13
顕微鏡はまだ完成しないけど、ルーペの倍率が上がった。
「どう見えてる?」
僕は水田の水を皆に見せた。多分ミジンコぐらいいると思う。藻とかも見えると思う。
「これなんですか?」
「エビやカニに近い仲間。何故って言うと、エビカニって大きなものもいるけど、子供のころ目に見えない小さなエビカニもいるんだよ。これぐらいのやつがね。それとそっくり。エビカニはそこから大きくなる。んでね今作ってる顕微鏡ってのは、これよりさらに小さなものを見るレンズになる」
「もっと小さなものもいるのですか?」
「いるいる大量にいる。まだ見えてないけど、病気の元って大体それらが関わってる。医療はそこからもっと本格化かな。もちろん別にそれらが見えなくても医療はできるけど、さらに発展するには、顕微鏡でしか見えない小さな生物が見えて初めて病気とはなんだと?と深い理解になる。もちろんすべての病気が小さな生物のせいじゃない。ただ画期的な発想に変わるのは間違いない」
「前話したけど、目に見えないから神様、悪霊とかそういう発想とは相いれない。見えないだけで生き物がそこにいるんだ。なんでもかんでも神や悪霊じゃない」
いかん寒冷化対策ばかりで増収計画をしてなかった。肥料はどうしようかな…。肥料は開墾したばかりでやせた土地で使えばいいか。できる限り肥料は後回し、あれ多少お金居る。正条植えや、塩水による籾の選別などすぐできる事やらないと、後鉄器の農機具。これに関しては貸出制にした。後千歯こきはいるよな。高炉が完成するまではまだだ。水車式ふいごによって中国式鋳造はできてるけど、高炉はまだ。
寒冷化対策ってわけじゃないが、水田が多分もろ被害を被るので、椎茸の栽培なども手掛けた。水稲とは違う作物を増やす。これは大きい。後単純に寒冷化だけじゃなくて、水利が問題になるので、その点でも水田が向かない土地は大量にあった。そこを利用するってのは全体の生産量増加につながる。
いずれくる朝鮮との国交の停止のため別に鉄鉱石の採掘場所を探さないといけない。次に高炉自体を作らないといけない。これが大変。中国式鋳造って高炉だと思ったけど違う。あれ普通の炉の高さ。強風を送れるのが共通してる。高炉ってじゃ何のため?熱効率のためなんだよな。後高炉ができるころにはコークスも使用したい。
畑作の方は米に比べて効率悪いので、増収頑張ってたので、畑作はこの時代には似つかわしくないほど発展してる。海の近くの米に向かない土地では、漁業と組み合わせて小魚を肥料にしてる。
奄美なども利用してサトウキビを使った紙の生産に乗り出す。紙は作られてるが、使う量が多くてそろそろ単純な和紙では困ってきた。そのため漂白無しのサトウキビ紙を作れないか?と模索。アルカリ分解を使うか?でいろいろ分かれるが、サトウキビには必要。ただ水酸化ナトリウムが手に入らないため石灰と木灰で応用。
わらでも紙を作ってみたが、うーん…。わら半紙がすぐに古紙の再生紙をつかうようになったとは知っていたが、これはひどいな…。サトウキビもそうだが、アルカリが弱いか?これじゃ使い捨てになるが、大問題。だって熱と手間かかりすぎる。将来的に庶民用にするか…。アルカリ自体は歴史が古くて作るの簡単なんだけど、強アルカリの水酸化ナトリウムはそんなに歴史が無い。
荒い茎を取り除く方が大事かな?とにかく分からん。よほどのことが無いとこんなもの保存用にしたくない。使い物にならんのは確かだ。参ったな紙の需要があるのは確か。後これなら高圧高温と強アルカリの木材パルプの方が楽だな。丁寧に作れば多少は品質が良くなる。だがその分安価とは言えなくなる。ただ材料費の安さは魅力なので通常の和紙の材料不足になったら考える。
後麻なども悪くない。安価な紙の製造はやめておいて、通常使われる和紙の代替品って形で考えようと思う。原材料不足の発生の代替品。
石鹸を創ることにした。布が貴重なので、出来たら良く落ちる洗剤があった方が良いだろう。以前は売り物として考えていて優先順位を落としたが、布が思ったより貴重なので考えを改めた。売り物じゃなくて使おう。紙の時いろいろ使っててアルカリに目覚めたのもある。野生の獣だけじゃなくて、家畜も増えてきたしね。
ついでに洗濯板も作ることにする。衛生が目的じゃなかったのが良く自分でもわかる。衛生どうでも良いのか?ならとりあえず自分で使う分で良いんじゃないの?って思ってる。衛生云々は顕微鏡が出来てからやりたいな。
ドライフルーツを創ることにした。目的は2つ。せっかく南国に航路を作ったのと台湾と言う土地を少し開拓してる点。南部の珍しい果物を食べたいが腐ってしまうのでドライフルーツと言う手を使う。もう1つはいずれ来る外洋航海のため壊血病予防のための果物摂取のため。天日干しでも短くて1か月は持つものもある。ただし果物によって水分が残りやすいものがあるので注意。
「果物を干して保存食を作るんだけど、倭国じゃ知らない果物を南国から運んでくるから。駄目だこりゃって日数を調べてほしい。ただ難しいよね腐ったもの食べるのか?となるから。何かいいアイデア無い?」
「カビはどうでしょうか?」
「それでいいか、うわ腐ってるって程痛まないだろうしね。一応乾燥させるから。じゃ各自果物の種類によって駄目だこりゃって日数を調べてほしい。後出来たら見た目悪くないなら味の劣化も調べておいて。お腹壊さなくてもいろいろ悪くなってると調べてほしい。多分さ、味が劣化する延長に腐ってるカビってるってのがあると思うんだよ。そういった日数の関係も調べておいて」
「後当然だけど平均でお願いね。1,2つ調べてハイ終わりじゃないように。珍しいものだけどある程度個数渡すから」
銃の加工で使えるかな?って事で旋盤作ってみた。え?となるかもしれないけど、日本って当初足踏み旋盤って作ってた。まあものすごく雑な器械…。後々水車なり、電気、ガソリン、蒸気などの動力で動かせばいい。後は職人さんに任せよう。他に何に使えるか?分からん。精度の問題で、特にこれじゃないと駄目ってない。大事なのは精密に作れる。銃はそれが要求されるし、それを手で丹念に作ると時間かかる。
青銅製では作る気が無いけど、鍛造の火縄銃でライフリング刻んでみた。なんというか、量産品じゃない一点もの。フックカッターってのをうろおぼえで覚えていたので、これを基にやってもらった。ねじとねじ穴、商人さんに話したら旋盤加工使えそう。鉄の鋳造自体はできるが、やっぱ効率がいい中国式より高炉がいるよな。もともと大量生産のためのものだから。熱効率の向上って大事だよな。
後、ライフリングも大量生産とむつびつけないとな…。他にも後詰め式や、薬莢タイプとかも重要だ。とりあえずはミニエー弾の開発をした。形と横線と後ろの空洞が特徴的。これでとりあえず前詰め式で当分行ける。ただな、次の薬きょうぐらいはいろいろ言えるけど、その後どうなる?時間かかってもいいからそのうち勝手に開発してほしい。方向性のアイデアだけは出せるから。設計までやる程知らないんだよ。
「以前原子の話をしたと思う。金は1種類の原子が集まってできた物質である。これを元素と言う。原子の説明はこれ以上小さくすることができない物質話した。だがこの物質は1つじゃない。複数の種類がある。その中でとても分かりやすいのが金だ。鉄鉱石を精製した鉄も炭を取り除けば単体を見ることができる。ちなみに炭も単体の物質となる」
「だが僕たちは原子1粒を見ることはできない。目に見えないミジンコでさえさらに小さい原子でできてるんだから当然だ。そこで原子が数多く集まって、1つの種類だけで構成されたものを元素が集まった物質と言える。元素の存在は金などで分かると思う。鉄はまだいいが、炭が単利された元素の集合体とどう証明するか?はちと僕も分からない」
「ただ皆はまだしらないある物質は、おしっこから単離される。その過程が化学的な反応の積み重ねになる。金は分かりやすいだろう。熱しても溶けるだけだ。化学的反応もほぼない。ある酸に溶けるが、まあそれ以外は実に安定した物質だ。金が単体の元素であるってのは証明はされてないかもしれないが、これらの科学的な様々な反応を無視するので単体ではないか?と連想はできる」
「うーん、それでもこれ以上分けることができない元素の発見ってどう証明するんですかね?」
「金はまだ良いが、ほんと炭とかどうそうだと言うんだろうね。化学反応や熱による操作をしまくって、これは単体だと思った物質が出来たら元素とすればいいと思う。それが実は化合してるってのは、後の人が確認すればいい。それでも誰もがこれは分けられないものだと認めてくれればいいのじゃないかな?暫定的元素の証明として」
「そうだ金剛石って最も堅い宝石がある。これねものすごく貴重なんだけどさ、燃やすとある物質になる。でもこの1つしかできない。変化はした、だが1種類の別のものになった。これは元が1種類しかないものだったのではないか?と考えらえる。金剛石って炭が結晶化したものなんだよね。燃やせば炭を燃やした時と同じ物質ができるので証明できる」
「まあ実際炭は、そうでもないいろいろ入ってる。ただ主成分はほぼ黒い炭元素だけだと思うよ。炭を燃やしたとき生じる煙?気体がそれなんだけど。人間の吐く息に含まれる物質なんだよ。これね、確か何かと反応したはず。それで存在が確認できる。ちなみにものすごく寒いと固体になるから目に見えるけどね」
「ああそういう反応を集めろって事ですか?」
「うん、何が存在するか?ってのを確認するための方法の確立だよね。これを分析って言うんだろうな」
参った大事な事に気が付いてしまった。イマイチ進まないなと思ってた。当然空白の時代で何のバッグボーンもない。明治維新とは違う。すでにあった日本の土台を海外の国を参考に改良したわけじゃない。世界丸ごと0からスタートだ。その大変さを分かっていたが、結局分かっていなかった。錬金術が足りてない…。
はっきり言って錬金術は無駄だ。科学ならもっと効率的にできる。だが錬金術に負けてしまう部分がある。無鉄砲な無駄な努力だ。無駄なら意味が無いのでは?目的にとっては無駄だがその副産物が化学を支えている。根源たる物理学を制していればすぐに科学が出来上がるだろうって、典型的な物理学至上主義の科学者思考になってしまった。
何かしようと思っても化学薬品が全くないんだ。これ多くが錬金術の副産物で作られている。多少の無駄は許容しなくてはいけないかもしれない。これを説明するのはむつかしい。よりスローな展開にならざる得ない。それを嫌って性急に進めた故の遅れだ。まさに急がば回れだ。
「根本的な方針転換ではないが、ちょっとかじ取りを変えなくちゃいけないと思う。富と力に知は結びつけなくてはならない。これは変わってないが、多少の無駄な回り道寄り道はむしろした方が良い」
「どういう意味でしょうか?」
だよね、僕もうまく言えないもん。
「ええーっとね方向転換とは言ったけど、実は前から言ってる。この世界の謎を解く。これが科学の根幹なんだ。だけどそれを延々とやってると、君たちを支えるすべての人にあいつら何やってるんだ?って不満が出る。下手したら殺されるよ。うちの一族がなんとか抑えるつもりだけど、それも苦しい。父上も爺様も僕ほど重要性が分かってないんだ。そして僕はまだ一族の指導者ではない」
「だから、役に立つものにつなげなくはいけないとずっと言ってきた。できる限りそうするよう僕も考える。ただ科学ってのは大いなる無駄が生み出す側面がある。世界の謎なんて知らなくても生きていけるからね。これが大いなる無駄につながるんだ。まだ手ごたてを感じてる人がいるのか?分からないが、手ごたえを感じたら多分この謎解きより面白いことが多分なくなる」
「そんなものでしょうか?」
「僕がある程度選んでるのと、後続の班員も君たちが選出したものでしょ?そういった頭がそれなりに良い人は高い確率で謎って奴にはまるし、かつその謎の難易度が適度に高いからね。むしろ僕がコントロールしないと君たち自由にやりすぎると多分暴走する。それぐらい魅力的なんだよ。だからずっと僕は富と力に結びつけるように言ってるんだ」
「でね、この成果が出れば別の喜びがある。それで探求心の暴走をある程度抑えようと思ってる。ちょっと締め付けが厳しすぎたかも。もうちょっとガンガン行っていいよ。何の役に立つんだろう?なんて考えていると駄目なんだよね。僕がそれなりに頑張ってそっちはなんとかするよ。課題は与えるけど、気になる事があったらどんどん研究すればいいよ」
「ただし不老不死だけは許さない」
「何故です?価値があるという点では大きいでしょ?」
「古今東西これで失敗したのは、不老不死はないって事じゃないんだよ。多くのそれに挑戦したものに逆に問いたい。お前らは死より生を知ってるのか?これがまるで無知なんだよ。人生観なんて語ってもらっても仕方ない。生き物植物も含めて獣たちが何故生きてるんだろうか?これはとても奥深いんだよ。生きてることが何か?分からない人間に死を調整する事なんてできっこない。だから不老不死を研究するなって言ってるんじゃない、そう思ったら生物について研究して、生きてる事について研究してくれ」
数日して考えを整理した。
「今日は石鹸について話したい。以前石鹸を作ったんだけど、これがまさに職人と科学者に当たると思ったんだ。石鹸はさ油汚れが良く落ちるんだ。職人は油汚れが落ちる便利なものって作るんだ。でも科学者は何故油汚れが良く落ちるんだ?と知ろうとする職種なんだよ。油と水を混ぜれば2層に分離して油が浮くのを知ってる人いると思う」
「石鹸が油汚れを落とすのは、通常混ざらない水と油を混ぜてしまえるからなんだ。何故石鹸がそれが出来るのか?というと油と水の両方の性質を持った物質だからになる。例えて言うなら3人人が居て2人は仲が悪いけど、1人両者の仲を取り持つ人が居る。この人の右手は仮に水さんと言う人と手をつなげる。左手は油さんと言う人と手をつなげる。3人仲良く手をつなぐにはこの仲介人が必要となる」
「これこそが石鹸が持つ重大な性質になる」
「私たちにそれを話すと言うのはそれを確認してほしいという事ですか?」
「その意図はなかったけど、いつか調べてもらえると嬉しいな。それが難しいのが前回話したことになる。僕たちはそのための道具がとにかく足りない。実験方法もてんで駄目。それに前回気が付いたんだよね。戦う武器もそろってないのに、とにかく勝てじゃやりきれないでしょ。だから前準備期間だと思って良いよ。正直今すぐ成果だすの無理だ…」
「今回の意図はやっぱり職人と科学者、職人はとにかく汚れ落ちるものが出来ればいい。科学者は何故落ちるのか?の答えを見つけてほしい。当然これすぐわかるけど、職人でもそう考えてしまう人はいる。ただそれで「溶けるじっと立ち止まってもらうと僕が困るんだよ。だからね、優秀な人で疑問の多い人が居たらこっちに持ってきてもらう制度作れないかな?って考えてる」
「溶ける僕目指してる、富力と知をつなげるのがやりやすくなるからね」




