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54 フィールドパーティー6

  

 マサキが通りの真ん中にひとり、立っていた。


 ジャージが薄汚れ、マサキの顔も遠目にも怪我しているように見えた。


 ナツミは口元を両手で覆った。



 「おまえらはおれが叩き潰す」

 マサキは言いながらゆっくりと歩き出した。。


 暴徒のだれかが発砲した。しかしキュン!という鋭い音が響いて命中する直前で弾かれ、マサキはなにごともなく歩き続けた。

 「てめーなに寝言言ってんだぁ!?3分後にゃあのバケモンが」黒革の男がそびえ立つ暴動鎮圧ロボットを指さした。「――暴れ出すんだぞ!かっこつけてる場合じゃねえだろうがよ!」


 「3分ありゃじゅうぶん、だ!」

 マサキは片腕をなにかなぎ払うかのように振った。緑色の燐光がズバッと発生して暴徒たちに降りかかった。

 暴徒たちは手持ちの銃の引き金を一斉に絞った……

 だが、弾丸は発射されなかった。

 「アレ?」暴徒たちは間抜けな声を上げて銃の引き金を何度かためした。


 「銃は役に立たないぞ」


 「てめえふざけんなぁ――!」

 暴徒たちは手に持っている物をなんであれ振り上げながらマサキに襲いかかった。

 マサキは両腕を振り払うようにサッとひろげた。

 突進してきた暴徒10人あまりが横っ飛びに弾き飛ばされた。別の暴徒がマサカリを投げつけてきた。マサキは回転しながら飛んでくるそれをキャッチし、身体を一転させて投げ返した。

 マサカリが暴徒の群れに飛び込んで「ぎゃーっ!」と悲鳴が上がった。

 

 (まだちょっと魔導律が残ってるな……)


 パワーをあらためたマサキはひとつうなずき、逆に突進を駆けた。

 暴徒の群れめがけて勢いを付けて跳躍して、つま先から突っ込んだ。ふたりを下敷きにして着地すると、目についたライフルを掴んで持ち主からもぎ取り、力の限り振り回して5~6人の頭をなぎ払った。

 ショベルで殴りかかってきた相手をライフルで受け止め、銃床を顎に食らわせた。振り返って背後から襲いかかってきた相手に銃床を叩きつけた。


 速すぎる動きでまた10人ほど倒され、慌てた暴徒がマサキを囲んで距離を取ったので、マサキはまた跳躍した。

 だが暴徒の群れからふたりの女がマサキに匹敵するジャンプをして、空中で交差した。 女のひとりが刃物付きのナックルダスターを繰り出してきた。マサキは身体をひねって女の肩に両腕をついて背後に回り込んで背中に蹴りを入れた。女ふたりは絡まり合って地面に落ちた。

 続いて着地したマサキに中学生くらいの男の子が狙い澄ましてボウガンを放ち、マサキは右手を挙げて防いだ。

 矢が掌を貫通して止まった。

 「ツゥッ!」

 さすがにたじろいだ。

 そこに先ほどの女のひとりがタックルを駆けてマサキを弾き飛ばした。

 女たちは明らかに魔導律を保持している。マサキの身体は20メートルも飛んで、旅亭の前に転がり落ちた。


 

 「マーくん!」

 どこか遠くで名前を呼ぶ声。


マサキはなんとか上体を起こし、右の拳に突き刺さった矢尻を掴んで引き抜いた。

 「ぐはッ!」

 マサキは吹き出してくるいやな汗を拭い、早めの呼吸を繰り返して痛みが引くのを待った。


 (いよいよ魔導律ゼロかな……)



 『あと2分で攻撃を再開します――』機械音声が告げた。

  


 女ふたりが勝ち誇ったように悠然と接近してくる。その背後に群れる暴徒もあまり減っているように見えなかった。


 マサキはふらつきながら立ち上がった。

 右手の平の傷を見下ろした。

 裏返すと、手の甲に緑色に光る紋章が浮かんでいた。


 (……親父!?)


 マサキはこくりと頷くと、まだ痛む拳を握りしめた。


 背後に首を巡らせると、驚くほど近くにナツミとヨウコが立ち尽くしていた。母親は口を真一文字に結んで、泣きそうなのを必死に堪えているようだった。

 あの表情には覚えがある。マサキとヨシキが転んだり試合で負けたとき、駆けつけて慰めたいけど必死に抑えている顔だ。自分で立ち上がるまで親父が許さなかったから。


 (くそっ……ふたりにはこの姿は見せたくなかったが……)

 

 マサキはハーと息を吐いてやや両足を開き、痛みによる緊張が抜けて体幹が据わるまで瞑目した。

 意識の中ですべてがフラットになると、顔の前で両腕を交差させ、叫んだ。

 

 「瞬装!」


 マサキの右拳からまばゆいブルーの火焔が迸った。その火焔がたちまちマサキの全身を包み、頭上に燃え上がって消えた。


 現れたのは、メタリックブルーの甲冑に身を包み、フルフェイスヘルメットのバイザーに(くれない)を宿した戦士だった。



 「シャドウレンジャー――漸炎(ゼノン)!」ファイティングポーズで叫んだ。「ただいま参上ッ!」



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