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「キャアアアア!!」
耳を劈く様な甲高い悲鳴と共に右頬に痛みと衝撃が走る。
「ぇ…?」
目を開けると、オレの膝の上でバタバタと暴れている女性がいた。
「うわっ…ちょ、ま」
「ふべっ」
女性とは言え本気で暴れられれば支えられず、抜け出た拍子に盛大に地面とキスしていた。
「大丈夫か!?」
助け起こして女性を見れば、額が赤く擦り切れている。
「うぅ~いたい」
「ああ、触るな。今、消毒を」
怪我した部位を触ろうとする手を制してそこまで言った時、はたと気付く。
(そう言えばオレ、手ブラで家を出たんだった)
「悪い、今何も持ってないからせめてコレで押さえてくれ」
ポケットからハンカチを出して渡すと、女性は小さくお礼を言って俯いた。
とは言え流石にそのまま放置するのもダメだろうと思って、女性に一つ提案する。
「なあ、ちょっと家に寄ってかないか?」
「へ?」
オレの言葉に驚いたのか目を見開いてこっちを見てきた。
「あ、いや、別に変な意味じゃなくて、その傷の手当てもしたいしさ」
女性の額を指差しながら言うと、彼女は顔を赤くさせて怒りを露わにする。何でか思い返すと、大事な事を忘れていたのに思い至った。
「あっそっか!オレ、亥瀬 進って言うんだ。年は18で、好きなことは楽しいこと!苦手なことは難しいことを考えること。よろしく」
見ず知らずの不審者に家に来いって言われたら、そりゃ怒るな。一息で言い切って、ウンウンと頷いていると、ぽかんと口を開けてこっちを見ている女性と目が合った。
と言うか、何時までも女性じゃ面倒だなと思い、アンタは?と名前を促す。
「あ、えっと…か、神凪。神凪 美琴、です。じゅ、18」
多少吃りながらも名を教えてくれたことで警戒は僅かでも解くことが出来た様な気がする。
「んじゃ、美琴な。コレで知らない仲じゃ無くなったしいい加減手当てしたいんだけど」
手を差し伸べながらそう言うが、待てど一向に握り返される気配はない。それどころか美琴は俯いて、手も胸元の服を握り締めている。
「どうした?他に怪我してるのか?」
オレの問いに美琴は首を横に振るだけで何も答えない。
理由が分からず戸惑っていると、ピン!とある考えが思い浮び、ぽむっと両手を合わせた。
「分かった!動けないのか」
「ぇ?」
「気付かなくて悪かったな。ちょっとだけ我慢してくれ」
言い終えると同時に美琴の背中と膝裏に手を添えて一気に持ち上げる。
「落とさないように気を付けるが、念のため首に手を回してくれ。」
「え、あ、はい」
美琴の体勢が安定したのを確認してから「じゃ、行くぞ」と声を掛けて人目が着きにくい裏道を通って家へと帰った。




