4.コンプレックスは消えない
ソーマの転移魔法によって、ミレンナ達は任務地にやってきた。
早速見つけた角兎をソーマはどごんどごんと躊躇いなくハンマーを打ち付けていく。丸い血の跡に潰れた角兎。
水魔法で血を洗い流し、解体しては魔核を取っていく。合間にソーマに補助魔法をかけるのも忘れない。
「ミレンナさん素晴らしいです! 補助魔法のおかげで体が軽い軽い! うんうん、あと数時間でもハンマーが振れそうです! それにしてもすぐ終わっちゃいましたね」
「そうね、ソーマ君、強いんだね」
「そんな事ないですよ! 確かに今まで運送業のお手伝いをしていて、荷物を狙ってくる魔物と敵対した事もありますけど、こんなあっさりとはいきませんでしたからね。ミレンナさんのおかげです。愛を感じました。僕はもうミレンナさんの事しか考えられません」
「調子良いわね。でも、私は年上だし、婚約解消になった傷物よ。スレアチト学園を卒業する時に婚姻を結べず、ろくに仕事にもつけず、来るもの拒まずの冒険者になっただけの」
「それがどうしたんですか? 気分を悪くしたらすみません、ですが、僕はミレンナさんがその婚約者と結ばれなくてよかったって思います。そのおかげで僕は貴方に想いを告げても許される。略奪はいけません。愛に背きますからね。でも、ミレンナさんが結婚していたら、僕はずっと陰から想うだけで気が狂っていたかも。うぅ、想像するだけで震えてきます。実はね、サラ姉ちゃんの話でミレンナさんの事は知ってました」
魔核を袋に入れながら、ソーマは喋る。喋り続ける。
ミレンナの顔をちらちら伺いながらも、晴れやかに笑って。
「サラ姉ちゃんの話には、ずっとレオン兄ちゃんしか出てこなくて。でも途中からミレンナさんの話が増えて。僕も今スレアチト学園に通ってます。一つ下の学年です。僕の顔を見て想うことはありません? そう、化粧が薄いんです。サラ姉ちゃんと同じで、化粧を濃くし過ぎると浮いちゃって。似合わないんですよ。学年で化粧が薄いって陰口は叩かれるし、お喋り道化師なんて言われるし。でも同じ状況のサラ姉ちゃんと仲良くなったミレンナさんは僕の化粧が薄いなんて思わないでしょう? 素顔でもいいくらいなんです。ありのままの僕を愛してくれる人がいい」
ミレンナはふと、卒業してからずっと薄化粧の自分の顔に手を添える。
化粧を落とすと印象の薄くなる、己の顔。
サラと同じく、ソーマは薄化粧でも整った顔だ。ミレンナは気恥ずかしくなり俯く。
「でも、サラも、レオンハルトさんも、ソーマ君も、薄化粧でも綺麗だから」
つい口に出してしまった弱気な声は、震えていないだけマシだった。
元婚約者に言われた、薄化粧はみっともないと言う言葉が脳内で反芻する。
やはり、変われない。
前を向いて、少しでもサラ達に近づけるようにと冒険者になってみたが、卑屈なまま。




