表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊島の花嫁  作者: 茶野
眠れる王国への鍵
32/82

第五章 眠れる王 Ⅱ

 神や精霊のことは忘れてしまおう。そうカリンは思った。都合の悪いことは頭のなかから消してしまうのが、学園生活で身についた生き方である。いちいちかまっていたら体がもたない。それに多くの人間は神の正体どころか、精霊の存在すら知らないのだから。

 それにしても、この限りがない空間のどこにリオンはいるのだろうか。一から探すとなると骨が折れそうだ。

「ここは魂だけでできた世界。自分を守るすべをもたない者がこんなところにいたら危険なんだ」

「どうして」

「はじめ、ここは精霊のためにつくられた“国”だった。だけど精霊というのはきれいな魂だけを選んで生み出されたもの。ぼくたち精霊から切り落とされたものは消えずに残って、やがて魔物になる。ここにはたくさんの魔物がいるんだ。魔物は人間の魂や、精霊を食べようと狙っている――怖がらないで、カリン。大丈夫、ぼくがそばにいるから。きみを襲わせたりなんてさせない」

 それでも遠い昔の記憶は、カリンを恐怖におとしいれる。

「それにきみは、もう魔法使いでしょう? きみには魔物に対抗できる力がある。魔物におびえるだけのきみじゃなくなったよね?」


 ――怖いものが見えるの。それなのに、そんなものいないって、父さんも母さんも兄さんたちも言うの。ただの夢だって。

 ――それが夢だと思う?

 ――夢じゃないよ。だって、見えるんだもの。腕をつねったりしても見えるのよ。夢ならさめるはずなのに。

 ――そうだね。きみが見ているものは真実だよ。


 怖いものと戦う力がほしいか、とそのひとは聞いた。ほしい、とカリンは答えた。必死だった。


 ――それなら、きみは魔法使いになるんだ。


「ひとつ、聞いてもいい?」

 カリンは体の震えを感じた。まさか、と思う。

「精霊っていうのは、人間よりも長生きなの?」

「そうだね。ぼくは生まれたばかりだけど、中には何千年も生きている精霊はいるよ」

「そう。ありがとう――それで、リーシェン。リオンの居場所がわかる?」

 リーシェンは首を横にふった。

「ここは思ったことがかたちになる場所だ。でも、ぼくはその子のことをよく知らない。知らないものは、今のぼくにはどうすることもできない。だけど、カリンは彼のことをよく知っているんだよね。その子のことを強く思い浮かべてみて」

 カリンはリーシェンに言われたとおり、リオンの姿を想起する。しかし、世界にはなにも変わらない。

「おかしい」

 リーシェンが首をかしげた。

「シセルのときはうまくいったんだ。人間だからできないってことじゃなさそうだけど」

「それは、あたしに問題があるっていうこと?」

「きっとなにかが、きみの思考を邪魔しているんだ。それがなんだかわからないけれど、そうだね、きみは“リーネの杖”の継承者なのに創造魔法がうまく使えない。杖に選ばれたんだから、素質はあるってことなのに。おかしいとは思っていたんだ」

「でも、このままではいられない」

 やるしかないのだ。

「認めないわ。これくらいの困難に負けるわけにはいかないもの……!」

「……でも、それじゃ」

 リーシェンが言葉を飲み込んだ。彼の発する気が、穏やかなものから一変する。並々ならぬ殺気に、カリンは目を見開く。

 邪魔なひとがきた、とリーシェンがつぶやいた。

「どうしてきみがここに来る?」

 カリンは唖然として、突如現れた茶髪の青年を見る。

「決まってるだろう。危険な魔物から、カリンを保護するためだ」

 そう言って、マイは杖をかまえた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ