21.愛より重いものはない
ミレンナは怪我をしていた。
服の一部が破れ、血で濡れていた。動けていたのでポーションで大丈夫だとは思うが。
さっさとミレンナの婚約者を助けて戻りたい。
レオンハルトと二人で二つ名持ちの魔獣を倒すのはまだ力不足だ。
「レオン!」
レオンハルトの近くで、呆然と立ち尽くしている様子のアルフレッドの姿が見える。
巨大猪は一度距離を取って、助走をつけようとしている。突進されたら、ひとたまりもない。
魔法学教師の魔力を覚えているので、そこに転移しようと、二人に手を伸ばす。
「なぁ、どんな姿でも、愛せるんだよな」
アルフレッドは、私を見据えて、そう言うと、レオンハルトの手首を掴んで、笑った。
「何してるの! 巨大猪が攻撃を仕掛けようとしてるのよ! 死ぬわよ!」
レオンハルト達まで、少し距離が足りない。
巨大猪は猛スピードでレオンハルト達に迫っている。
手首を掴まれているレオンハルトは、振り解こうとしているが、巨大猪の攻撃は素早く。
「どんな姿でも、愛せよ」
そしり笑う、その顔が、ひどく醜く見えた。
世界の時間が急に遅くなった様に感じる。
どうにかアルフレッドを振り払えたが、レオンハルトはバランスを崩し、アルフレッドが追い討ちを掛ける。
レオンハルトを巨大猪の方へと突き飛ばす。
目を見開いたレオンハルトが、私を見ている。
気味悪くニヤけたままの、アルフレッドも、私を、見て、いた。
筈だった。
だが、私が居たはずの場所には、バランスを崩して尻餅をついたレオンハルトが。
そして、私は、咄嗟に弓から槍に持ち替え、それを突き出した状態で、レオンハルトと位置を変えた。
交換転移を成功させたのは、初めてだ。
「サラ!!」
レオンハルトの絶叫が響き、世界の速度は元に戻る。




