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「………は?」
美琴の言葉の意味が理解できなかった。いや、別の世界からって言うのはこの世界の無知さ加減で納得できるけど、その後。家を追い出された?
「あの、きっと私がいけなかったんです。だって私は、人に迷惑をかけないと生きていけないグズですし、おばさんも私のせいで恋人に逃げられたって、生きてるだけで害悪だって、いわ…言われたッし。大家さん、だって…わた、私がきてッから…い、いやなことッばっか、りおきッおきるって。だ、だからわッたし、おいだ、されてからッもうい、やって」
話してる内に感情が抑えきれずに泣き始めた美琴を抱き寄せて背中を撫でる。
「人なんて誰も彼も一人でなんて生きられない。だから互いに迷惑を掛け合って、助け合ってるんだ。美琴は迷惑かけないように頑張ったんだろう?辛い、苦しいって泣いてる自分の声を無視して、周りの人に嫌われないように頑張って、頑張って、頑張りすぎて疲れたんだな。だから、休んだって誰も文句言わない。もし言う奴がいるならオレが黙らせてやる。大丈夫だ」
慰めてる筈なのに、泣き方が酷くなっていく。それならいっその事、盛大に泣かせ切った方が良いだろうな。
「おうおう。泣け泣け。涙が涸れるまで泣いてしまえ。そしたらきっと、また前を向くことが出来るから」
暫くの間、部屋は泣き声が響いていた。
腕の中の声が小さくなっていき、引き攣った呼吸音だけになってから腕を緩めて美琴の顔を覗き込む。
「……眠ったか」
泣き疲れて眠った美琴を落とさないように体勢を変えて、背負って立ち上がる。
(あ、客室の布団干してない……ま、オレの布団で良いか)
襖を開けて自室へ向かう。
「…よっと」
自室の前でずり落ち始めた美琴の位置を戻して伏間を開けると、目の前に敷いたままの布団があった。
「あー、そう言えば畳んでなかったか。この状態からしたら良かった…のか?」
呟きながら美琴を布団の上に降ろす。掛け布団を被せる間彼女は起きる気配はないが、眉間にしわが寄ってきている。
目元を冷やす濡れタオルと起きた時に飲む水を用意してくるかと立ち上がる。
「……な、ぃ」
「ん?」
美琴が何か呟いて起きたのかと顔を見ると、まだ目は閉じられていたが、口が小さく動いていた。寝言か?
……ちょっと嫌な予感がして口元に耳を寄せる。
「ごめ、さい…ごめん、なさ。ごめん、なさぃ」
「………」
睡眠さえ、安寧は無いのか。
オレは何とも言えない気持ちになりながら美琴の頭を撫でる。
「せめて、夢の中だけでも安らかであるように…」
最後におまじないとして額に口づけして部屋を出た。




