3 武器を拾得した者
転位した街の一つ
中心街より少し外れ田畑が広がる街に建つ大型複合商業施設内部
予兆など無く
突如見知らぬ生物達より襲撃を受け人々の悲鳴怒号が響く建物内
狼の様な四足歩行の俊敏な生物達
長剣、槍、棍棒を握る猪顔の二足歩行する生物達
大型複合商業施設内部二階
青年は人々を襲う其れ等を目撃した
外からも悲鳴が響く
外に出たとしても建物内に来た以上の生物が居るかも知れない
と身を潜め様子を窺う事にした青年
暫くすると隠れる店舗の直ぐ傍の通路にて武器を握る猪顔の生物と狼の様な生物が争いを初め
一瞬の内に猪顔の生物が斃れる
狼の様な生物は僅かに肉を喰らい下の階に降り去った
青年は駆け寄り猪顔の生物が手にしていた長剣を拾得し足早に店に戻り店の棚に隠れ観察する
柄に少し汚れが目立つも刃毀れは見えない
白い柄の上部に填め込まれた石を軽く布で拭くと
半透明の黄色の石は周囲の光を集め輝く
同時に剣全体の縁を埋める唐草に通じる模様が蒼白い光を帯びた
驚き一度は手を引くも抵抗手段を手放す判断は下さず
青年は剣を握り持った
そして先ずは外の様子を確認しようと歩き始める
最上階と一階に人が流れ中層階は閑散としている
人が多い場所では剣を奪われる可能性が有り
戦闘を強要される危険も有る
一階と屋上に向かわずとも今の階層から見れる場所は在るだろう
青年は硝子窓の有る場所を探し歩く
そう時間は掛からず見付けた硝子窓
周囲の道路、建物等は変わらず存続していた
倒壊した高層建築物や黒煙を立ち昇らせる家屋
見慣れた景色は途中で途絶えていた
遠くに映る見慣れぬ山脈や森林
突如道路を切る草原
徘徊する見知らぬ生物
飛行する怪鳥
生物が地球に出現したのではなく
街の一部が異世界に転位した
青年はそう認識した