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「助かった、感謝する」
部屋に着いてオレを支えていた少年、青年?はオレを椅子に座らせて手を出す暇も無いほどあっという間に治療し終えてしまった。
「にいさま、スゴイ。いぱい、べんきょ、やた、デス」
一緒に来ていた少年が嬉しそうに拙い言葉で話し掛けてきた。
「そうだな、凄く手際が良かった。尊敬する」
「うぁ、…ろ、ロランは先生を連れて来てくれ」
オレと少年―ロランと言うらしい―の褒め言葉に顔を赤らめながらも指示を出した青年に嬉しそうに「Oui」と言って部屋を出て行った。
あ、そう言えば名前言ってなかったな。
「今更だが名を言ってなかったな。オレは亥瀬 進。お前は?」
「アルベール・オブリと申します。先程までいた弟はロランと言います」
「あ、ある…べ?」
オレが彼の名前を上手く呼べずにいると、苦笑しながら口を開いた。
「呼び難いようでしたら、ぜひアルとお呼び下さい」
「分かった、アルな。よろしく」
オレが右手を差し出すとアルは目を見開いて此方を見てきた。
「?どうした?……あ!もしかして間違ってたか?シスターから外つ国ではアクシュが挨拶だと聞いていたんだが」
騙されたのか?あのシスターの事だ。オレを揶揄って遊んでても納得できる。
そう考えて手を引っ込めようとした時、アルが声を上げた。
「ま、間違ってないです!ただ…」
「?」
中途半端に手を出したまま首を傾ける姿は何か間抜けっぽいが引っ込め損ねたから仕様が無い。
しかしアルはそこまで言った後、口籠もってしまった。
少し待ってみたが続きは口にされず目を彷徨わせて手慰めをしているばかり。
仕方なしに先を促してみる。
「…ただ、何だ?」
「えっと…ただ、何と言えば良いのか分からないのですが、わ…此方の文化を知っていて、実際に行ってくださるとは思っていなかったので」
言い難そうなアルの言葉にオレは逆に納得した。
「ああ、確かに蓄亥は排他的な所があるからな。不快な思いをさせていたなら謝罪させてくれ」
頭を下げると慌てた声が降ってきた。
「か、顔を上げて下さい!貴方は何も悪くないでしょう!?」
だが…と渋るオレにアルが「ボクが気にしますから!」と止められてしまった。
顔を上げるとホッと肩の力が抜けたアルが居て、何というか…生き難そうな性格だなと感じた。
オレは気を取り直して「じゃ、改めてよろしく」と右手を差し出した。
今度はおずおずとだが握り返される。
「よ、よろしくお願いします」
小さく帰ってきた返事に、一拍置いて気恥ずかしさが込み上げてきてアルと顔を見合わせて笑い合った。




