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辿り着いた先ではしゃがみ込んだ女性と彼女を囲むようにそれなりの大きさの牛形の“オニ”が三体居た。“オニ”は気が立っているようで今にも女性に襲い掛かろうとしている。
「イヤッ!」
女性が近場の手頃な石を投げると、それは見事に彼女に一番近い“オニ”の目に当たった。
(おぉ、ナイスコントロール……なんて言ってる暇無いか)
痛みからか(抑も彼奴らに痛覚があるとは思えないけど)より興奮して腕を振り上げる。
オレは慌てて駆け出していき、槍で受け止めた。
「あっぶな、ギリギリセーフ。もう少し後ろに下がってて下さい」
女性にそう声だけかけて、其の儘穂先を返し相手の体勢が崩れたところを狙って突き出す。が、“オニ”は首を左下に沈めて僅かに掠るだけで致命傷には成り得ない。
一歩下がって槍から左手を離し穂先を下に向ける。左手を前に出して指を手前に二度曲げる。
「来いよ。雑魚」
《挑発》スキルで“オニ”達の意識をオレに向ける。
すると興奮してる三体が前足を大きく振り上げるのが見えた。
一体は見当違いの場所を踏みつけ、もう一体の足は避けることが出来た。しかし三体目の足の方へと避けてしまったせいで腕の真横に下ろされ、衝撃と飛んできた瓦礫を諸に喰らってしまった。
「うぐぁっ」
幸い骨は折れておらず、外傷も大きくない。多少腕が痺れて長柄を使うのは難しいぐらいか。
先程まで使っていた槍を仕舞って片手でも扱える袋槍を取り出す。リーチは短くなるけど右手が使えないから仕方が無い。
起き上がり近くに居た“オニ”の懐に入り突き刺す。
大きく嘶いて“オニ”は黒い靄となって霧散した。
「ハァ、ハァ」
息を整えながらまだ二体残っていると思い出し、前を見ると内一体が前足を大きく振りかぶっているのが見えた。
「避けろ!!」
オレの声に女性は“オニ”の体勢に気付いたようで慌てて後ろにあった木箱の影に隠れた。
ホッと息つく間もなくオレも丁度木箱の近くに来る感じで左前に転がるように避ける。さっきまで居た場所に“オニ”が突っ込んで来るのを横目に勢いを利用して起き上がり体勢を整える。
“オニ”の方へ駆けようとした時、目の前の“オニ”が女性の隠れた木箱の方に前足を振りかぶっていた。
(ぁ…ダメだ、間に合わない…また、失うのか…手が届かない。待って、やめろ…奪うな)
優しげな印象を受けるの女性が泣きそうな表情をして目の前に立っている。
(神様…オレはまた…)
ガラガラと音が鳴る。意識が現実へと戻ってくる。音の方を見ると女性が積まれた木箱を崩したようだった。
女性と目が合う。彼女はまだ、諦めていないと感じた。
(そうだ。オレが諦めて如何する。オレは“亥”だ。牛に速さで負けるわけにはいかない)
足に力を入れて駆け出す。
(届け…届け…)
願いながら左手を伸ばす。カランと袋槍が落ちるが気にしない。
(届け……とど、けッ!!)
指が触れた。そのまま女性を押し遣ると同時に腹部に衝撃が走る。
「ガハッ」
あ、これ、貫通した。
腹部から来る熱と回らない頭でそう考えた。
瞼が重い。
意識が消える瞬間、牛の嘶きと、女性の悲鳴が聞こえた気がした。




