10 学園結界
転位した街の一つ
西部に建つ広大な敷地面積を有する学校法人
昨年改築工事が施され比較的綺麗な外観の学園校舎本館三階 教室
「正門前方向の街近くの草原に六角獣が出現してるそうですよ」
齎された情報に依り教室の視線が窓に注がれた
「本当だ」
一人が双眼鏡で確認した
「街に来ない事を祈るしかない」
双眼鏡を受け取り草原を駆け回る生物を視認した一人は言った
「然し街の傍に居るのに気付かなかったな」
「外部の音を常時展開してる結界が消してるらしいですからね。
雄叫び等聞こえませんので見ないと気付けないのは当然です」
「接敵に気付けませんが接敵を赦さない結界は頼もしい限りです」
「街全体を覆って欲しかったですけれどね」
「いえ、覆われては学園と同じ問題に直面します」
「結界が出来て二日目ですが今の状況だと飢餓一直線ですからね」
「元々結界は妖精さん達の棲む学園の庭園のみが範囲だったらしいですよ。
学園全体が護られたのは異例らしいです。
飢餓に関しては人に分かる形で対応したとの事です」
「へぇー」
『………………ん?』
「妖精?」
「待って、それ誰が言ってたの?」
「妖精達?」
「その妖精さんと話したって事?」
「学園の妖精さん達はまだ残念ながら話せないそうです」
「それは誰が言ったの?」
「真夜中に庭園の傍に居た自称魔法使いさんです。
顔を覆う外套を羽織り如何にもな長い杖を持っていた恐らく男性の方です。
知り合いの妖精さんの家族に様子を見て欲しいと頼まれたそうですよ。
夜遅くに何をしているのか尋ねたら答えて貰いました。
其処から少し御話をしてその時教えて頂いた情報です」
「日本語で?」
「はい。
同じ様に巻き込まれた方らしいです」
「で、自称魔法使いに結界の外に出る方法を訊いたのか?」
「はい、既に人に分かる形で対応したと言われました」
結界内外の境界に扉が設置され内部に居た者達の往来が可能と成っていた




