夢の記憶2と驚愕の事実
昼飯時、ここはあのレストラン。バイキング方式のため自分が好きなものを取り、晃とテーブルで舌鼓を打っていた時、耳をつんざく轟音、すべてのものを巻き込む粉塵、赤より紫に近い高熱の炎が火炎放射のごとく襲い掛かってきた。
場面が変わり
飛行機の中、突如、真っ暗になり、マスクが天井から落ちてきた。鼓膜が破れるほどの爆発音とともに急激な寒さに意識がなくなり・・・・
また場面が変わり
仕事終わりの通勤電車の中、いきなり横倒しとともに隣の乗客たちが飛んでくる。吊革につかまっている俺も足が宙に投げ出され空間を飛んでいる状態だ。次の瞬間・・・・
俺は診察台の上で意識が覚醒したのと同時に過呼吸に襲われた。生まれて初めて息が吸えず死の恐怖に暴れるよりほかになかった。ただ、拘束されていたためもがき苦しむのだが。
それでも両手両足のゴムバンドはちぎれかけ、服は裂け、腕と足には血が滲んでいた。
俺はこの3つ出来事を知っている。ここ3か月ほどの間に起ったテロだ。
しかし、この生々しさは何だ。なぜ俺が事件に巻き込まれた当事者としての夢を見ているのか。誰かの記憶をのぞいているのか。誰かの意識を感じとっているのか。それとも・・・・
まだ頭が混乱している。気が変になりそうだ。何が起こっているんだ。俺は何を見せられたんだ。アロマって麻薬か何かなのか。何がどうなってるんだ!!!!
「彼がそうなの。」
「ああ、おそらくは。爺さんの書類に書かれていた人物は彼だ。」
驚愕の事実
気持ちが少しづつ落ち着いてきた。
木野塚玲子はもうマスクを外していた。隣に晃が立っている。
2人とも俺を見ている。その表情はものすごく悲しげだった。
今の俺にはその表情の意味が皆目見当もつかない。
俺は両手両足を木野塚玲子に治療してもらっていた。
その間、俺は黙って3つの事件について考えた。
(すべてテロ組織、たしか気狂隊といったか。その連中が引き起こした類まれなる凶悪なテロ行為として最近騒がれている。この連中と自分になんら接点が見つからない。自分は何か関係しているのだろうか。
時間軸も気になる。例えば自分の記憶だとしたら最初のレストラン爆破の時点で死んでいる。飛行機事故や電車の事故には遭遇するはずがない。なにせその前に死んでいるのだから。
するとこれはだれか他人の記憶なのか。俺の深層意識と事件に巻き込まれた死者の波長が偶然にシンクロして記憶が流れ込んできたのだろうか。それが3人いたとか・・・・)
俺はそんな荒唐無稽・無茶苦茶な思考を巡らせ続けていた。晃が話しかけているのにも気づかず。
現在の自分へ意識が戻ってきた。晃が真剣な表情で俺を呼んでいた。
「健斗、ケント、けんと・・・ おい、戻ってこい。しっかりしろ!!」
俺は柏木健斗だ。そう、俺は柏木健斗だ。現在生きている。正常だ。どこもおかしくなんかない。気持ちをしっかり持つんだ。きっと大丈夫! 大丈夫! 大丈夫!!
それから落ち着きを取り戻した俺は、晃と木野塚玲子に記憶に残っている事件についての詳細を、巻き込まれた時の状況を余すことなく説明した。
そして説明しながら考えを整理しているうちに俺は1つのことに気が付いた。
「晃、お前、本当は知っていたのではないか。」俺は一言つぶやいた。
そうなのだ。そもそも俺はこの3つの事件とも当事者になっていない。そして俺のそばには必ず晃がいた。もしかしたら晃がなにがしかの事情を知っているのではないか。
僕は、柏木健斗の言葉に息をのんだ。「晃、お前、本当は知っていたのではないか。」
アイツは夢の記憶を思い出し、その恐怖と対峙し、かつ、現在との違いをこの短時間で分析し、僕という存在の違和感にたどり着いたというのか。
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