第三章 金と銀の少年 Ⅳ
「……ええと」
見たとおり、と言われても。カリンにはなんのことだかさっぱりわからない。
「まあ、いいわ」
ため息をつく。
「あたしは今いそいでるの。悪いけどあなたにはつきあっていられないわ」
「カリン、待って」
きびすをかえしたカリンを、リーシェンはひきとめた。
「マイ・オリオンとぼく、どちらが大事なの?」
「……あたしが大事にしてるのは、あたしの将来だけよ。だから、パートナーがなにかしでかすのだけは防がなくちゃいけないの!」
中級魔法使いはかならず二人一組になって任務をおこなう。どちらか一方の失態を、もう片方は一緒に負わなければならない。まさに相方が運命を握っているのだ。
「マイ・オリオンが大切ってわけじゃなさそうだね」
「そうよ!」
「で、そのマイ・オリオンはこちらに向かっているんだけれど」
ほら、とリーシェンは自分の後方を指さす。マイが歩いてくるのが見えた。マイは一度立ち止まり、眼鏡をはずしたようだ。レンズをローブでふいて、かけ直す。
「怒るなよ、カリン」
そう言うなりマイは、なにかを投げつけてきた。それがなにかを確認するより早く、カリンは結界魔法を張った。どうせろくでもないものに決まっている。
「リーシェン、よけて!」
案の定、爆音が平和な島にとどろくこととなった。
せきこみながら、カリンは煙をはらいのける。
「マイ、だから火薬はやめてって言ったでしょ!」
「怒るなよ、って言ったじゃないか」
すずしい顔でマイは言う。
「それを了承したつもりはないわ」
「そんなんだから、頭かたいとか言われるんだよ」
「余計なお世話です。あとさき考えないあなたよりましよ」
「火薬だって考えて使ってるさ。実験のとき以外は」
どこに問題があるのか、とマイは言いたげだ。
「今の爆発のどこに意味があったっていうのよ?」
「あったさ」
真剣な口調だった。
「ここに来てからずっと、あやしいやつがきみをつけまわしている。さっきだって、きみはだまされそうになっていたじゃないか」
「だまされるって? まさかあなたが言ってるのはリーシェンのこと? たしかにあやしいことを言ってたけど、あたしは彼を信用してるわけじゃないし、だいたい魔法使いじゃない相手にいきなり攻撃するのはいけないことよ」
「ほら、だまされてる」
マイはため息をつく。
「ふつうの人間だったらさ、さっきの爆発から逃れられるか? まわりを見てみろよ」
彼の言うとおりだった。どこを見てもリーシェンの姿はなかった。
「あいつ、一瞬のうちに消えたんだよ」