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8 襲撃の前線に立つ者
転位した街の一つ 西部外縁地域
「此処を退いたら後々の負担が重く成ってしまう」
壮年は言った
「人が生きてれば建て直せる、問題無い」
「退却しよう」
周囲の意見は分かれた
「だが、可能な限り数を減らすべきだ」
「大丈夫だって。
誘導工作は成功してる。
もう注意を惹く行動は取らなくて良い。
一緒に退こう。
おっさん達が化物共に斃されて老害と腰巾着と風見鶏と親の七光りが残った避難所の、街の未来の方が悲惨だ」
青年は憂いを述べた
「此処に残っても囲まれて袋叩きに成る可能性の方が高いって」
「生き残れるなら少々の食糧や安全圏の消滅なんて些末な事だ」
「そして、生き残る何の為の今回の計画でしょう」
「其の通りだ。
此処の区画は放棄しても良い様に造ったのだから今こそ活用すべきだろう」
「あの避難場所は碌に手伝わず我が物顔で居座ってる戦えもしない声量だけ大きな奴等の為に造った訳じゃない」
「まぁ、其の通りだな」
一団は襲撃に来た生物を避け急造の塀や堀、柵で囲まれる避難場所へと移動した