14
「何も、ない」
「だから料理は出来ないと言っただろう」
一夜明けて台所に来た美琴は冷蔵庫を開けて愕然と呟いた。オレは気まずくなり目を逸らして頬を掻く。
「そうだとしても限度があります!」
眉尻を引き上げて此方を振り向き、買い出しに行きましょう!と俺の手を引いて玄関へと歩き出す。
「ちょ、待て待て。準備するから一旦手を離せ」
美琴に手を離して貰い、自室へと向かう。
フード付きのダッフルーコートを二つ選んで取り、ファー付きのムートン手袋を掴んで玄関まで戻る。
「待たせた。外は冷えるからこれを着ろ」
自分のコートを着ながら持ってきた一式を美琴に差し出す。
「えっと…?」
「昨日説明しただろう?蓄亥は基本雪に覆われていると。そんな格好でいたら風邪引くぞ」
自分のが着終えたので美琴に着せながら説明する。
「さて、まず最初にどこに行くか」
「食料品です!」
オレの服を貸してるせいで全体的にダボッとしている美琴を見て、服を買いに行こうと考えていると、くい気味に彼女が被せてきた。そう言えば当初の目的はソレだったな。
「じゃ、行くか」
美琴の手を引いて外に出た。
それ程歩かない内に目的地に着いて足を止める。
「此処は猪本通り。昔ながらの商店街ってところか。食料品なら此処が一番だな」
「結構大きいんですね」
興味深そうに辺りを見回しながら美琴が言い終わると、キュルルと音が聞こえた。
「あ、いや、ちがっ」
「こっちだ」
美琴の手を引いてまた少し歩く。
辿り着いたのは昨日のメインを買った肉屋だ。
「おばちゃん、コロッケ二つ。食べ歩きで」
「はいよ。坊はホントにソレが好きだねぇ」
「おばちゃんのコロッケは最高だから…ん」
代金を置いて二つ受け取った内の一つを美琴に渡す。
「あ、ありがとうございます」
「あらぁ?あらあらあら、坊の彼女さん?可愛らしいねぇ」
おばちゃんの言葉に「へぁ!?」と変な声を上げて美琴が固まった。おばちゃんはいい人だが何分話し好きで暴走しがちだ。此の儘放っておくと最低一時間は解放されないと感じて、ため息交じりに「違う」と返す。
「違う。美琴は昨晩オニに襲われていて帰る場所もないって話だから保護したんだ。」
「あらぁ、ソレは大変だったわねぇ。困ったことがあったらなんでも言って良いからねぇ」
おばちゃんは美琴に優しく笑みながら告げた。
「あ、ありがとうございます。そしたらオススメの食材はどれですか?」
「そうさねぇ…――」
料理できないオレを差し置いておばちゃんと楽しそうに会話する美琴。
…仲良くなれたなら良いことだ。うん。決して仲間外れが寂しいとは思ってない。本当に。
コロッケを一口囓る。やっぱり美味しい。




