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1 発つ者
元居た世界
過ごしていた世界を思い返して見るべきですね
体力の有る人間は暇な時間全てを社会貢献活動に割いてましたか?
技術や知識を持つ人間は其の全てを他者の為に寄与していましたか?
違いますよね
魔力も同様ですよ
他人が都合良く言い包めて利用出来る代物では有りません
えぇ、助けられたでしょう
襲撃時其の場に居た場合ならばですが
居ない力、無い力を当てにして行動していたのですか?
危険地帯と承知の上で外を動いていたのでしょう
自業自得、不運な遭遇としか云い様が無い
此度は偶然居合わせので対応しただけの事
さて新たな魔物が出現し斃せと頼まれる前に離れるとしましょう
人の命?
眼の前で襲われていた命は助けたので問題有りませんね
同郷?緊急事態?助け合い?
魔力を与え助けてくれたのは此の世界であり此の世界の住民です
貴方方同郷の人間ではない
最早言葉を交わす必要は無いとでも言う様に身体全体を覆う黒い外套の袖口から装飾が施された厚みある本を取り出した青年
引き留めようとする言葉は効果なく姿は瞬く間に消えた
残された者達は姿を探すも既に居ない者が見付かる事は無かった