プロローグ
“最弱ギルドの挑戦状~元最強の冒険者、落ちこぼれ支部を立て直す~”の連載と併せて、新しい作品も書きたいと思います。両方ともゆっくり更新になってしまいますが、優しく見守って頂ければ幸いです。
世界には、3つの"秩序"がある。
これは、生まれたばかりの赤ん坊でさえ、母親による子守唄で知っている。
3つの光 名もなき闇を照らす
闇は混沌と それでいて何も無い
1つの光 闇に力を注ぐ
闇に 赤き光が灯り 大地が生まれる
“空間”の秩序 結ばれる
また1つの光 闇に力を注ぐ
闇に 青き光が灯り 時が生まれる
“時間”の秩序 結ばれる
最後の光 生まれし世界に力を注ぐ
世界は白く光り 命が生まれる
“存在”の秩序 結ばれる
3つの光 秩序の糧となりて
グランベルクの果てに消えゆく
秩序があるから、魔法が使えるし、秩序があるから、生き物は皆生きている。
それが普通。それこそが、“常識”だ。
だが、それに異論を唱える者が現れた。
「この世界は、結ばれた秩序のみで成り立つ筈の無いもので満ち溢れている。敢えて言わせてもらおう。この世界には秩序は“4つ”ある。最も、4つ目が秩序と言えるかはちと微妙だが――。“時間”も“空間”も通用しない上、“存在”の秩序は役割を果たさない。
そう、秩序が無いんだ。秩序が無いことこそが、4番目の秩序だ。」
その者は、グランベルクに多大な貢献をしていた。4大英雄の1人に数えられている者である。
人々は、尊敬の念と軽蔑の眼差しの入り交じる感情から、彼を“無秩序の賢者”と呼んだ。