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 本来工業化が進んでからやる予定だったが、良い方法を思いついたので、農地解放をやる事にした。


「以前から話しておいた農地の農民への帰属について話そうと思います」


 ざわざわしてるが、実はこれ有力領主にはもう話が通してある。じゃないとこんな無理のある議題を持ちあげない。良い方法秘策とは、少数の工業化のある程度進んでいる有力領主と結託して農業主体の遅れた領主に対して有無を言わさず農地解放を進めてしまう点だった。最初からこう計画しておけばよかったと思う面もある。


 何故か?と言うと、もっと前から計画していたらもっといろいろ出来たからだ。急遽決まったので、いろいろその後の計画に問題がある。それでも早くやった方が良い。武力制圧はしたくないので、今回は武力を背景にした脅しの鞭と、工業化が進んでない地方領主には農業機械と化学肥料をこっちが握ってるので、これを基にした飴で推し進めた。


 そんなので可能か?なら、日本がこの点大幅に遅れたのは、武士が誕生してしまったからだ。あの人たちの一所懸命は信仰に近いものがあって、合理性から叩き潰そうとしても上手く行かないんだ。そういった信仰心はまだ出来上がってないので、武士ほどの抵抗はない。


 そもそも、元々日本って統一されて天皇の土地だったんだ。今回それを領域って考えにする。土地自体は誰でも手に居れられるが、国が交渉によって上手く行かない場合国家にとって意味のある土地なら強引に取り上げる事が可能だ。そこが土地の所有が出来ても、単純には農民に土地を与えるわけじゃない。


 武士の世の中って土地が問題じゃない。領地である事が問題なんだ。上位存在を無視して他者に口出しさせない土地。これが大きな問題なんだ。その辺りもっとうまくやるべきだったと思う。土地の売買は自由だが、この領域の考えを絶対に産まないようにする。ざわざわが落ち着いてきた。本当に私と対立できそうな相手はもう話がすんでる。無事沈静化したようだ。


「今回からすぐじゃないです。じっくり話し合いましょう。ですが、今回話したのはいよいよ手を付けると言う事です。未来にそうするというものではありません」


「農地しかないのだが…」


 弱小地方領主が言ってきた。


「ああ食い扶持を取り上げるわけじゃないです。貨幣制度がまだ十分じゃないので、管理地域では現物支給で国からそれなりのものを与えます。いずれ貨幣が発達してきたら金銭による支払いとなります。重要な事は、俺の土地とお前の土地で、土地を絡んだ内戦のような状態になる原因を取り上げるためです」


「土地自体は所有者と購入者が納得すれば売買できます。俺の国みたいな権利を土地に持たせない。これが改革の目玉です。今までそうなってたのは分かりますよね?全国を国家の軍隊で制圧したのは、その前段階です。領主と領主の戦争はもう終わっています。次の段階として、将来的に争いの元になる地域国家ができる元になる土地の在り方を変えるのです」

「国家のものとして貸し与えるとやればすっきりするのですが、それも変だと思うのです。所有はその人のモノで良いと思います。重要なのは土地の所有ではなくて、領域国家としての土地の占有なんです。これを認めないのが内戦を抑える重要なカギとなります。今現在は戦争後で決着はついてますが将来これを残したままやればおそらく内乱の元になります」

「だから決着のついた今やっておこうというわけです」


 すでに大領主は工業化が進んでいて、農業だけで税を得てるわけじゃないので、農地を失っても他の土地利用によって税を得ている。これでお互いに話がすんでいる。ここでごねると、将来反乱する気なのか?となってくる。圧倒的武力は宗像にあり、その宗像と全面戦争になってまでやるのか?と言うとならないとなって話がついてる。


「徳丸、天皇家の土地になるのか?」


「そこが難しいですね。当然所有は国有地だけです。じゃ私有地はどういう扱いなのか?国家が国家のために重要だとしたならその私有地取り上げる事が可能という感じでしょうか。そこで国家と陛下の関係ですが、これはまた別の話でいいのじゃないでしょうかね?難しいんですよ、立憲君主制って、とりあえずは無制限の国王の裁定を抑えるって意味が強いです」

「でもその先にどこまで?となると、それが法律や憲法の出番になるわけで、今どうこう言える話じゃないんです」


 今日からハイ大改革とはならない、ただ、この目的に向かって下っ端が動いて実現させていく事がやっと始まったわけだ。天皇の土地って考えじゃないと、実際律令ではやっていたことなので先進的ではない。その後の土地に関する開拓の法に大いに問題があったためこうなってしまったとなる。


 ローマもそうだが、実は中国は封建制は皇帝制の前にしかない。周がやや封建的だった。そのため必ずしも中世は封建制の時代ではない。中国は太古の昔以外封建制の中世があったわけじゃない。欧州は別の移民達の流入による秩序の作り直しだったせいだろう。ただ統一国家一応できてるのだが、王の子供に分け与えてすぐに分裂してしまったな。


 ただ天皇の土地と言う分かりやすいものじゃなくて、その土台となる。領域ここにメスを入れてるので、かなり分かりにくいだろうな。土地は所有者がいるのに、国家が上位存在として好き勝手を許さない。例えば戦国大名の分国法なんてその良い例だろう。土地の所有者が法律を独自に作ってしまうのだから。


 ここを重点的に攻めてるんだ。


 洛陽制圧から調査してもらっていたのだが、その報告が届いた。董卓が何故攻めてこなかったのか?これが引っ掛かった。その前の朝廷は軍事力不足になる。それが董卓によって補われた。ただ報告を読んでみるとむしろあっちが不利な立場だったと分かる。いや立場が不利だったというより董卓が勝手にそう思い込んでいた。


 黄巾党討伐後の我々の独自派閥の討伐には失敗した。そこから董卓までの間に時間があるのだが、これについては連合は崩壊している。ただ漢朝廷自体の本隊はどうなっていたのか?これが宦官たちの内紛でガタガタになった。もう1つは我々が黄巾党の討伐したグループと比べて秩序的だったと把握されていた点。


 緊急を要する様な治安の悪化ではないのと、以前も討伐に失敗していたので、そのため内紛による不利な状態で軍隊を出すのを抑えたとなる。そこで董卓の加入だ。ここで不味いんじゃないか?とこっちは思うわけだ。だが、董卓もこれらの敵対派閥を粛清しないといけない。そのため董卓は時間がたてば有利になると思い込んでしまったのだ。


 ここがこっちは分かってなかったので疑問に思った。我々もわざと領域内の統治を優先して時間を空けたのだ、こっちこそ時間がたてば有利になると見てた。お互いに思っていたようだ。だが事実として、こっちが時間を有利に使えた。これは董卓のミスだと思う。だがこのミスは仕方ないかな?と思う。


 董卓が無能なわけじゃない。1つは、すでにただの盗賊団じゃないと朝廷が把握していたんだが、これを董卓は掴んでなかった。主に敵対派閥がこれをつかんでいたからだ。もう1つはそれらの敵対派閥もだからってこれはとんでもない強力な組織だとは全く把握してなかった点。内紛なんてしてる場合じゃなかったんだ。


 後者については仕方ないと思う。私もこの世界のだれもが理解できないと思ってる。綿密に大量の密偵を放って情報を仕入れないと多分分からない。いや集めても意味が分からん事が多すぎると思う。最低理解できるのは農業が違いすぎる点だ。だがこんなの一部を見ても意味がない。統括された生産量のデータを把握する必要がある。


 こんなところまで探れる密偵を許すほどこっちは馬鹿じゃない。じゃ何故一部把握してたのか?人の流れがあるので噂ぐらいは流れてくるだろう。その程度の表面的なものを把握していた。治安が盗賊団の一派と思えないほど良いって把握していたのはもう調査済みである。だがそこまでなんだ。


 そして董卓はそれさえ把握せずに黄巾党と言う盗賊団と同類レベルとしか見てない。軍事がやや違うのは過去直接対戦したので知ってるようだったが、内政は全く分かってなかった。そのため内政の充実のためわざと時間をかけてるのを把握してなかった。盗賊団が時間をかけてもそりゃ大したことはできないだろう。


 もちろん、支配地域の支配が強くなる可能性がある。だが多くのケースは収奪がひどくなっていずれ兵糧が枯渇する程度だ。これなら時間は間違いなく董卓に有利に働く。その点漢の軍事の一翼を担っていた董卓の経験からの判断は間違ってない。我々が常識外れ過ぎたんだ。俯瞰的に董卓を見るとまあ時間をかければ朝廷をまとめられるので董卓側が有利だと思いこむのは納得できる判断だ。


 後皇帝を奪取したのを董卓が軽視しした点だ。時間をかけて朝廷を掌握するため、独自の皇帝を担ぎ上げたから。これでこちらが奪取した皇帝についてどうでも良いと見たようだ。その逆で、こっちはこれが大きかった。こんなすぐ機能すると全く思ってなかった。こっちはうれしい誤算だ。


 なぜこうも積極的に参加してくれたのか?洛陽の朝廷よりよっぽど皇帝の仕事が面白いそうだ。とどめは董卓が新皇帝を担ぎ上げたことで戻る場所が無いのを理解した点。この皇帝は拾いものになったな。長い目で見たら絶対必要で、史実から殺される恐れがあるから急いだのだ。後で使い物になればいいと思ってた。


 漢の元の王朝が潰れたらさすがに協力してくれるだろうと思っていたら。こっちの方が良いと思ったようだ。積極的に地域を巡回してくれたのは統治にかなり役に立った。危険じゃないのか?なら多分一番危険なのは世間的に黄巾党だ…。その黄巾党の一派が担ぎ上げてるんだから。


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