4.兎鳥討伐
背中を隠すほど伸びたプラチナブロンドの髪を大雑把に頭の高い位置で一つに結んで、レオンハルトの手を取る。
「今日も頼む」
「任せて」
目を閉じて、目的地を思い浮かべる。うっかり変なところに飛ばないようにしっかり、具体的に。
じわりと体から魔力が抜けていく感覚がし、上に引っ張られる。
ふわりと浮遊感が一瞬。すぐに地面に足が着く。
目を開くと思い浮かべた通りの場所。
転移成功。
「俺も転移出来るようになりたいなぁ」
「色々な所に足を運ぶことね」
一度でも行ったことのある場所なら、転移出来る。詳細を事細かに覚えていれば、だが。
大雑把に転移する事も可能だが、転移した瞬間川に飛び込んでしまっていたとか、空高いところから墜落する羽目になるとか、見知らぬ人の入浴中で、警察を呼ばれる、とか。
自信のない転移はしない様に、と世界で定められている。
実際、レオンハルトは転移しようとして寝ていた私のベッドに飛んでしまい、私は酷い目にあった。
気持ちよく寝ていたのに急にずしりと体が重くなって金縛りにあったかと思った事もある。
眠りを邪魔された私はレオンハルトを叩き出した。後日レオンハルトにめちゃくちゃ謝られ、それ以降レオンハルトは私の転移頼りである。
「あー、あれね」
兎鳥を探す前に視界に飛び込んでくる。
牧場に群れで現れている兎鳥たちはぴょんぴょん跳ねて、飛んで、逃げ回る家畜達に牙を剥いている。
兎なので絵面は可愛いが、家畜達を貪っている時は口元は血塗れでなんとも言えない風貌になる。
横に居たはずのレオンハルトは双剣を手に既に駆け出している。出遅れたかな、と思いつつも弓を構え、空を舞う一匹の兎鳥に向け、放つ。
見事に矢は胴体に刺さり、羽を撒き散らしながら墜落していく。
「流石だな! 俺も負けてられん!」
「怪我には気をつけるのよ」
もう一本矢を取り出し、構えながら調子のいいレオンハルトに言葉を返す。
血飛沫と羽が舞う。その中で踊る様に双剣を振るうレオンハルト。
一羽、また一羽と空を舞う兎鳥が地に落ちていく。本体よりも軽い抜けた羽毛が辺りにふわふわ舞う。
時間にして、二十分くらいだろうか。
兎鳥の群れを狩り終え、息絶えた兎鳥達を集めて、魔物の生命エネルギーである魔核を取り出していく。
魔核は討伐の証にもなる。それに、魔核を他の魔物が取り込むと進化する恐れがあるので、取り忘れには注意しなければいけない。
魔核を取り出し、必要な素材を剥ぎ取ってから、穴を掘って遺骸を燃やす。
燃えて灰になった其れに酒をかけて弔う。
魔物も命。
当たり前だが無意味な殺戮は禁止されている。
群れを討伐し終えたので、深追いはしない。仲間達がこの場所で討伐された事実が兎鳥をこの場所から遠ざけるだろう。
「さて、報告に行きましょう」
「だな」
肩を並べ、依頼主の元へと足を向けた。