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 熊子は状況を整理していた。黄巾党の諜報部と組んで高速連絡網を作ってる。ただ機械が高価なので数は多くない。ポイントになるところだけ。そこから洛陽と董卓の地元の情報が入ってきた。洛陽は流言が成功したようで、兵を持つ有力者がじわじわと集まっている。黄巾党無視されてないか?ならわざと弱く見せてる。


 明らかにこの数か月停滞してる。わざとやってるのにそれに気が付いてない。そもそも董卓を返してしまうのが油断してる証拠なんだ。当然内部抗争からの権力争いだが、そもそも何故董卓が洛陽に居たか?で黄巾の乱が本隊は消えたが、清廉派が残ってしまって集結してないからだ。そんな当たり前の理由で防衛のためいたのに帰してしまった。


 これは他に優先すべき事が出来たからだ。ただそのために黄巾党がやや勢力を落としてるように見えた点だ。董卓との内部抗争が終ったら叩き潰してやろうとか考えてるんだろうな。これも計算のうちかか?ならある程度はあった。だが結果論だ、あくまで別の理由で意図的に手抜きをしてた。


 そしてもう1つ重要な情報董卓が地元に戻ってすぐに兵力を追加で集めて洛陽に向かって進軍する様子を見せていた。というか多分隠してない。こっちはデマっぽいのを勝手に流言したのだが、内密にやってないので調査すればすぐ分かる事だよな。元々董卓は推測だが、沈静化するのを待つだけじゃなくて、兵を追加で集めて黄巾党も含めて叩き潰すつもりだったんだろうな。


 デマだったのだが、これだけ堂々と集めてると真実になってしまった。だがこの時間差がとても大きいんだ。董卓は電撃的に奇襲するつもりだろうが、多分上手く行かない。本来届いてない情報がデマで届いて準備してるから。2勢力がぶつかり合う時期が大体わかる。そこを狙ってこちらも攻める。


 情報が集まったので、日本軍を含めた全兵力で電撃作戦を実行して洛陽にそのままなだれ込んで皇帝奪還によって漁夫の利をいただく。


 治安維持や小規模に活動していた日本軍はその日から特に攻城戦を中心に侵攻を開始した。後は徹底的に鍛えまくった黄巾党に任せる。日本軍は守りの硬い砦を中心に攻め立てる。特にこの時代の軍隊に比べて強いのがこの攻城戦となる。特に何度もこれは経験してて、満州中国で攻城戦ばかりやってるのでどうやって落とすかが慣れたものだった。


 徳丸様に様々な建築技術を見せてもらったことがあるし、ここでも多々使ってるが、中華の壁の大半はそんな立派なものじゃない。だからたまにあるがっちりした作りは人力で壊すのはかなり大変だ。そのため出番となる。どれだけ頑丈でも徳丸様の創るものと比べて堅牢であるよりも人や馬の侵入弓に対する防御で作られてて、縦に長い壁が多い。


 徳丸様作るものはそういうものもある。ただいつか自分たちの武器と戦うことを想定してて、そのための建築は特別で、基本火力で簡単に壊せるそうだ。逆に簡単に壊せないものを作るのがかなり難しいとの話だった。特に火器を想定してない壁は簡単に壊せるとの事だった。ただ西域のローマはちょっとややこしいらしい。


 壊せるが、かなり堅牢だとの話だった。中華はローマに比べればてんで話にならないらしい。実際経験からそれは分かってきた。当初はあんなものどうなんだ?と思ってたが、何度も壊すうちに実は中華の壁って火器にはものすごく脆いって良く分かった。大砲を持ち出すまでもなく機動力の高い戦車で十分に壊せる。


 もちろん有名な函谷関などは無理だと思う。見た事はないが話に聞いたものでは、戦車の砲弾じゃ無理かもなと。まあ大型の大砲を持っていけば行けると思う。穴をあける弾が戦車は多い。これは当初もっと特化したものがいいのでは?との話が合ったのだが、中国の壁の大半はこれで良いんだ。


 中国の堅牢なものって厚い。それを崩すには穴をあけるより大規模に破壊するものが良い。貫通よりも範囲破壊。函谷関はただ特殊過ぎる。あれは細い谷のような場所にあるためあんな砦は平原だらけの冀州にはそう無い。そのため人力では突破が苦しい堅牢な冀州の砦は戦車部隊で壊しまくった。


 以前徳丸様が計画して近い作戦は揚州でやったが電撃浸透作戦に近くなった。ただ違うのは、砦を放置するんじゃなくて、歩兵を向かわせて、砦は戦車部隊で壊す。壊れた砦の兵士たちを放置って形でおいていくだけだ。電撃ではないのでは?だが、歩兵が先に向かうため、後から残った戦車が壊してる時間で先に行ってしまう。


 後からむき出しになった兵士たちが追いかけようとしても戦車で叩いたり、戦車はすぐに逃げてしまったりする。最終的に囲まれないか?なら砦にこもった敵をおびき寄せて野戦でたたくことも十分可能。そもそも戦車で叩けない場合であり。大体は戦車で叩いてちりじりにさせる。


 これをどんどんやっていきいつものように頭を叩く。命令系統をずたずたにしたら後は各個撃破だ。実はわざを手を抜いていたので、歩兵は余りまくってる。面に広がっていなごのように叩いていく事は可能だ。ただ精鋭を鍛えていたので、その部隊が少ないだけ。ある程度内政に回していた歩兵を面拡大の各個撃破に使って一瞬で華北を平定する。


 知らせが洛陽に届く前にすぐに南下して洛陽に進軍を開始する。すでに清流派と董卓との連合した宦官の争いは始まっている。そこに思い切りぶつけて、漢の皇族を奪還する。すべて想定の速度を上回る予想外の早さなので成功するのと、それらの情報を繋ぐ電波網によって相手にとっては何が何だかわからないだろう。


 言ってみれば冀州で思い切り膠着してた黄巾党が何故ここにいるのだ?となるだろう。それらはすべて種明かしをするとお前らを誘い出すための偽装だったのだ。確かに脅威だが、それでも民の反乱としてまだ見てるんだろうな。これはどうみてもそのレベルじゃない。正規の軍隊のような規律のとれた精鋭までいて、かつ日本軍に至っては意味の分からない機械化部隊だ。


 そもそも満州と黄巾党が組んでるとは思ってないだろう。それも大きいかも突然膠着し始めたのを満州と戦ってると想定したと見てる。ははそれもそう思わせるのが目的で先に取ったんだ。時期的にも膠着状態になったのと一致してるし、そう思うのが当然だ。しかもその部隊にぼろぼろに漢軍は負けたので変な納得をしてるはずだ。満州との国境からは治安維持を目的としたもの以外全軍引き上げてる。


「いよいよだな李北」


「念願の皇帝奪取だな」


「どうやって宮廷から連れ出すんだ?」


「まずは日本軍がかき回したところを精鋭の黄巾党部隊が宮廷になだれ込んでもう強引に連れていく。でだな、それまで2勢力を近づけさせないでくれ。もちろん黄巾党の部隊も日本軍の手助けはする」


「なるほど確かにうちの機械化部隊じゃ人員の確保とか向かないな。よしうちもそういった特殊作戦の歩兵部隊がいるから手を貸そう」


 熊子は最新式の武器を携帯させた特殊部隊を黄巾党の精鋭部隊に同行させる。


 兵士は皆殺しで特殊部隊は進んでいく。女官などが悩むが抵抗するものは殺していくが、大人しくしてるものは放置していく。手が足りない部分は黄巾党に任せる。ただし自動小銃を使ってるため一騎当千の火力を発揮できる。そうして皇帝を発見する。抵抗するものはどんどん殺して、縛った後医療用に開発した麻酔を打つ。


 皇帝の親族らしいものもまとめて連れていく。外の部隊に向かって急いで移動する。連れてきた数人を戦車に放り込んで、作戦成功の合図とともに全軍撤退する。殿は皇帝関係者を乗せてない戦車部隊が担当する。乱戦にはこちらの部隊はなってない。強引に戦車で道をこじ開けて歩兵で穴は防御している。


 明らかに自分たちが現れたことで混乱した2つの勢力は見事に乱戦になっている。その間にさっさと逃げていく。追いかけてくる部隊はあるがすべて蹴散らしている。全体は2勢力が乱戦になってるためまるで追撃の機能をしてない。散発的な部隊を戦車で蹂躙してる楽な殿になっている。


 あっという間に戦線から逃れてしまった。もちろん冀州に戻る前には散々追いかけてきたが、まとまった大軍はほぼないため戦車で楽勝で跳ね返してしまった。歩兵が遅くても、戦車が時間を稼いで急いで追いつくためかなり順調な撤退となった。しかもこれは計画的な撤退である。洛陽を維持するつもりはない。


 本来は両軍を撃破する計画であったが、それをせずになだれ込めたため急遽いくつかある計画の1つに変更することになった。無謀な撤退という不可能を可能にしたのが、戦車部隊なので、それほど難易度の高いものじゃなかった。もっと追撃される計画だったのにされなかったので相手の部隊を減らせなかった。


 洛陽を維持する考えもあったが、2勢力が協力すると困るのでこれは選ばれなかった。


「お目覚めですか皇帝陛下」


「誰だーお前たちはーーー」


「誰だと言われれば黄巾党です」


 さすがに絶句したようだ。


「さて黄巾党が世間で言われてる様な漢の転覆を狙ってるなら。陛下を殺してますよね?何故生かして連れきたと思いますか?そこで危害を加えるつもりはないのは理解してほしいのですが落ち着いてもらえますか?」


 少しだけ皇帝は落ち着いてくれた。


「我々は本家黄巾党と考えの違いから秘密裏に分離したものたちです。我々は蒼天に代わって黄天を起こす考えはありません。我々が望むのは漢を旗頭とした新しい政治制度です」


「なんだって?」


「まあこれじゃえらく虫が良い話ですよね。そこまでは楽天的なものじゃないです。はっきり言えば傀儡の皇帝になっていただきたい」


「なんだとーーー」


「ですがこのままだとあなた董卓の傀儡でしたよ?実際一時期は洛陽を支配していたのでそうなる危険性は分かってますよね?」


「同じことじゃないか」


「そこです、そこにこそ我々の狙いがあります。同じじゃないんですよ。そこが最大の重要な点です。そこを詳しく話して賛同してくれるなら是非協力していただきたい。ただし協力を拒んでも命はとりません。そのまま洛陽に返します。ただその場合どーせ董卓の傀儡ですよ?」

「我々としては漢の血があれは誰でも良いですよ。我々を討伐しにきた義勇軍の劉備様にもお声を掛けました。もちろん漢の皇室が断った場合の保険としてです。漢の血を引くものならどんなものでも構いません。それに権威があるのか?ならなくて良いです。我々が傀儡として利用するのはそういう目的じゃないです。純粋に高祖の血を引く血統だけが欲しいわけです」


「話を聞かせてほしい。本当に戻してくれるのだな?」


「ああ、放逐ですよ。護衛なんてつけませんよ?私たちが逆に攻撃されますから。馬ぐらいは上げますから勝手に帰ってください。それでいいのなら断るなら解放します」


 李北はすべて話した。ついでに日本軍との同盟も話しておく。外交に関わる対外軍事が皇帝の役割なのでこれが最も重要なので後回しに出来なかった。


「それ酷くないか?」


「初期は世襲しますが、我々もいずれ世襲はやめます。政治にとって世襲が悪だという考えです。我々は既存の考えと全く違ってるので儒教的にどうか?などはやめていただきたい。儒教とは政治において距離を置きます。ただ礼法は悪くないと思うので、簡素化する事はあってもある程度残していこうとは思っています」


「うーん、ただ洛陽に戻っても董卓の傀儡になるのは変わりないな」


「それどころじゃないです。あのものの傀儡なんて殺されてもおかしくはないです。だって他の皇帝を付けようと思えば出来るんですよね?いう事聞かないとそうすると思いますよ。子供が出来たらまず挿げ替えられてしまうでしょうね」

「漢は良い国家だったと思います。ですが、これから何度も秦から漢のように新しい血で皇帝を延々と繰り返すだけでしょ?さすがに董卓はどうか?と思います。あれは多分自滅します。だってあの人間全く民の事考えてないでしょ?権力欲だけあるが、政治をする気が無い。どちらにしろそういった事もできる新しい血の皇帝になってまたやり直しです」

「それを何百年も繰り返すんでしょうね。最初は多分上手く行ってもいずれダメになるかと。すべてを皇帝に押し付けるのは良くないです。今回は外戚と宦官の争いから始まったものです。ただそれに対して皇帝が力を発揮できなかったのも確かで、たとえ制度的に皇帝権力を高めたところで能力的にふさわしくない皇帝になったらより悪化します」

「この広い中華をたった一人の皇帝が差配するってのが無理があるんです。我々はそう考えました。ですが、皇帝にも役割はあると思います。それが中華の顔としての役割です。そして対外的な軍の旗の役割です。異民族との戦いに漢民族を1つにまとめる旗頭として漢の皇帝ほどふさわしい人物はいません」

「出自は大事じゃないです。出自が農民なら大多数の農民のための国家になるのか?なら漢の高祖こそその良い例でしょう?普通に秦の後を継いだ新しい血の皇帝じゃないですか。出自じゃなく大多数の農民の事をもっと考えた国家。黄巾党が欲しいと思う国家はこういう国家なんですよ」


「それが漢が弱体化した原因と?」


「何度も言いますが、秦の後を継いだ漢はとても良く国家を収めました。しかしこの漢のたった一人の皇帝が国家を収める皇帝制度はもう良いんじゃないか?と思っています。次の段階に行くための国家の成熟を果たしてくれた。これが今までの漢の役割だと思っています」

「これからの国家のための何か?が足りなかったと思っています。そしてたとえまた同じ皇帝制度でやり直しても数十年後にはまたほころびが見えて、民の不満がたまって瓦解して新しい血統の皇帝が生まれての繰り返しだろうと。そこに世襲と皇帝の集めすぎる権力の問題を見るわけです」

「それに対して良い点を見つけると、外交と対外戦争なんですよ。ただ皇帝を頂点とした戦争をするわけじゃないですよ?それは話しましたよね」


「3分割する漢の代表と同等に意見が尊重されるだったか?」


「はい。世襲の問題がありますからね。そのため全面的な頂点は避けたいです。もちろん戦場は将軍に任せますが、大きな大戦略は軍議としてちゃんと考えてもらいます」


「洛陽に帰るのはいつでもできる。どーせ帰っても欲深い豪族か次の皇帝の誕生までの傀儡だ。国の中と戦争を見せてもらえないか?」


「はい喜んで」


 適当に拉致って来た親族っぽい人と引き合わせるが、霊帝はまだ若く子供がいないようだ。じゃこの人たち何?となるとただの側近で、妻となるものは後宮に別にいるようだが、特に霊帝はその事を悔やんではなかった。そりゃそうか、大量の奥さん候補がいて子供を産んでもないならそこまで愛着ないか。


 こっちで適当に用意するか…。元々この人前の皇帝の息子じゃないんだな。前の前の皇帝の孫か…。かなり自分たちがやろうとしたことに近いな…。だからこの人いざとなったら別に探すよ?って言った事にあんまり抵抗が無いのか。この人もかなり雑な血筋じゃないか。今回の作戦で熊子が奇貨行くべしって言ってたのこれか…。


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