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気狂隊との死闘4-1

エピソード4(対ポリマースーツ編)舟木隼人

 舟木隼人は、人が殺せればそれでよかった。アメリカの実験施設でテロメアを変異させ肉体を若返らせる液体を自らの体に注入していた。また、筋肉及び身体能力を高めるドーピングも行った。すべては殺戮を思い切り楽しむため。

 そして、とくに目障りなのが木野塚玲子。アメリカ時代から何かと目の上の瘤だった。気狂隊にとっても邪魔だ。


2030年3月26日11時05分

 舟木隼人率いるメンバーは、テロ対策の会議が行われている国会議事堂を襲っていた。ポリマースーツをまとった彼は向かうところ敵なしだった。

 総理大臣および閣僚たちを人質にしてテレビ中継にてこう呼びかけた。

 「警視庁長官と木野塚玲子を呼んで来い。あと、一緒にいる正義のヒーローぶっている奴も。午後1時までにな。」最近、俺たちの邪魔ばかりしやがって、痛い目に合わせてやる。


 国会議事堂に取り付けられている防犯カメラをハッキングした玲子は気が付いた。

 「彼はポリマースーツを開発したのね。身体能力が大幅に改善しているようだわ。」


2030年3月26日12時45分

 特殊車両で国会議事堂正面に乗り付けた健斗、玲子、晃はそれぞれが持ち場につく。

 すでに特対警察官の部隊と警視庁長官の水木陽一は、バリケードを築き包囲していた。

 健斗は黄色カプセルを1粒飲んだ。玲子はモニターを確認しつつ健斗のバイタルチエックを行うことに集中した。

 この黄色カプセルを1粒服用すれば、2時間は3倍の身体能力向上が見込める。ただし、副作用が激しく、成人男性は連続使用は5回が限度であろう。1回の副作用は眩暈、倦怠感が1週間から10日間残る程度だが、おそらく3回以上使用すれば痙攣、気絶などの症状のほか酷ければ最悪死亡するだろう。まだ開発の途中なのだ。


 車いすに座っている晃は特殊車両の装甲頭部に内蔵してあるレーザー光線銃の照準をいつでも合わせられるように準備していた。

 「父さん、大丈夫かな。」

 「お前の父親だ、胆力は相当なものだぞ。相手が舟木隼人でなければとっくに制圧できていただろう。」

 玲子も俺もプロテクターとPS31型を装備し、俺はソニックブレードも用意した。

 「準備はOKだ。俺たちは呼ばれているから行ってくる。」

 「了解」


 すでに国会議事堂正面の路上では特対警察官たちがバリケードを築き完全防御態勢をとっていた。水木陽一も防弾チョッキを着こみ完全武装で待ち構えていた。玲子と健斗は合流した。


2030年3月26日13時00分

 舟木隼人は総理大事を盾に国会議事堂から出てきた。テロメンバーも一緒だ。彼の狙いはあくまで木野塚玲子だが、その彼女をバックアップしている水木陽一も排除対象なのだ。もちろん周りにいる人間は粛清対象だ。この場にいる人間、誰一人生きて返すわけがない。


 「よお、木野塚玲子だな。顔が変わっていてわからなかったよ。お互い若いままだな。あの当時の実験の成果は大したものだった。その点は感謝している。」

 「どの口が言うか。お前のせいで・・・・」玲子は怒りのあまり言葉が続かない。

 唇をかみしめ、隼人を睨みつける。

 「そういえば、どうやって生き延びたんだ。心臓に一発くらって死んだと報告を受けたんだが。まあ、いいや。」

 「お前が柏木健斗か。良くも俺のかわいいペットをかわいがってくれたな。あいつらは1000回実験して、やっと1体出来るんだよ。どう落とし前つけてくれんだ。」

 やはり精神異常者だ。どれだけ人を殺せば気が済むのか。

 「警視庁長官。あんたは見せしめに死んでもらうためだけに呼んだんだ。部下全員もな。」

 水木陽一は愕然としていた。


 「それじゃ、始めようぜ。」

 隼人は無抵抗な総理大臣を刺し殺した。合図のようにテロメンバーによる一斉射撃が開始された。特対警察官たちがバリケードで銃弾を防ぎながら応戦する。しかし形勢は不利だ。人を殺すことを何とも思わないどころか、楽しむ集団“気狂隊”とはよく言ったものだ。

 こんな連中とまともに戦えるとは考えてはいけなかった。少なくとも呼びかけに応じてこの場所に来たのは間違いだったのだ。もっとも他に選択肢はなかったのだが。


 ピキュン! ピキン! キン! キン! キン!

 舟木隼人は、飛び交う銃弾を気にせず俺たちのもとへ迫ってきた。

 玲子はPS31型で射撃。水木陽一もPS31型で射撃したのだが。

 「あのポリマースーツは銃弾をはじくのか。」玲子はその性能に目を見張った。


 俺はソニックブレードで戦うことを覚悟した。


 キン! キン! キン! キン! キン! キン! 

 ソニックブレードとナイフの応戦。剣技は、ほぼ互角だ。


 プロテクターでは強度がポリマースーツにかなわない。


 バコッ! 「ごふッ」 ドン! ズシャー

 隼人のパンチが健斗の腹部を捉えた。健斗はうめく。そのまま膝蹴りを食らい横転した。


 パン! パン! パン!

 見かねた玲子が援護射撃を至近距離で行う。

 もちろん、舟木隼人には効かない。隼人は玲子に襲い掛かった。

 その時、水木陽一は玲子をかばうために覆い被さろうとした。


 それは一瞬だった。健斗は水木陽一が何をしようとしているのか理解した。

 次の瞬間、健斗は隼人に体当たりを敢行していた。


 シユッ!

 健斗には、まるでバターにナイフが吸い込まれるように、ゆっくりプロテクターに沈み込んでいくナイフが見えていた。命の危険の際にアドレナリンが大量に放出されるためすべてがスローに見える現象だ。

 フルカーボネイトのナイフがプロテクターを突き破り健斗の心臓を一突きにした。


 「カハッ」

 路面に倒れ、口から血を吹き出し、もがき苦しむ健斗。手足がウネウネ動いていたが、次第に腕も足も動きが弱くなり痙攣しだした。


 バチッビリビリビリ!

 次の瞬間、ナイフを持つ舟木隼人の右腕は、レーザー砲の直撃を受け肩からちぎれ飛んだ。


 右腕を負傷した舟木隼人はテロメンバーとともに即座に撤退した。


 お読み頂き、ありがとうございます。

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よろしくお願いします。

 嬉しさのあまりモチベーションが上がり、更新も早くなりそうです。

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