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アメリカへ

2000年6月23日16時42分

 水木武郎と木野塚玲子は研究仲間であった。当時53歳の水木武郎は28歳になった木野塚玲子のアメリカの研究施設への留学を止められないでいた。

 本当は一緒に日本で世界平和のためにコンピュータと人間の意志の融合の研究をしたかったのだが。

 木野塚玲子は人間の寿命を延ばすため、また悪い病気を取り除く遺伝子の書き換え技術を研究するため、テロメアの人工培養と改造の方法の確立のため最先端技術を誇るアメリカの研究施設への留学を決めていた。

 木野塚玲子の研究は、きっと現段階において雲をつかむようなコンピュータと人間の意志の融合方法を見つけるためにも有効であるはずだ。

 水木武郎は心を鬼にして木野塚玲子をアメリカへ送り出した。


 2000年代の遺伝子研究は人間のDNAについての研究も盛んに行われていた。

 木野塚玲子が所属した研究所は、人間のDNAの解析からテロメアを操作することにより遺伝子に原因する病気を取り除く研究に着手していた。しかも予想と違い研究成果が次々と進んでいた。このままいけば優秀な人間を人工的に作り出すことすら可能であると判断できた。

 ノーベル賞を受賞できるほどの頭脳を持つ研究者や、オリンピックに出場できるほどの運動神経と筋肉を備えた人造人間を誕生させることが現実味を帯び始めた。それはまた反対も実現可能であることを意味する。わざと知性を遅らせ肉体的機能を高め集団戦闘ができる人造人間の量産が可能になるということ。

戦争を核ミサイルなどの極端な兵器を使用することなく、従順な人間の戦闘集団を投入することにより優位に立つことが可能になるということ。人権の問題をクリアすればだが。

 わかっていることだが、科学の前に倫理は絵に描いた餅だ。いけないことだとわかっていてもマッドサイエンテストには通じない。

 今まさに世界をゆるがす人間兵器の量産化が開始されようとしていた。



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