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30  転位力秘匿疑惑


王都へ続く街道に栄える宿場町の外れ

大和異国商会 支店

「異世界で有名な複数の物語上にも神聖な領域に在る転位魔法は登場していますからね。

英雄譚の登場人物達が所属する教会や国組織が知らない筈は有りません」

来訪者達に店の責任者は答えた

「少なくとも王国は知ってる側だな」

「では、意図的に隠したと?」

「環境や人物に依って対応は変わっていたと思いますよ。

信頼が無い者や狼藉を働いた者に神聖な場所を教える訳は無いですし、実力不足を理解せず突撃し兼ねない者にも伝えはしないでしょう」

「敵の可能性が在る転位者達に対して情報を隠す事は妥当な判断だ」

「貴方方は何故隠していた?

転位者達の身を案じてか?」

「はて、尋ねられた覚えが有りませんが?」

「通信魔法で多くの転位者が転位魔法や異世界に関する情報を訊ねていたはずです」

「直接訊ねてはないらしいぞ」

「物語上に転位魔法が存在すると伝えた処で何か変わったとは思えませんし恐らく不特定多数に伝える必要は無い情報だと判断したのでしょう」

「地球への転位魔法を発見した訳でもないからな。

大多数の転位した人々が異世界を、魔法を調べる過程で比較的簡単に知りうる転位魔法に関する情報だ」

「ある程度人は選んでますが情報は提供してますし責められる謂れは無いですよ」

「転位に限らず居る国が違う場合敵対する事も在るんだから同じ転位に巻き込まれたってだけで易々と情報を貰えると思ってる方が可笑しい」

「最近は飛行船の存在が公に成り利用しようと企む方も増えましたね」

「まぁ、安全な場所に安全な方法で移動したい気持ちは分からんでもないが素性も知らない不特定多数の人間を運ぶ事は無い」

「集めて何か起きた場合商会に疑惑の目が向けられますからね」

「人々の安心や安全、命より商会の方が大事ですか?」

「俺の命を救ってくれたのは商会だが?

少なくとも商会は目の届く範囲の転位した街や人の動向は注視しているし食糧が不足している街を支援したり独自に活動している」

「転位した人々の安心や安全、命の為に商会に所属する人々が犠牲に成る道理は御座いませんよ」

「飛行船を有効に活用すれば多くの人間を安全な場所へ届けられるはずです」

「一箇所に集中させる事は無いと言ったはずだ」

「同じ場所で無くても比較的安全な場所に素早く多数を輸送する事が可能なはずです」

「救助活動は可能な範囲で行っているって聞いてなかったのか?

本題が其れなら商会は拒否するから諦めて帰れ」

「まぁまぁ、目的は魔法装備と馴染み深い故郷の食品と判ってますから」


来訪者達に退室を求めた一人が宥められ本題が切り出される


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