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「ちし?ちくがいって…」
美琴は畳に手をつき俯き小さく呟いている。
落ち着くまで待つべきか、しかし美琴が神器だったら何も知らないのは逆に危険だ。
「混乱してるとこ悪いが続きを話しても良いか?」
「ぁ…はい」
呆然としたまま反射的に返事をしたようだが、無視させて貰う。
先ずは地理の方が良いかと考えて自室から地図を持ってきて美琴の前の床に広げる。
未だ意識此処に非ずの状態で話しても聞いていなくて二度手間になるのは嫌だったので、彼女の目前で拍手を一つ。所謂“ねこだまし”だ。
「へ!?え?なになに!??」
「よしっ戻ってきたな」
驚いて左右に首を回す美琴に声を掛け広げた地図の一点ををトンと指差す。
「先ずは地理について説明しよう」
持ってきた地図は十二地区が描かれているもので、大雑把に説明する。
「今居るのは此処。蓄亥と言って、オレの家が守護する地域だ。今は融雪期で雪はないが、ほぼ年中雪に覆われてると言って良い。他にも同じ様に守護されている地域が十一あって、それらを纏めて地支と呼ばれている」
次いで中央にある内海を指差す。
「此処は神域と言われていて、神様が降臨される場所とされている。普段は立ち入り禁止区域で1年の内で降臨祭の十日間だけこの外回廊だけ解放される」
ここまで駆け足で進んだけど着いてこれてるか気になって顔を上げる。と、美琴は見事に思考が彼方へ飛んでいた。
「聞きたいことがあるなら聞けよ。答えられるなら答えるから」
オレがそう言うと、右手を小さく挙げて、なら…と切り出してきた。
「なら…幾つか訊きたいんだけど、蓄亥の他にも11の地域があるって言ってたけど、他はどんな所なんですか?」
「悪いがオレは蓄亥から出たことはないからざっくりとしか話せないぞ」
そう断りを入れてから蓄亥の隣から指差していく。
「蓄亥から時計回りに瑞子、癸丑、黄寅、乙卯、閏辰、燁巳、庚午、辛未、庚申、告酉、武戌と言う名だな。特徴については…両隣だけになるが、瑞子は地図を見たとおり両の地区境を山で挟まれてるからかそこから流れてくる水が豊富らしい。武戌は真面目な奴が多くて職人気質らしいと聞いたことがある。…こんなんで良いか?」
「ありがとうございます。ところで、さっき蓄亥から出たこと無いって…旅行とかって行ったことないんですか?」
不思議そうにこっちを見詰める美琴にオレは言葉に詰まった。
(旅行か…そんな事は考えたことも無かったな)
「どうかしました?もしかして私、何か失礼なことをっ」
黙った所為で慌てだした彼女にオレも慌てて口を開く。
「いや、そうじゃ無い。ただ、旅行とか考えたことも無かったから驚いただけだ。なんて言ったってオレは蓄亥の守護者だからな」




