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鏡に写したい姿は偽装  作者: 橘菊架
サラとレオンハルト
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1.粉塵化粧法

ルッキズムの話です。苦手な方はご注意ください。

化粧直しにお手洗いに入ると、もくもくと白い粉が舞っていた。

他国から転入してきたばかりのサラは思わず顔を顰めてしまう。鏡台がいくつか並んだ其処には女生徒達が必死に顔に粉をはたいて、いや、まぶす、と言った方が正しいかも知れない。

化粧直しをしていた生徒の一人がサラに気がつくと、わかりやすく鼻で嗤った。


「あぁら、転入生さんじゃない」

「他国の人だから化粧が下手なのね、もっと化粧学真面目に受けたほうがいいわよ」


みっともないわね、とさざめきが広がるように其処にいた女生徒達は総出でサラを嘲笑う。

サラは転入してから何度目かわからないこのやりとりに随分と苛々させられたものだ。


この国は女性の化粧が濃ければ濃いほど良いとされている。

勿論、サラもその事はこの国に来ることになった際に化粧をするのは礼儀だと親からしっかり伝えられているので元々薄化粧しかしなかったが、引っ越しが決まってから練習はした。


したのだが、元々顔立ちがはっきりしているせいかアイシャドウを濃くしても、マスカラでまつげを伸ばしてもあまり変わり映えしなかった。

つけまつげを付けたり、ノーズシャドウを入れると顔が濃くなりすぎて何故か男みたいになってしまう。


「皮膚呼吸出来るのか、あれ」


好き勝手に人の化粧を嘲笑った後、またもくもくとフェイスパウダーを顔にまぶし始めた女生徒達のせいで、サラはそそくさとその場から逃げ出した。

粉塵が凄すぎて体に悪そうだったので。


塗り固められてカピカピの頬にはっきりした色合いのチーク。

本来の唇よりもオーバーに縁取りされ塗られた口紅。

これでもかと付けられたふさふさの付けまつ毛にペンで書かれたかと見間違えそうなアイラインにダブルライン。

そして、発色の良過ぎる原色に近いアイシャドウに、重ねて宝石もかすみそうなほど煌めく大粒のラメ。


鏡に反射する自分の顔は明らかにげんなりとしている。

厚化粧を見た後だとめちゃくちゃ薄化粧に見える。一応朝から三十分くらいはかけて化粧はしているのだが。

元々化粧は割と手抜き気味だった私、サラの化粧時間は五分から十五分くらいだった。それに比べると倍である。


それでも薄いと嘲笑われるこの国は、本当におかしい。

結婚に行き遅れるだろうと女子生徒に影でも直接でも言われまくってるが、学校を卒業次第、この国から一人で出て行ってやるくらいの気持ちなので痛くも痒くもない。


「ないわー、本当、ないわー」

「なにが?」

「あの化粧の濃さ」


死んだ目でブツブツなにか言っている女にも躊躇いなく話しかけてきたのはこっちに引っ越してからの唯一の友人である男、レオンハルト。

彼は母親が他国出身らしく、この国の価値観とは合わないらしい。


「サラはそのままでいてくれ」

「まぁ、これでも濃くしてるつもりなんだけど」

「まじ?」

「まじ」


元の顔がはっきりしているので、化粧は本当に素材を引き立たせる程度の働きしかしないのだ。

余計な書き足しをしていないせいかも知れない。

他の生徒達が赤や黒などの高発色のアイシャドウを好む中、私は発色はいいがくすんだ色味の赤や茶色などのアイシャドウを使っている。わずかながらの抵抗である。


「んー、まぁ、俺も人のこと言えないか」

「化粧の濃さ?」

「そー。俺もこれで濃いめ」


この国は男女問わず化粧をする。ごてごてに。

男性に至ってはもう、凄い。ノーズシャドウいれまくりである。


性格が捻じ曲がっているが故に生まれた作品です。

本編完結済みで朝晩予約投稿していく予定です。

宜しくお願いします。

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