨大な貯蔵庫みたいなもんだ。DNAを切断する化学薬品ってやべーだろどう考えても。ただ0から開発するなら両者は順序をつけてやったほうが良いと私は考えた。


 たまにすっ飛ばして教える時あるけど、私ローテクや不完全なもの大事にする。洗練された画期的なものって分かりにくいから作りにくいんだよな。

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