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美琴の居る自室に水の入った水筒と濡れた手拭いを持って行き、何か食べようかと思った瞬間冷蔵庫の中が空っぽなのを思い出した。
(失敗したな。帰りに何か買ってこようと思ってたのを忘れてた)
と、言うことで美琴が起きた時用に一応書き置きを残して家を出た。
買い出しを終えて、其れ等を皿に盛る。序でに味噌汁を作って、椀に注いだ所で米を炊き忘れていたのに気付いた。
一旦、味噌汁を鍋に戻して急いでお米を炊く。その間に美琴の様子を見てこようと自室へ向かった。
「美琴?入るぞ」
小さく声をかけてから中を覗く。部屋はまだ暗くて美琴も起きていない事を示していた。
音を立てないように気を付けて中に入り、目に乗せている手拭いを確認する。まだ平気か?取り敢えず水を張った洗面器持ってくるか。
寝顔は穏やかで、あの後も夢見は悪くないようで安心した。
一通り美琴の世話を終えたら御飯も炊けていた。
食事の支度をして、席に着く。
その時、家の中の空気が変わった。もしかしてと思って自室へ向かうと、布団の中で美琴が目を覚ましていた。
「起きたか。気分はどうだ?」
「あ゛、はい゛」
寝起きと泣いていたせいの水分不足故か、酷い声に苦笑をもらし枕元に置いていた水筒を差し出す。
「ほら、水飲め。……食欲はあるか?」
水筒の中身を一気に飲み干した美琴に問いかけると「あ、いえ、そこまでして貰うわけには」と断ろうとしていたが、言い終える前にキュルルルという音が遮った。
「あ、ぁぅう…」
美琴が羞恥で顔を赤らめ腹部を腕で押さえている。つい笑いそうになるのを何とか堪えて口を開く。
「わ、ん゛ン…悪い。思いの外空腹だったようだ。みっともない所を見せた」
鳴ったのはオレの腹という事にして立ち上がりながら、行こう?と彼女にてを差し出す。ポカンと此方を見上げて居たが、アワアワとオレの手を支えにして立ち上がる。
オレはそのまま手を握ってリビングに連れて行く。
「出来合いばかりだが気に入ると良いな」
卓袱台の上にはそれぞれの皿にコロッケとメンチカツが一つずつ、平たい椀に盛られたサラダの上にタレが絡まった肉団子が二つずつ乗り、豆腐と油揚げの味噌汁と白米が並んでいた。
「わぁ、おいしそう…」
小さく呟かれた声に笑みを深めて卓袱台の前まで連れて行き座らせる。
「早く食べよう。今後の事はその後で」
オレの言葉に頷いて「いただきます!」と言って食べ始めた美琴を見て、自分も食事を開始する。
目を輝かせながら食べ進める美琴を見て、オレも嬉しくなってくる。
(やっぱり、おいしいは幸せの呪文だ)




