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暫くクスクスと笑い続けていると、扉の外から2人分の足音が聞こえてきた。
「にいさま、センセイ、よんだ、デス」
ロランがトテトテと駆け寄ってきてとても愛らしくて顔が綻んだ。
「……あら?傷の手当てをしていたと聞いたのですが、私の聞き間違いでしたか?」
シスターがオレの腹部を指差しながら訊いてきたのでソッチに目を向けると、物の見事に包帯に血が滲み出していた。
あー、笑ったのがマズかったか。なんて考えながらのんびり眺めていると、アルが慌てた様子で言葉を発した。
「わ!?血が!すみません先生。包帯を巻き直すので少しの間部屋から出て貰えますか?」
「あらあら、別に私は気にしませんよ?いつもは私が治療しているのですから何も変わりませんしね」
「き、気にします!ほら早く!」
アルがシスターの背を押して扉の外へと押し遣り、序でにロランも言いくるめて部屋から出して戻ってくる。
「一旦包帯を外します。痛ければ言って下さい」
手早く包帯を解いて傷の具合を診て薬を塗り再び包帯を巻き直す。二度目となるが手際の良さに感嘆を禁じ得ない。
「ありがとう。助かる」
オレが礼を言うと、アルは一瞬動きを止めてから首を横に振った。
「いえ、経過を見たいので近日中にもう一度いらして下さい」
此方と目を合わせる事無く告げられた事務的な言葉に、アル自身の何かを押さえ込んでいる様に感じて無意識に彼の頭を撫でた。
「別に、怪我の事以外でも此処に来るし悩んでるなら話も聞く。聞くしか出来ないがな。それに連れて来たアr…ヤツが迷惑かけてないかも確認しないとだしな」
「え、あ、あの…あたま」
顔を赤くし目を彷徨わせるアルが可愛くて両手で髪を混ぜ繰るように撫でまわす。弟が居ればこんな感じなんだろうか。
「わ、わっ…ちょ、また傷が開きますよ!?」
「ははっ、そうだな。名残惜しいがまた今度にするか」
手を離すと見計らった様にシスターが入ってきた。
「あらあら、楽しそうなところ申し訳ないけれど、転移門の座標は貴方の自宅で良いのかしら?」
「否、貴重な動力を使うのは忍びない。それに商店街だから此処から然程離れて…」
「健康体だったら、でしょう?良いから大人しく言う事を聞きなさい」
シスターの圧に押される形で「ァ、ハイ」と了承の返事を返すと、彼女は満足そうに頷いて「では準備してきますね」と部屋を出て行った。
「………コワっ」
俺の呟きにアルも顔を蒼くしながら無言で何度も首を縦に振っていた。




