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十二支愛歌  作者: 那津稀
第一章 蓄亥
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ああ……美琴に、会いたい


会って、大丈夫だと頭を撫たら笑ってくれるだろうか


けれど思い浮かぶのは不安そうな表情ばかりで


まあ現状、笑みを浮かべられる状態じゃ無いし


此の儘なら死んで美琴に心配かけるだろう


それは、イヤだな…


そうだ、まだ死ぬわけにはいかないんだ。



槍を杖代わりにして何とか立ち上がる。

そのままゆっくりと下がって行き、背中に壁が当たる感触で足を止めた。体重を壁にかけて槍を構える。これで背後の心配は無い。

視界が悪い。いっその事目を閉じて音と空気の振動から情報を得ていく方が確実だ。


風の音

羽ばたき音

“ハンキ”の鳴き声

女の叫び声


風の流れが変わった。


来る。槍を前方に突き出す。


手応えあり。


目を開けると、相変わらず視界は悪いが目の前の“ハンキ”の頭部を槍が貫いていた。

“ハンキ”の体が崩れていく。

(よかった…勝てた)

ホッと息を吐くと気が抜けたのか力が抜ける。

(ぁ、倒れる)

と思った瞬間右腕が変な方向に引っ張られた。

其方を向くと態とらしく涙を溜めた薄桃色が此方を見ていた。

「進ぅ!こわかったよぉ!」

(………キモチワルイ)

振り払おうとしたが、血を流しすぎたせいか腕が真面に動かなかった。

致し方ない。さっさと表通りまで連れて行ってトンズラするか。

「此処から離れる。付いて来い」

腕を抱きつくように掴まれたまま槍を杖代わりにして歩き出す。

歩きづらいが腕を引くと引っ付いてくるから諦めてそのまま歩いた。何かベラベラ喋ってたけど頭に入ってこなくて…と言うよりは早く離れたくて仕方なかったから聞き流してて分からないけど確か名前とか行ってた気がする。知らないけど。

無言のまま歩き続けて表通りまで出られた。漸く解放されると思いながら、此処からなら戻れるだろうと言って離れようとしたけどより強く腕を掴まれた。

「…何だ」

「あたしぃ、帰る場所がなくてぇ…」

腕に抱きつきながら覗き込む様に見てくる薄桃色に嫌悪感が這い上がってくる。

(ああ、ウルサイ。触るな。離れろ。キエロ)

喉元まで出掛かった言葉をギリギリで押し込めて顔を逸らす。

(正直言えば、関わりたくない。さっさと別れて美琴の所まで行きたい…が、守護者としては放置は得策では無い、よな…)

どうすべきか、と考えていると丁度いい場所が一カ所思い浮かんだ。彼処ならコレを置いても何とか出来るだろう。序でに治療して貰おう。決まりだ。

「行くぞ」

話したくなくて言葉少なに言うと目的地に向かい歩き始める。

しかし、何を勘違いしてるのか分からないが腕に寄りかかってきて邪魔で仕方ない。


ああ…早く美琴に会いたい……

空を見上げながら、そう願った。

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