9. 現実の姿
ラヴィーナのお茶も程なくして準備され、落ち着いたところで、会話が再開される。
「もう聞いた? スレアチト学園のレクリエーションのこと」
「はい。現実を見せるとかなんとか」
「そう。私もこの国出身だから痛い目を見たが、この男が思ったよりも動じてなくて安心したよ」
「なにがあるんです?」
そろそろ濁されるのも限界である。
ラヴィーナは赤い口紅を引いた薄い唇に笑みを浮かべた。
「それは、当日のお楽しみ」
なんと、また引き伸ばされるらしい。
「まぁ、レクリエーションでやるのは魔物討伐のシュミレーションだよ。泊まり込みのね」
「で、私達は実践経験があるからフォローに回るって事ですか」
「ご名答。君達は卒業したらAランク昇格が確約されているし、Sランクも近いから何の心配もないからね」
「Sランクは流石にまだですよ」
レオンハルトの言葉に、ラヴィーナもヴォルドも否定しない。
「何を言ってる。俺達パーティーはSランクだぞ。そのSランクが手こずった魔獣を倒した実績があるんだ。待ってるぞ」
「あれは偶然ですってば」
そう、偶然なのだ。
ヴォルド達が手こずった魔獣を倒したと言っても、大分体力は削られていた。
私はレオンハルトの援護くらいしかしてないし、トドメを刺したのもレオンハルトだ。
「偶然も運のうちって言うだろ。全く、サラもレオンも自己評価が低いもんだ」
「無謀よりマシだけど、過度な謙遜は嫌味にもなるぞ」
ヴォルドの言葉も、ラヴィーナの言葉も重みがある。ベテラン冒険者の言葉だ、しかと胸に刻んでおく。
しかし、本当に私は大したことは無い。多分。
「サラに何回も助けられてきたし、俺はサラと組んでなかったらここまで強くなれてないさ」
「有難い言葉だわ。これからも末永く、えぇ、墓まで、いえ、死後も一緒よ」
「愛の国出身こえーって」
ケラケラ笑っているのはヴォルドだけだ。
私は本気である。
ラヴィーナは程々にな〜、と苦笑気味で、レオンハルトは少し頬を赤くしている。
「まぁ、お前らは大丈夫だろ。レクリエーション、頼んだぞ」
「はい」
「はい、頑張ります」
お茶を飲み干し、解散となる。
時間が微妙だったので、今日は任務は受けず帰ることにする。明日も学校だ。
「あ、レオンハルトさんとサラさん見つけました」
ヴォルドとラヴィーナと別れ、もう帰ろうか、とレオンハルトと話していると、ギルドの職員が声をかけてきた。
間違いなくレクリエーションの話だろう。
また会議室へ蜻蛉返りし、お茶を飲みつつ任務として話をもらい、今度こそ帰路に着く。
大変そうだが、報酬はたんまり貰える。
鼻歌交じりに家の扉を開けた。